エーンヤコーラ
シャスさんたちとお昼ご飯を食べた私は早速、工房にお邪魔する。
「ほら、これが胸当てというか軽鎧の部分だ。つけてみろ」
「はい」
そのまま今の服装でつけてみる。皮自体は安いのを使ってるみたいだけど、形とかは綺麗だ。
「うう~ん、ちょっと大きいですね」
「具体的にどのへんだ?」
「えっと……胸とか脇の下辺りも……」
「そうか、ならこれをつけてみろ」
いったん鎧を脱いでコルセットじゃないけど、そんな感じのを渡される。
「これは?」
「お前が成長するまでのつなぎだ。それを付ければ成長した姿と同じ体格になるって寸法だな」
へ~、昨日はそんなに伸びないのかぁって思ったけど、これをつけてみると思ったより成長するんだなと思った。
「つけてみました」
「どうだサイズは?」
「ちょうどいいぐらいですね。やや空きがある感じですが」
「まあ、冬にも使うから仕方のないところだな。ちゃんと成長したら、夏向けの物も作ってやるよ」
「本当ですか!」
「ああ、高級品はアフターケアも大事だからな」
「しっかりしてるんですね」
「そしたらまた、いい素材持ってきてくれるかもしれないからな」
「そっちですか……」
本当に鍛冶が好きなんだなって思った。サイズ合わせはいったん終わりなので、ちょっとだけお話をしてから工房を出た。そろそろ板の方が足りなくなってるかな?
「そうそう、そうやって溝を作っておくんだ。屋根の分はもういいから壁の分は溝の凹凸に合わせて重ねていけば隙間がなくなるからな」
家の前に行くと、数人の人が足場から屋根を作っていて、ノヴァはというと壁を作る説明している様だ。壁といえば……。
「ノヴァお疲れさま」
「おう、アスカか。こっちは順調だぜ! といってもお前の出番はまだないけどな」
「そうなんだ。ところで壁の木は焼いたりするの?」
「焼く? 何でだ?」
「確かそうやったら長持ちするって聞いたんだけど……」
中学の時におじいちゃん先生がそんなことを言っていた気がする。
「へ~、そうなのか。んじゃ、試しにやってみるか。ほんとならこの家もだいぶ持つしな」
「でも、火とかどこで使えばいいのかな?」
「ん? アスカが自分でやるんじゃないのか。魔法を使って」
あ、そうか。それならやりすぎて燃えたりしないよね。
「じゃあ、試しにやって見るから斜めに板を置いてくれる」
「ほいよ。リュートも頼む」
「了解」
三本の柱を組んで斜めになるように立てかけていく。後はこれを燃やせばいいよね?
「え~と、ファイア」
ボゥと片面を勢いよく焼いていく。そのまま火を当て続けて黒くなるのを待つ。
「う~ん。でも、燃えてると色って分かりにくいよね」
赤色のフィルターがかかっててよく見えないんだよね~。
「アスカ、もういいんじゃない?」
「そう?」
「なら、ちょっと消すね」
私は魔法を消すと表面を確認する。
ブスブス……
表面からは焦げて煙が立ち上っているものの、燃え続けてはいない。うまく焼けたみたいだ。
「焼きっていうかちょっと炭になってるけどいいのかこれで?」
「多分大丈夫だと思う」
「なら、これで壁を作るか。どんどんやってくれ、アスカ」
「オッケー」
この日の作業は屋根を作って、そこに防水の液体を木に塗って家作りは終わった。
「そんじゃ、後はレンガだな。成形して切り出す時に空気を抜くのが大変なんだよな~」
「そうなの?」
「ああ、叩いて伸ばしてまた成形して作ることもあるんだぜ。ほんとに効果あるかは知らないけどな」
「ふ~ん。魔法とかで抜いたりできないのかなぁ?」
「じゃあ、やってみればアスカ。僕も挑戦してみるよ」
「まだ、MPに余裕はあるしそうしよっか」
リュートと二人でレンガを成形して空気を抜いてみる。
「リュートそっちはどう?」
