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【3巻発売中!】転生後はのんびりと 能力は人並みのふりしてまったり冒険者しようと思います  作者: 弓立歩
アスカと最後の季節、春

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アスカと従魔たち


 フィアルさんの店の前に着いたので、そっと中を見てみる。この時間だと仕込みをしていて忙しいかもしれないからね。


「こんにちは~」


「アスカちゃんじゃない。どうしたのこんな時間に?」


「ちょっとライズを借りたいんですけど……」


「ライズを? 別にいいわよ。元々アスカちゃんが連れて来てくれたんだし」


「じゃあ、失礼しますね」


 私はライズを連れに店の裏に行く。


「ライズ~」


《ミェ~》


「アスカちゃんいらっしゃい」


 今日は店の人だけど、知らない人だ。店員さんも何人もいるから知らない人もいるんだよね。向こうは知ってるみたいだけど。


「こんにちは~。ライズを借りていきますね」


「は~い。ライズ君行ってらっしゃい」


《ミェ》


 ライズをつないでいるロープをそのまま受け取り店を出る。


「さあ、これで準備はばっちりだし教会に行こう」


 一応ライズは目立たないように簡単な布をかぶせておく。


「こんにちは~」


 いつものように教会の裏口からこっそり入っていく。今日ぐらいは良いかなと思ったんだけど、やっぱり礼拝とかしてる人も多くて、目立っちゃうからね。


「いらっしゃいませ、アスカ様」


「シスターさんこんにちは! ムルムルたちは?」


「もう準備が出来ております。待ち遠しかったようですわ。ですが、くれぐれも外出は内密にと安全の確保をお願いします」


「はい! 必ず守りますので」


 シスターさんに案内されて部屋へ入る。


「おはようムルムル、テルンさん」


「アスカ、おはよう」


「おはようございます」


「じゃあ、早速行きましょ」


「うん。でも、ムルムルたちは普通の格好だね」


「さすがに外出がばれると大騒ぎになりますので……」


「そうそう。これでも私たち巫女は地方と言えど、滅多に神殿から出ないんだから。巡業以外で出歩くのは災害の慰霊くらいね」


「そんなに少ないんだ……」


「一歩でも出ますと、警備の質が変わりますから」


 う~ん、やっぱり有名人って大変なんだな。それじゃあ、今日は目いっぱい楽しんでもらわないと!


