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【3巻発売中!】転生後はのんびりと 能力は人並みのふりしてまったり冒険者しようと思います  作者: 弓立歩
アスカと二度目の季節、初夏

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番外編2 フィーナの大冒険

 せっかくギルドでカードを作ってもらったのに、それがすごいのか分からなかったから、おっさんに聞いてみる。


「なあ、カードは作れたんだけど、これってすごいのか?」


「どれどれ……。こいつは底辺だな。運だけはいっぱしだが、他は見るも無惨だ。まあ、栄養も取ってないし仕方ないか」


「魔物と戦えたりは?」


「スキルもないし、弱ってる奴と相討ちが良いとこだな。絶対、手を出すなよ」


「そっか……じゃあ、どうするかな。出入りできるようになったのに意味ないな」


「まずは、今回の戦利品をきっちり売ることだな。まだ残ってんだろ?」


「え~と、木とかがちょっとだけな」


「なら、市場で売ってくるこった。残してても荷物になるぞ」


「はいよ。じゃあ、行ってくる!」


 おっさんと別れ、市場の責任者のところへ行く。二時間だけなら銅貨七枚で店が出せる。


「おっちゃん、店出させてくれ!」


「お前か。身なりを……今日はまだ綺麗だな」


「だろ? いいよな?」


「はいよ。銅貨七枚だ」


「これな! そんじゃ行ってくる!」


「おい、許可証! ……まあ、連絡しとくか。にしても売るもんがあるのかねぇ」


 許可もとったし、早速店を出す。シートだけは晴れの日は区画に置いてあるからそれを借りる。


「えっと、木が五本と薬草が六個束で二個。後はキノコの残りか……売れるといいな」


 じっと店を出して客を待つ。薬草と木はそれぞれ二つ売れたけど、まだキノコと木が残ってる。


「う~ん。残りは食いつき悪いなぁ。だけどもう金は払ってるし……」


 とりあえず、時間までは頑張ってみるか! そう思ってると何かちっこいのがやって来た。お使いか何かの帰りだと思うけど、結構いい服を着てるな。


「なにか探し物か?」


「細工に何か使えないかなって」


 細工? やっぱ親父のお使いか。まあ、適当に相手しとくか。話してるとちょっと変わったやつだ。大人とも違うけど、まるっきり子どもでもない。


「その木が気になるのか?」


「うん。どこで見つけたの?」


「町の西側でな。お前、どっかの村から来たのか?」


「ううん。今はアルバに住んでるよ」


 やっぱそうか。何か金持ちって感じなんだよな。嫌な感じはしないけどな。更に話すと目をつけていた木を高値で買ってくれるらしい。値段も教えてくれるし、いいやつだな。


「でね。相談なんだけど、外へ行く時に犬の散歩をしてくれないかな?」


 犬の散歩? まあ、いいけどただって言うのはなぁ。こいつにはいい社会勉強だな。


「何か駄賃でくれよ!」


 といっても親の作る細工なんだろうけど。


「うん、いいよ」


 二つ返事でほんとに大丈夫かなぁ。とりあえず、今日紹介だけでも済ましとくか。時は金なり、チャンスには敏感でなくちゃな。そろそろ、店じまいの時間だし、ちょちょっと片付けを済ます。


「そういえば、名前まだだったな。あたいはフィーナって言うんだ」


「私はアスカ。よろしくね」


 連れだってアスカの宿を目指す。というか宿に住んでるってことは親は商人なのか? 親みたいな人が出てきたと思ったら宿の女将だった。


「お前が飼ってるんじゃないのか?」


「最初はそうだったんだけど、今は面倒見てもらってるんだ」


「ちゃんと面倒見なきゃだめだぞ」


 お金持ちだからって人に任せて世話しないのは駄目だ。きちんと責任は持たないとな。それで実際に散歩に連れていく犬に会わせるっていうから行ってみると……。


「ま、魔物じゃねぇか!」


「大丈夫。大人しいから」


 大人しいとかいう問題じゃねぇ。大丈夫なのかこいつ? 宿のやつも噛まれたりしてないだろうな。念を押しても大丈夫だというので、ちょっと触ってみる。外にいるから獣臭いと思ったけど、毛並みもいいしふわふわだ。それに人懐っこいみたいで、あたいにも警戒する感じはない。