「う~ん。同じレンガでも部分部分で差があるかな? アスカは?」
「何とかできそう。ほら」
私はリュートに出来たばかりのレンガを見せる。割と均一に形も出来たと思うんだけど……。
「アスカはやっぱりすごいね。僕も頑張らなきゃ」
「ならこれ使えよリュート」
ノヴァが四角い箱を持ってくる。
「これは?」
「レンガの型。お前結構形作るのに気を使ってるからさ」
「ありがとう、ノヴァ」
型を使い始めるとリュートもコツをつかんだみたいで、綺麗なレンガを作っていた。途中からはいい練習になると村の人たちも手伝ってくれて、これで二日目は終了。
「さて、今日は三日目。そろそろ出来上がりかな?」
村の人たちもほぼ総出で手伝ってくれるから進行速度も速い。まず今日のところは屋根の確認だ。
「う~ん。まだ乾きが甘ぇな。午後まで待つか。アスカ、先に板張りしていくから頼むわ」
「は~い」
先に一階の床部分を作っていくので、私は早速板作成にかかる。ちなみに一階部分は半分土間の農具置き場と、キッチンの組み合わせだ。お風呂は各家庭にはなくて、宿のところに共同浴場があるんだって。昨日も身体を拭いただけだから、今日こそは入らないとね。
「アスカ、これ貰ってくよ」
「うん、リュートも頑張ってね」
早速できた板をリュートに運んでもらって、私は次々と板を作成する。黙々と作業を続けるとリュートが再びやって来た。
「もう板は間に合いそうだって。代わりに悪いけど株起こしをしてくれって」
「なにそれ?」
「切り株を掘ってくれればいいって言ってたよ。また木を植えるからだってさ」
「分かった。やっとくね」
「全部やらなくてもいいって言ってたから、適当に切り上げてお昼にしようね」
「は~い!」
穴を掘るのは魔物埋めで慣れてるから簡単だ。十個ほど切り株を掘り進んだところでふと思う。こういう切り株を使ったテーブルとかあったよね。割れ目とかが自然でいいとか言ってたなぁ。
「何とか乾燥させてできないかな?」
とりあえず分厚目に切った切株に縦に切ったものを合わせて、テーブル状にしてみる。簡単にできたけど、このサイズだと小さいラックにしかならないな。何とか工夫して一枚の大きな板に出来ないかな?
「とりあえず横同士を楔型でくっつけて、下にも切り株を切った板を引いて下はでっぱり、上はへこませてと……」
思ったよりぶ厚くて重いけど、何とか大きめのテーブルにできるサイズの板が出来た。
「後は乾燥させて……足をつけてと」
足も、天然素材だからちょっと曲がったりしているけど、味があっていいかな? こっちも熱風を送って外を乾燥させる。
「アスカちゃん、まだ作業中?」
そうこうしているとお姉さんがやって来た。
「こんにちは。ちょっと思いつきでテーブルを作ってたんです」
「そうだったの。でも、もうお昼だから休みましょうか」
「もうそんな時間なんですか? 分かりました」
「せっかくだから、そのテーブルで食べましょうか?」
「だ、大丈夫ですかね。テーブル作るのなんて初めてで……」
「それだけ立派なら十分よ」
私はテーブルを浮かしながら、村まで運んでいく。
「アスカ遅かったな。なにしてたんだ?」
「ちょっとテーブル作ってたの。ほら」
「わっ、また立派なの作ったね」
「でも、つやとかが出なくて……」
「そりゃそうだろ。ニス塗ってねぇじゃん」
「ニス?」
「こういうのだよ。こういうの塗らないと駄目だぜ」
「そうなんだ」
ノヴァがニスらしき液体を見せながら説明してくれる。うっ、でも臭いがきついかも。
「後で貸してやるから自分で塗ってみろ。別にこれぐらいいいよな?」
「ええ、もちろんですよ。でも、お土産にでもされるのですか? 結構な大きさですが……」
「あっ!」
そっか、作ってもこのサイズじゃかなりマジックバッグを圧迫しちゃうな。