「よし! じゃあ、案内するね」


「我々にも確認をしてくれ」


 あっ、護衛’sだ。どこから調達したのか冒険者風の格好をしてる。だけど、どこかで……。


「それってジュールさんの鎧ですか?」


「ああ、今日の朝に急いで事情を話して借りてきた。さすがに儀礼鎧では動きづらいし、すぐにばれるからな」


「そうだね。でも、僕はこの鎧の方がいいかな。軽いし、堅いしで」


「確かに質は一級品だな。持って帰りたいぐらいだ」


「二人とも変な話をしないの。キチンと冒険者風にしてよ!」


「「はっ!」」


 だ、大丈夫かな? すでに主人と従者っぽいんだけど……。程々にムルムルの服を豪華にした方がこれだと目立たないかもしれない。


「では、参りましょうか」


「はい」


 先頭を私と貴族の人が、そのすぐ後ろにムルムルとテルンさん。最後尾にもう一人の護衛の人だ。でも何だか街の人の視線を感じる。うまく変装できてるとは思うんだけど。


「なんだあのパーティー?」


「アスカちゃんが案内してるんだし、大丈夫じゃない?」


「一応ギルドに確認するか……」


 上手く行ってる……よね。そのまま、東門まで行き門番さんに話をする。今日の門番さんは珍しく隊長さんだ。


「お話は伺っております。お気を付けください」


「はい。ありがとうございます」


「話が通ってるんだ……」


「一応、教会も各貴族から寄進とか受けてるからね。何かあった時に説明できないといけないのよ」


「そうですね。お伝えせずに何かあれば領主の方が責められてしまいますし」


 領主様が責められちゃうのか。すごい世界に住んでるんだなぁ。


「そんなことより早く行きましょ!」


「うん」


 東門を越えたら北へと進んでいく。


「この辺でもオーガを見たことがありますから気を付けてください」


「オーガか望むところだ!」


「おいおい、僕らは何もないのが一番でしょ」


「そうだが、やはり剣も振るう機会がないとな」


 この護衛の貴族の人、前から思ってたけどちょっと戦闘狂の気があるよね? まあ、腕は確かだったけど……。


「あっ、この先に見える崖を越えるんでちょっと待ってくださいね」


「この崖を越えるの? 無理じゃない?」


「そこで、風魔法ですよ。私たちが見本を見せますね」


 私とティタが風魔法で跳んで崖の上に着地する。


「ほう、中々のものだな」


「じゃあ、私たちもお願いいたします」


「はい! じゃあ、一気にやっていきますね。ティタは護衛の二人をお願いね」


「ワカッタ」


 私がライズとムルムルとテルンさんを、ティタが護衛の二人をと思ったんだけど……。


「あれ、ライズは?」


「ミネル、アゲタ」


 ライズだけはいつの間にかミネルが崖の上に上げていた。まあいいや、私は二人を上げよう。


「うわっ!? 飛んだ」


「今は一瞬だから跳んだだけどね。空飛ぶと気持ちいいよ」


「そ、そう。でも酔いそう」


 「あ~、それは個人差が激しいみたいだね」


 ジャネットさんは船酔いに近い感覚とか言ってたっけ?


「しかし、素晴らしい景色ですわね。アルバの町もよく見えますし、森も一望出来ます」


「そうなんです! でも、前にここで魔物に襲われたので中々来れなかったんですよね」


「ちなみにどんな魔物でした?」


「え~と……確か、オーガの上位種一体とオーガ二体に、オーク二体とオークアーチャー二体だったかな?」


「なっ!? 大丈夫なのか? この辺りではかなりの戦力だぞ」


「前は別のパーティーが襲われてここまで逃げてきたので、大丈夫なはずです」


「それにしてもその相手に勝つなんて、やるわね」


「あはは、倒したのはジャネットさんですけどね」


 という話になっているので、ぼろを出さないようにしないと。


「ほら、それより見てください! 綺麗な花と鳥たちですよ! 私も、以前のことがあってからあまり来てないんですが……」


《チッチチチッ》


 私たちの姿を確認すると、住んでいる鳥たちが一斉にこっちに向かってきた。


「わっ!? どうしたの?」


《チチッ》


 ミネルが前に出て鳥たちと話をし始めた。そういえば、見たことのある鳥さんもいるような……。


「ミネル、ショウカイチウ」


 ちう? ああ、紹介中ね。かわいいなぁ~。


《チッ》


《チチチッ》


 それからも何度かミネルがお話をした後、鳥たちがばっと私たちに群がってきた。


「な、なに!?」


「か、歓迎してくれてるんだと思います……」


「おおっ! これがヴィルン鳥か! 成長してもそこまでは大きくないのだな」


「そうだね。でも、僕はこんな近くで見たのは初めてだよ」


 よく見ると、巣の方には二羽のヴィルン鳥が残っていて、ミネルとレダと何やら話をしている。


「どうしたのかな?」


「ミネル、レダ、ショウカイチウ」


 おおっ! 娘さんを僕に下さい! 的な一大イベントだ!!