「あたいはフィーナっていうんだ。よろしくな!」


《わぅ》


 扱いやすそうだし、思ったより楽かも? その日は顔合わせだけで、後日に散歩に行くことになった。そして、実際に散歩に行くというか、あたしが外へ行く日になった。


「本当に魔物の散歩なんて出来んのか?」


「大丈夫だって。大人しいやつだったし」


 おっさんは心配性だな。約束通りアスカの宿に向かう。


「こんちわ~」


「あら、今日が初日ね。頑張ってね。はい、ご飯」


「いいのか?」


「ええ、私たちもあまり外出できないから、助かるもの」


「そんじゃ、遠慮なくもらうぜ」


 宿の女将さんから昼飯のパンをもらって、リンネを連れていく。西門に来たところで衛兵に呼び止められた。


「おい、身分証なしで外に出てもいいのか?」


「ちゃんと持ってるよ」


「確かに。そいつは宿のやつか?」


「知ってんのか?」


「知っているというか、町へ来た頃に何度か見に行った。街の人間も心配していたからな」


「で、どうだった? あたいは今日が初日だから、よく分かんねぇんだ」


「まあ、無視というか相手にされなかったな」


「役に立たねぇなぁ」


「うるさいな。それより、ちゃんと面倒見ろよ」


「はいはい。んじゃな!」


《わぅ~》


 あたいが挨拶するのを真似るようにリンネも挨拶する。変なところでこいつは律儀だな。門を出るとそこは街道と草原だ。といっても、この辺には何もないから無視して進む。リンネはと……ちゃんとついて来てるな。


「というかお前、外に出たらはしゃいだりするのかと思ったら、まんまなんだな。大丈夫かそんなんで?」


《わぅ!》


 何か思うところがあったのか、そういうとパッと駆け出した。


「は、はぇぇ……ってちょっと待て!」


 走ったと思うとすぐに小さくなる。あんなに足が速いなんてな。魔物って言っても、狩りもろくに出来ないのかと思ったけど、そうじゃないみたいだ。


「お前がいれば安心だな。ギルドのねえちゃんに貰った袋もあるし、今日は頑張んなきゃな」


 まずは水辺だな。飲料代わりに取るのももちろんだけど、水辺に何か映えてないかな? ちょっと歩いて水辺をよく見てみる。


「う~ん、この辺じゃよく分かんないな。仕方ない、まずは水を汲むとするか」


 帰りにも寄るので、今は昼飯までの量だけだ。重いとあんまり物が運べないからな。


《わぅ》


 急にリンネが吠えたと思ったら、バシャーンと水に突っ込んでいった。


「な、何だ?」


《わぅ~》


 上がってきたリンネは、大きい魚をくわえていた。そして何故かこっちに持ってくる。


「なんだ、くれんのか? でも、歯形があると売れないんだよなぁ」


 しょんぼりとしっぽを下ろすリンネ。やべっ、悪いこと言っちゃったかな。そう思った次の瞬間さらにバシャーンと水に飛び込む。

 また、上がってきたリンネは今度は爪をえら近くに突き刺して、持って上がってきた。


「おおっ! これならナイフみたいな傷だし、買取もOKだ! やるなリンネ!」


《わうわぅ~》


 今度こそどうだと高らかに吠えるリンネ。だけど、こんなに簡単に魚ってつかまるもんなんだな。二匹とも結構なサイズだし、慣れてないと大変だと思うんだけど。


「ま、とりあえずこっちは貰ってと。リンネ、そっちは一緒に食うか?」


《わぅ》


 昼飯もあるけど、あんまり昨日も飯は食べてないし、早速切って焼く。火起こしも慣れたもので、そんなに時間はかからない。


「お前は生を食うか?」


《わう》


 ちょっとだけ生をかじって後は残すリンネ。どうやら焼いたのも食べたいらしい。


「誰に似たのか知らねぇけど、お前贅沢なやつだな」


 生も焼いたのもどっちも食べたいなんてな。とりあえず、ちょっとだけ塩を振って焼いていく。リンネの方はあんまり味付けが濃くてもいけないので、ちょっとだけだ。


「ん~、もうそろそろかな? 食べてみな」


《わぅ~》


 あたいが言い終わるとすぐにかぶりつく。なんだかこの辺はちょっと野性味を感じるな。さて、あたいも食うか。


「は~、食った食った。しかし、お前は綺麗に食うなぁ」


 リンネは骨の間の身も牙と爪を巧みに使って、食べきっていた。しかも、その後は水で爪を洗うおまけつきだ。


「こういうのも躾っていうのか慣れてんな。んじゃ、目的の場所へ行くか」


 魚でちょっとお腹が重たいけど、目指すはあの林だ。日にちが経ってないから、あんまり多くは期待できないけど、前はすぐに帰っちまったからな。そこそこめぼしいものが残ってるんじゃないかと思ってる。