「それなら、うちで使わせてもらってもいいかしら? ちょっと傷んできたし、新しいテーブルが欲しかったの。もちろんお代は払うわよ」
「良いんですか?」
「もちろんよ」
ほっ、一先ず無駄にならなくて済んだみたい。思い付きで細工するのはちょっと控えよう。
「後、継ぎ目のところも先に接着した方がいいからすぐにやっとけよ」
「うん」
お昼ご飯を食べたら早速作業に入る。う~ん、こんなものかな? 後は乾燥させるだけだからこのまま干しておこう。
「午後からだけど、アスカはちょっと休んでていいぞ」
「え、いいの? みんな忙しいんじゃ……」
「そうだけど、こっからはレンガを焼いていこうと思って。長丁場になるから、今のうちにな」
「そうなんだ。じゃあ、ちょっとリンネと遊んで来るね」
「あんまり疲れて帰ってくんなよ」
「分かってま~す」
リンネを伴って村の広場で遊ぶ。といってもリンネは活発な方ではないみたいで、どっちかというとひなたぼっこに近い。
「リンネって大人しいんだね」
《わぅ~》
夜行性だからあんまりまだ動かないだけ? そうなんだ。
「とりあえず、洗って臭いも消えたしちょっと失礼してと」
背中近くに頭を乗せてもふもふ感を味わいながらごろんと横になる。
「あ~気持ちいい~……」
「アスカ、起きてるか~」
「ふぇ?」
「作業も一段落したからレンガの焼き入れに入っていきたいんだけど……」
「ん? もう良いの?」
いつの間にか作業が進んだみたいで、ノヴァとリュートが迎えに来た。
「あれから二時間経ってるけどな」
リンネの枕が気持ちよすぎて寝ちゃってたのか。
「リンネありがとね」
《わん!》
「はいはい。じゃあ、ごほうびだね」
私はジャネットさんからもらったカーム印の干し肉をあげる。うむむ、相変わらずいい食いつきだ。
「こうしてると野性味があるんだけどね」
普段は本当に飼い犬みたいな感じだ。
「ほら、行くぞ~」
「は~い」
ノヴァに促され、立ち上がってレンガを焼きに行く。その道すがら今日の予定を聞く。
「まずはアスカが魔法を使って高温で焼くだろ? んで、疲れてきたら、俺と交代。薪に火をつけて準備するから、ちょっと早めに頼むな」
「ノヴァはずっとやるの?」
「いや、一緒に村の人と見ながらの途中交代だ。明け方になったら起きて、確認してから終わりだな」
「そうなんだ、頑張ってね」
「おう! ってわけで、前半はよろしくな」
「任されました」
早速、かまどに向かい確認する。うん、準備は万端のようだ。
「それじゃ、いくよ~」
中心部に火の魔法を入れて焼いていく。火は強めだけど、長時間やるからちょっと抑え気味にと……。
「う~ん、もうちょっとかなぁ」
なんだかんだ村の人たちとお話ししながら早、三時間ほど。さすがにそろそろ限界かな?
「適当に火をつけるだけなら楽だけど、温度調節しながらだからね」
集中力もある程度使うし、思ったより疲れる。
「ごめんなさい、ノヴァを呼んできてもらっていいですか?」
「はいはい、ノヴァ君ね」
「アスカ、そろそろか?」
「うん。後十分ぐらいかな?」
「了解。んじゃすぐに火の準備と……」
大量の薪にノヴァが一気に火をつける。
「そんなに使うの?」
「まあ、全部を焼かないといけないし、火力が大切だからな。これでも追加でどんどん使うしまだまだだぞ」
「へ~」
それからちょっとして、良い感じに火がついたのでノヴァと交代した。
「アスカ、もう良いの?」
「うん。ちょっと疲れちゃった」
「それなら、お風呂入ってきたら? 村の人が沸かしてくれてるから」
「本当!? 入る入る~」
その日は久し振りにお風呂へ入ってゆっくり出来た。
「魔法を使い続けて疲れたけど、お風呂にも入れたしいい一日だったな」




