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【3巻発売中!】転生後はのんびりと 能力は人並みのふりしてまったり冒険者しようと思います  作者: 弓立歩
アスカと二度目の季節、初夏

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バトル!

 依頼がないから仕方なく訓練をしていた私たちだったけど、リュートとノヴァの動きに満足できないジャネットさんが私を指名してきた。さすがに訓練と銘打ってるし、私も参加しないとなんだけど。


「痛くないといいなぁ」


 訓練といってもあざぐらいは平気で作る。なんせ、鞘に入っていても剣は金属の塊だ。


「でも、アスカの戦い方で参考になんのか?」


 よく言ったノヴァ。ナイスアシスト!


「後衛だろうが前衛だろうが戦いってのは相手にスキを見せず、相手のスキを突く。これが出来れば勝ちなんだ。それに関しちゃあんたらはまだまだだよ。まあ見てなって!」


 そんなに自信満々に言われると緊張しちゃうなぁ。まあ戦いは避けられないし、弓を構えていざ勝負だ。


「ああ、そうそう。逃げられたりしても困るから、あの木からそっちの木の間で動きなよ」


「えっ、そんなぁ」


「魔法訓練じゃないんだから、一方的に遠距離から攻撃するのは無しだよ」


「うぐっ」


「アスカまさか……」


 だって、遠距離からウィンドカッター連発したらさしものジャネットさんといえど、何とかなるんじゃないかなって。しかし、先にその手は封じられてしまった。こうなったら、決められた範囲内で戦うしかない。


「んじゃ、合図を」


「始め!」


 リュートの声で訓練が始まる。まずは距離を取るため風の魔法で後ろへ跳ぶ。そして、弓を構えて……シュート!


「チッ! 相変わらず、決めたら早いね」


 一本目の矢は簡単に弾かれてしまった。期待はしてなかったけど、あっさりだなぁ。続けて二の矢を放つ。


「無駄だよ! うわっ!」


 ヒュンっと放った矢はちょっと特殊な持ち方で二本射っていた。これはフィアルさんに教えてもらったやり方で、二矢目の威力が落ちる代わりに避けにくく、対人戦で有効とのことだ。


「面倒な手を……。今度はこっちから行くよ!」


「させません、ウィンドブレイズ!」


 ジャネットさんが近づいてこれないよう、風の弾丸を乱射する。狙いをつける必要はなく、牽制の攻撃だ。


「はっ!」


 しかし、剣を取り出したジャネットさんが一振りすると、弾丸は全て弾かれてしまった。


「魔法剣……」


 これじゃ牽制にならない。すぐに火魔法へ切り替えて、正面にファイアウォールを作る。ジャネットさんの魔力ならここを突撃はできない。


「チッ、なら!」


 風の動きに変化があったのを確認し、すかさず実体のない火を消してしゃがみこむ。その頭上をナイフが飛んで行く。


「当たったら痛いどころじゃないですよ~」


「どうせ避けるだろ?」


 まあ、そうだけど。体勢を立て直した私は弓を放ちつつ、魔法を発動させる。


「アースグレイブ!」


 練習して何とか過剰に意識を向けずとも、使えるようになった土の槍をお見舞いする。するとジャネットさんは剣を真横に向けて矢を弾いた後に、地面へ剣を突き刺した。


「アースグレイブ!」


「嘘っ!?」


 所持属性ではないけど、まさかジャネットさんの魔法で相殺されるなんて……。


「ほら、集中しな!」


「はっ!」


 気付くとジャネットさんは正面に来ていた。やばっ! とっさに弓を投げて魔法を詠唱する。


「遅い!」


 ガンッとジャネットさんの剣の腹が私の頭に当たる。かなり力は抜かれてたけど、それでもちょっと痛い。


「アスカは驚いた時、絶対にびくって一瞬止まるね。その癖は治さないといけないよ。せめて後ろに下がるとかね」


「はぁい」


 そこまで言うと、ジャネットさんはリュートたちの方へ向き直る。


「まあ、Cランク先輩の戦い方を見て分かっただろ? 出来るだけ相手の攻撃を封じたり、不意を突きながら戦えってことさ」


「でも、アスカは武器と魔法を同時に使うじゃんか」


 ガン


「いてっ!」


「アスカはあんたたちと違って、普段から戦闘訓練をしてないから、さっきの戦い方もとっさのものだよ。最初に考えてた戦い方でもないしね。つまり、即興のパターンってこと。それでも不意を突いたり、自分が有利になるようにすぐに判断してるんだ。あんたらは普段から同じ得物を使ってるんだから、もっと戦略を練るんだね」


「確かにアスカは宿で弓を射る練習をしている時も普通に射ってるだけだし、色々普段から考えてるわけじゃなさそうですね」


「それでもあれだけやれるんだから、あんたらはもっと頑張らないとね。せめてあたしが魔法剣を出すぐらいにはね。言っとくけど、アスカが魔法使いだから出したわけじゃないよ。使わないと危ないと思うから使ってるんだ」