「じーっ……あたっ!」


「何じろじろあっち見てんのよ」


「いや、あそこで娘はまだ誰にもやらん! な会話が行われていると思うと……」


「何それ? アスカの近くじゃそんな風習があるの? こっちが早婚って言ったって十五ぐらいでもらってくれるなら普通よ?」


「そうですわね。どの道、ほとんどの家は同じ町に住むのですし、安定した生活が確保できるということでそのぐらいが人気ですわね」


「はえ~。みんな早いんですね。それだと私も後一年ぐらいで結婚ですか~」


「アスカが結婚だなんて考えられないわね」


「ムルムル様。そんなことを言ってはいけませんよ。アスカ様にも良い出会いがあるかもしれないではないですか」


 現状は望み薄ってことかな? まあ、特に考えてもないけどね。


「あっ、話も終わったのかな?」


 他のヴィルン鳥や他の鳥たちの相手をしながら話ていたら、ミネルたちのお話が終わったみたいだ。晴れて認められたようで、レダがミネルにすり寄っている。


「おおっ! 早速他のヴィルン鳥たちもミネルに群がってる」


「ミンナ、ウレシイ」


 まあ、新しい門出だしね。祝ってもらえるのが一番だよ。そう思いながらみんなの方を見ると……。


「みんな何やってるの?」


 よく見ると、ムルムルはもちろん、護衛の人とかも抜けた羽根を集めている。


「何ってお土産に決まってるでしょ? ヴィルン鳥の羽根は幸運のお守りとして祝い物に人気なのよ」


「ええっ!?」


 これはうちの巣箱掃除で毎回捨ててるなんて言いづらいな。あれ売れちゃうのか……。でも、あれで商売かぁ。ん~、まあ、ミネルたちの食事代に回すならいっか! リサイクル精神とミネルたちの豪華なお食事のためならと私は納得することにした。


「ちなみにおいくらですか?」


「う~ん。大きさとか色にもよるけど、数枚で銀貨一枚かしら? 祝い物だしね」


 銀貨一枚……。確かに祝い物って値段に見合ったものが少ないけど、それでも高くない? これは大量に売りに出すのはやめよう。


「高いと思われるかもしれませんが、結婚相手や両親にプレゼントすると思えば安いということみたいですわ」


「そうですけど、やっぱりちょっと高いですよ」


「まあ、僕も平民なのでそう思いますが、こればかりは縁起物なので仕方ありません。実際、僕も結婚式に合わせて買いましたしね」


「そうだったの? いくらぐらいだった?」


「確か……八枚ぐらいで銀貨三枚でしたか。お互いの両親と兄弟の分も入れましたし」


 兄弟か~。家族の分ってなるとそれだけで結構するんだな。宿の半月分だよ。なんて話もしながら、和やかに時間を過ごす。


「そろそろ、お腹が減ってきたわね」


「では、お昼にしましょうか」


 お昼ご飯はムルムルたちが教会の人が作ってくれたお昼。私はミーシャさんに頼んで作ってもらっていた簡単なスープだ。


「あれ? アスカはスープなのね。冷たいスープだとまだ肌寒くならない?」


「大丈夫だよ。ファイア」


 私は魔法ですぐにスープを温めると飲み始める。ついでに干し肉も足してと……。


「へぇ~、やはり火の魔法は便利ですね」


「そうですね。火起こしとか大変みたいですし」


「そうね。やってるところを見せてもらったけど、めんどくさそうだったわ」


「慣れればそうでもないですが。天候にも左右されますし、ナイフで削って火種を用意するのが大変ですね」


 ムルムルも野営の時に見せてもらったらしく、手間なのは知っていたようだ。お付きの騎士さんも得意ではなさそう。


「そうですよね。雨の日や雨上がりの後は、木が湿気っていて火魔法でも大変なんですよ」


「だが、我々は一定以上の人数でしか動かないから、必ず火魔法の使えるものが一人はいるがな」


「なるほど、火の当番がいるんですね」


「そうよ。水は私たちが使えるから、後は火が使えればそうそう困ることはないの」


「うちは水は自前になるので羨ましいです」


「でも、これだけ火の調節が効くのは良いわね。うちだと付いてくるのは毎回違う人だから、油断ならないのよね」


「そうなの?」


「ええ。どうしても水属性の方が集まる一方、火の属性の方は少ないのです。ですから、むらと申しましょうか勢いが一定以上だったり、本当に火付け程度だったりと様々なのです」


 それはそれで大変そうだ。料理中ずっと魔法を使うわけにもいかないし、薪拾いも普通に必要そうだな。その後も食事にかこつけて、様々なことを話した。

 もちろん、ミネルたちには別途食事も用意してある。ライギルさんがいないのでそこまでいいものはなかったけど、それでも普段よりは豪華にしてみんなに配った。


《チチチッ》


《チッ》


《チュン》


《ミェ~》


 うんうん、みんな喜んでいるみたいだ。おっと、ティタには魔石をあげないとね。



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