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【3巻発売中!】転生後はのんびりと 能力は人並みのふりしてまったり冒険者しようと思います  作者: 弓立歩
アスカと二度目の季節、初夏

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市場漁り


 久し振りに朝から街に繰り出した私はミネルたちを連れて目的地を探していた。


「まずはどこに行こうかな?」


 まだちょっと早い時間だから、あんまり店も開いてない。普段からこの時間は出歩かないから、どこが開いてるかよく分からないや。


《ピッ》


「ん?」


 珍しくエミールがアピールした先を見てみると、その先には市場があった。市場か……確かにこの時間なら一番にぎわってる場所かも。お店関係の仕入れ時間は過ぎた後だし、一般向けの出品に変わっているだろう。


「それにお店向けの掘り出し物が残ってるかもしれないし、のぞいて行こっか」


 朝の市場に行くのは久し振りだ。市場は食材の調達はもちろんのこと、街の外からのものを見るのも大体はここになるからだ。

 もちろん商店もあるけど、専門に扱っているところはそれなりにお値段も高い。こういうところの方が安くて物もいっぱいあるんだそうだ。


「じゃあ、市場を見ていくけど、エミールは何が見たいの?」


《ピッ》


「ん、こうげいひんみたい」


「工芸品? 変わったものが見たいんだね。じゃ、そっちに行こっか」


 てっきり、珍しい草花とか食べられそうなものを選ぶと思ってたのに意外なものに興味があるんだなぁ。


「工芸品、工芸品と……」


「ん、アスカちゃんかい。珍しいねぇ、こんなところで会うなんて」


「あっ、食堂の常連さん。商人だったんですか?」


「ん~、微妙なとこだな。故郷の村からこうやって工芸品を引き取っては売って、次行った時に売り上げを渡してるだけだからなぁ」


「それって立派な商いじゃないんですか?」


「週に二度ほど仕事の休みの日に趣味がてら店を出すだけだし、村の幼馴染から頼まれてやってるだけだしなぁ。俺が商人なら、他にも似たのがいるからみんな商人になっちまうなぁ」


「そうなんですか。でも、優しいんですね。村の人の頼み事を聞いてあげるなんて」


「よしてくれよ。昔つるんでたから仕方なくだよ。それにしてもアスカちゃんみたいな子が、こういうのに興味あったなんてな」


「あっ、正確には私じゃなくてエミールなんですけど……」


「エミール……ボーイフレンドかい?」


「違いますよ。この子です」


 私は肩につかまっていたエミールをおじさんに見せる。


「へぇ~、変わった鳥だなぁ。そういやたまに連れてたっけ? でも、色がちょっと違うか……」


「ちょっと前に生まれた子なんですよ。ちょっと恥ずかしがり屋さんですけど」


「そうか。存分に見ていってくれよ」


《ピッ》


 おじさんのところは確かに一緒の村から仕入れているだけあって、デザインは一貫している。主に木彫りの物が中心だけど、たまに銅とかのも見かける。


《ピィ》


 エミールが真剣に眺めている横で、アルナがこれはどうと指さす。


「アルナ、ちゃんと見てる? これ怖いよ。多分魔除けかなんかだろうけど、部屋にはちょっと……」


「おっ! 確かにそいつは魔除けだが、こういうのに詳しいのかい?」


「詳しいってわけじゃないけど、こういうのは魔除けだって言うのを見たことがあって……」


 アルナが指さしたデザインは、般若というかなまはげに近いデザインだった。何かの特集で見たことがあったんだよね。怖いお面とかああいうのは魔除けに使われるって。


「そうなんだよなぁ。魔除けだって言っても子どもが泣くから中々買ってくれないんだよな」


「私ももっと小さい頃だったら、泣いて夢に出るかもしません」


 しかも、一つは切ったところから樹液がちょっと出ていて、それがまるで涙のようになっている。怒った顔で涙まで流しながら迫って来られたら、怖いどころではない。


「とはいえお守りみたいなもんだから、定期的に送られてくるんだよなぁ」


「お芝居とかならいいかもしれませんけど、家にはちょっと難しいかもですね」


「芝居? そうか、そういうのに使えるか……」


 おじさんは何か考え始めた。その間にもエミールは色々なものを見ている。ちょっと迷ったみたいだけど、その中から有翼種の銅像を選んだ。ハーピーって言うのかな?

 どこかにあると言われてる暴風の谷に住んでいるらしい。風が強くて人は踏み込めないけど、そこに翼を持った人型の魔物が住んでいるって逸話があるんだって。


「小鳥だし、こういうものにあこがれるのかなぁ。おじさんこれ頂戴」


「良いのかい? これ結構高いよ。銀貨一枚と大銅貨四枚だよ」


「それぐらいなら大丈夫です」


「そういや、冒険者だったな。まいど」


 おじさんにお金を渡して像をもらう。こうなってくると、家の部屋も一人部屋の方がいいのかなぁ。エミールもだけど、アルナも自分の好きなものを置くようになったらと考えると、再度の拡張が必要かもしれない。


「まあ、その時はその時だね。次はどこ行こっか?」


 再び工芸品などの細工物が多いエリアを歩いていく。ちらほら見知った顔もいるし、おじさんみたいなたまに商売する人は割といるのかもしれない。


「おっ! そこのかわいこちゃん。何か見ていかないか? って、アスカちゃんか……」


「ええっ!? その反応は何なんですか!」


「いやぁ、アスカちゃんはしっかりしてるから、お世辞言っても売れないなぁと」


「しかも、お世辞なんですか!」


「おっと、まぁまぁ気を悪くしないでくれよ。お詫びに二割引きでいいからな」


「しょうがないですね全く……」


 思いがけず割引で買えることだし、何か見ていこうかな。ニヤッとするおじさんの顔を見ることなく私は商品を眺める。ここの商品はと……なんだか今度は外国風の細工物だなぁ。しかも、アステカって感じだ。お土産としては定番なんだろうけど、自分のだしなぁ。