「そ、そうですか」


 褒められてちょっと嬉しいかも。


「でも、たまにはあたしみたいな相手との戦い方も考えときなよ。離れようとするのは良いけど、接近された時の対処がまるでなってないよ」


「はい……」


 せっかく褒められたと思ったらすぐに怒られてしまった。まあ、確かに慌てて弓を放り投げちゃったし、しょうがないかぁ。


「自分の得意武器が相手と違うなら、何とかそこに持ち込む。一緒なら隙を作る戦法を考えることだね。自分優位でない状況も考えなよ」


 その後は私以外の三人が入れ替わりで色々な戦い方を考えていた。私は後衛だし格闘技が出来るわけじゃないからね。手加減も慣れていないから危ないと言われたのだ。

 買取を考えて獲物の急所を狙うことは慣れてるけど、逆に致命傷を避ける攻撃が難しくなっているので、あまり弱い相手と戦わないようにだって。


「ふっふっふっ、強さゆえの孤独……。何て言っててもしょうがない。寂しいけど、自主練習でもしておこう」


 一緒には動けないのでちょっと離れて弓を射る。魔法は色々な場面で使ってるけど、弓は戦い以外ではほぼ使わないので、こういう時に練習しておかないとね。的を描いてそこを狙う。


「う~ん。四回射ると一回はちょっと外れちゃうな。もうちょっと、腕の動きを考えよう」


 今は狙う時間も十分あるから、こういう場合には外さないのが鉄則だ。狙えるのは最初だけで、乱戦になってくるとすぐに射らないと、相手に接近されちゃうしね。


「もう一度、修正してと」


 再び四射を試みる。今度はほぼ同じ場所に当たった。


「いい感じだ」


 この後もしばらく稽古は続いていたけど、お昼となりお開きになった。実際に依頼を受けてる最中でも戦ってる時間はそこまで多くないし、ほどほどにしないと怪我にも直結しちゃうからね。


「んじゃ、解散するけどあんたたちもしっかり練習しておくんだよ」


「は~い」


 結局、リュートたちはジャネットさんに魔法剣を使わせることが出来ずに終わっていた。リュートも途中から遠慮なく魔法を使っていたんだけど、それでもうまくかわされてしまっていた。普段から魔法を前面に出さないから、タメが出来てしまっていると言われていた。


「それじゃあ、またねアスカ」


「うん、リュートたちもちゃんと休みなよ」


「おう! 今日はしごかれたからな。しっかり休むぜ!」


「じゃあね」


 みんなと別れて宿へ戻る。ジャネットさんは午後から発生した依頼がないか見に行くとのことだ。週に一度も依頼を受けないのは気持ち悪いって言ってたっけ。


「う~ん。私も見習った方がいいのかなぁ? でも、今は細工を進めないと」


 バルドーさんに渡すものが一つ残っているから完成させてしまわないとね。宿に帰ったら早速、細工道具を広げて作業を開始する。

 まずは水晶を丸くしたものとくり抜いたものを二セット。今日のところはこれが完成すれば作業完了だ。明日以降に本格的な細工をすれば、明後日には完成するだろう。


「それじゃ、作業開始!」


 こうして、午後から作業を開始した私は予定通り、翌々日の午前中に細工を完成させたのだった。



「よし、後はこれをはめ込めば……」


 カチッ


 綺麗にはまった音がする。特に欠けも発生していないみたいだし、出来栄えは上々だ。


「ちょっと柄は面白みがないけど、こういう基本的なものが好かれることもあるよね」


 何より在庫が確保できたのが大きい。頑張って力作に挑戦して、期日に間に合わなかったら意味がない。


「これで、バルドーさんに渡す二重水晶のイヤリングはと……。バラが一つに図形を組み合わせたのが二つ。三重水晶が一つに小さい花のやつが二つか」


 合計で六つ。最初の出来栄えを思えばかなりの数が出来たと思う。


「これだけあったら大丈夫かな? 一回お昼過ぎにでもバルドーさんに伝えよう」


 宿の場所は前に聞いていたのでそこへ向かう。


「こんにちは~」


「あら、アスカちゃんね。バルドーさんならちょっと出かけてるわ」


「そうなんですね。それじゃあ、依頼が終わったって言っといてもらえますか?」


「はい、伝えておくわね」


 受付にいた人はたまにお昼にパンを買いに来る人だった。私のこともバルドーさんから聞いているみたいで、伝言をお願いして宿に戻る。


「それじゃあ、後は待つだけだしゆっくりしよう」


 それから夕方までは、アルナやミネルたちと一緒に宿の庭で遊んだ。



「おう、アスカ居るか?」


「バルドーさん、伝言聞きました?」


「ああ。そんで物はどこだ?」


「部屋にありますから待っててくださいね。行こう、みんな」


《チッ》


 ミネルたちと一緒に部屋へと戻る。バルドーさんたちは食堂で待っているので、細工を持って食堂へ下りた。



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