「ふぃ~、疲れた~。あれから一時間近く歩き詰めだもんな。だけど、あんまりゆっくりしてると時間来ちまうからな」


 リンネを連れて歩けるのは最大でも五時間。大体は四時間だ。じっくり探したいところだけど、こいつがいないと危ないし、ちゃんと時間は守らないと。


「さて、林だな。先に飯と行きたいけど、さっき食べたし後にするか。リンネ、そこの草あんまり倒すなよ」


《わぅ》


 了解といわんばかりに四つの足を器用に束ねて飛び跳ねながら移動する。


「お前ってほんとに器用だな。あたいも負けないようにしないとな」


 草むらを倒さないようにかき分けつつ進んでいく。そこから林に入ると、やっぱり最初に取った薬草のところはまだ生え揃っていなかった。だけど、反対側にも薬草があることに気が付いた。


「おっ! これこれ。確かムーン草だっけ? おっさんに読んでもらった本に載ってたやつだ。アスカがそういやなんか言ってたな。確か根元を優しく取るか、ナイフでさっと切るんだったよな。でもナイフはないし、そっと取るか」


《わぅ》


「ん?」


 薬草を取ろうとすると、リンネが吠えてきた。なんか変な動きだな。


「えっと、薬草の上を持ってろって?」


《わう》


 そうだと頷くリンネ。なんかやりたいらしい。まだ薬草はいっぱいあるし、好きにさせてみるか。

 薬草の上を持っていると一瞬、リンネがぶれて見えた。


「何したんだ? って、薬草が切れてる!?」


 あたいが持っていた薬草の根っこ近くを爪で切り裂いたらしい。ご丁寧に手前だけ切っている。


「言葉も分かるみたいだし、実は人間だったりしないよな。とりあえず他のも頼む」


 あたいがつかんでリンネがスパッと薬草を切って行く。切ったらすぐに袋へ入れる。これを繰り返して、生えていた薬草を七割ぐらい刈り取った。


「前の薬草より、すごく綺麗だ! やったな」


 リンネの頭を撫でてやる。最初は嬉しそうだったけど、ちょっと続けたら嫌そうにしたので止めた。すごいけどやっぱ変なやつだ。


「よしっ、結構取れたな。んじゃあ帰るぞ」


 しかし、リンネが帰ろうとしない。どうしたんだと言おうとしたら、先に行けと首を振ってきた。


「ちゃんと帰って来いよ。草むら出たところで待ってるからな」


 それから林を出ると、数分後にはリンネも戻ってきたので食事を取って帰った。しばらくあそこの薬草は採れないと思うけど、かなりの収入になる気がする。


「金が余ったらおっさんやみんなに土産でも買って帰るか。じゃあ、またなリンネ!」


《わぅ》


 リンネと別れて、住処に戻る。


「お~い、おっさん。これやるよ。体にいいキノコだぞ!」



   ✣ ✣ ✣


「後をつけていたけど、最後なんで残ってたのリンネ?」


《わぅ》

(帰り際に絡まれそうだったから掃除してきた。縄張りを主張しといたから次は大丈夫だろ)


「背中の血って返り血だったの? ちゃんと流してこないとみんなびっくりしちゃうよ」


《わぅわぅ》

(時間があったらな。アスカこそ、変な格好してつけてくるなよ)


「変かなぁ? 普通の村人の姿なんだけど……」


《わぅ~》

(村人が町の外をひとりで歩くわけないだろ……)


 せっかく変装までしたのにリンネに怒られた私だった。もちろん言葉はティタに通訳してもらってだけどね。



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― 新着の感想 ―
リンネとアスカの御守りで当面は安全だろうし、 これでフィーナも手にした資金を元手に何か仕事にありついてスラムを抜けられたらいいね。
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