「あっ、でもこの小箱は綺麗だな~」


 太陽神っぽいものを描いてるデザインに細かな細工がしてあって結構いい物かも。


「おっ、それかい。普段なら大銅貨八枚ってところだが、特別に大銅貨六枚だ」


「ありがとうございます」


 思わぬ自分へのご褒美も出来たし、中々私って買い物上手ではないだろうか? そこで気を良くした私はその次の店でも買い物をする。


《チッ》


「ん? どうしたのミネル。お腹減った?」


 そういえば色々な店を見ながら買い物してたけど、結構時間経ってるなぁ。ちょうどいいし、ここで食べていこう。

 市場は食料品はもちろんだけど、きちんと屋台とか食事のできる店もある。そういう店を巡るのも楽しいのだ。


「おっ、アスカちゃん久し振りだな。食ってくか?」


「あっ、肉屋のおじさん。何がありますか?」


「もちろん、アスカちゃんの協力で出来た燻製の他にも取り揃えてるぞ。さすがにここじゃ肉は焼けないがな」


「もう、おじさんたらそんなこと言ってると怒られちゃいますよ」


 レンガ造りの家が多いとはいえ、市場の出店はゴザみたいな上に物を置いてるのが一般的だし、燃えるものもあるから、屋台といえど火は禁止だ。どうしてもという時は別の場所で焼いたものを持ってくるしかない。


「実際にこの前怒られたが、この程度は愛嬌よ。んで、何にする?」


「じゃあ、燻製をお願いします。種類は何がありますか?」


「ん~、そうだな。オークのものと頑張ってサンドリザードのもこの前仕入れたんだぜ! ちょっとだけだが値下がりしてな」


「そ、そうですか……」


「何でも、最近まとまった量が入荷したらしくてな。もうちっと安定してくれれば、良いんだがなぁ」


 心当たりがあるというか、確実にこの前冒険した時に売った肉だろうなぁ。回り回って自分に戻ってくるなんてね。とりあえず、味は確かな店なのでそれぞれ一本ずつ購入する。本当はもう少し食べたいけど、もっと店を回りたいしね。


「おじさん、ありがとう」


「こっちこそ、美味しいものをありがとうございます」


 その場で食べさせてもらったけど、本当に美味しかった。タレが染みてるし、それぞれ食感とか脂の感じも違って、美味しかった。宿だとあったかい食事が多いし、なんだかんだでジャンクっぽい食べ物は出ないから、たまにこういうのが食べられると嬉しいんだ。


「ミネルたちもご飯貰っちゃったしね」


 私が食べてる間、じっと見つめていたミネルたちに、おじさんが端肉をくれた。家族で仲良く分け合って食べてる姿もかわいかったなぁ。でも、ミネルたちもそこまでは食べてないから次の店はみんなが食べられる店にしよう。


「というわけで、お野菜が食べられる店に行こう!」


 早速、肉屋を離れて次の店へと向かう。とはいえ、普段来ない場所なのでどこに何があるか分からない。人も結構いるし、頑張って探さなくちゃ。


「おう、アスカじゃないか。こんなところでどうした?」


「バルドーさん! バルドーさんこそどうしたんです?」


「いやぁ、色々なところで食べてたんだが、そういやここはまだだったって思ってな。お前こそ、今までここで見かけなかったが?」


「エミールが来たいっていうから来てて、今はみんなで食べられる野菜の店を探してるんです」


「なるほどなぁ。なら、あそこに行くか?」


「あそこですか?」


 何やら、変というか変わった格好のおじさんがいる店を指さすバルドーさん。おじさんは鉢巻きに首にタオルにTシャツ姿だ。変ではないんだけど、そういう風貌の人が他に誰もいないので、目立ってしまっている。


「あそこは中々いい野菜を仕入れてるんだぜ。店がこの時間から開くのも、朝に仕入れをしてるからなんだ」


「へ~、それじゃそこにします」


 バルドーさんに店まで連れていってもらい、代わりに私は肉屋のおじさんの燻製肉を教えてあげた。


「ありがとうアスカちゃん。それじゃあまたね」


「はい」


 ジェシーさんと挨拶を交わして別れ、紹介してもらった店で注文する。


「はい、お嬢ちゃん何にする。バルドーさんの紹介だから安くしておくよ」


「良いんですか? ありがとうございます」


 おじさんの店は野菜スティックとかを売ってる店だった。新鮮な野菜を浅漬けの素とかにさっと漬けて売っているみたいだ。それでも野菜自体が新鮮なのでかなり美味しいとのこと。


「へ~、それで会ったんれすね~。ぽりぽり」


 食事をしながらおじさんと話をする。そこそこ人も来るんだけど、買って帰る人が多くてその場で食べてる人はあまりいない。何でもお昼とか夕食の一品として買っていく人が多いのだとか。


「うむ。商隊の一員だった頃に魔物に襲われてたところを助けてもらってな。そん時、お礼にって渡したのが今食べてる奴だ。それがうまいってんで店を出すように言われてよ。俺の村じゃ当たり前のやつだったから、最初は半信半疑だったがこうして軌道に乗ったってわけだ」


「じゃあ、二重に恩人ですね」


「だなぁ。久し振りに顔が見れてよかったよ」


 ひょっとしたらバルドーさんもおじさんの店が気になって、ここに来てたりしてね。ミネルたちも一緒に生野菜の端をもらって満足げだ。そっちも味は付いてないんだけど、自然の美味しさっていうか、味が濃いんだよね。何で知ってるかって? いやあ、あんまり美味しそうだったからついね。




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