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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
竜の聖域

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094 じゃーにー

 山を目指し平原を進む。


『湖を渡って崖の下にある洞窟を抜けて、そこには、湖が広がっていて、そこにある建物を抜けたら平原で、今は山を目指している。目的地は、その山にある洞窟だよね。なんだか、言葉にすると不思議な感じだよね』

『ふむ?』

 銀のイフリーダは、よく分からなかったのか首を傾げている。

『自分には不思議な地形に思えるんだけどなぁ』

『ふむ。そういう場所もあるというだけなのじゃ』

『そうだね。そう思うことにするよ』


 木々がまばらに生えた平原を進んでいく。目的地の山が見えているので、迷うことはない。


 すると、まばらに生えている木の下に犬のような動物が丸くなっているのが見えた。

「堅い拳さん、あれは……?」

 堅い拳さんも、その動物に気付いていたのか、口に指を当て、『静かに』という合図を返してくる。

 堅い拳さんに『了解』と頷き返す。


『イフリーダ、あれは魔獣かな?』

『うむ。森の小物よりも、さらに弱いと思うのじゃ』

 森で戦った小動物より弱いなら、今の自分なら楽勝だろう。


 鉄の槍を構えるが、それよりも早く堅い拳さんが動いていた。


 堅い拳さんが、静かに音を立てないように犬もどきへと近づき、持っていた木製の弓を構え、放つ。

 鉄の矢が犬もどきの脳天に刺さる。


『命中した』

『ふむ。狙う腕だけは悪くないのじゃ』

 銀のイフリーダも堅い拳さんの弓の腕前を、微妙な感じだが、褒めている。


「まだなのです」

 堅い拳さんが次の矢を番える。


 脳天に矢が刺さった犬もどきが、体を震わせながら起き上がる。

『あれで、生きているんだ』

『うむ。これが魔獣の生命力なのじゃ。すでにソラは知っているはずなのじゃ』


 起き上がった犬もどきが、頭に矢が刺さったまま、こちらへと駆けてくる。堅い拳さんが次の矢を放つ。


 さらに矢を番え、放つ。


 さらに放つ。


 放つ。


 と、そこで、犬もどきは駆け出した勢いのまま、倒れ込んだ。


 犬もどきが動かなくなったのを確認して、荷物持ちの戦士の一人が動く。犬もどきに刺さった矢を回収しているようだ。手持ちの矢には、どうしても限りがある。再利用できるものは再利用すべきだから、この行動は当然だろう。


 しかし、戦士は矢の回収を終えただけで戻ってきた。

「マナ結晶は回収しないんですか?」

 それに肉だ。

「今は、旅を急ぐ方が優先なのです」

 もったいない。

「すぐに終わります」

 動く。駆け出しながら、鞘紐を外し、鉄の剣を引き抜く。


『新しくなった剣を試してみるよ』

 そのまま倒れた犬もどきの体内にあるマナ結晶の位置を確認し、鉄の剣を下から上へと切り上げる。

 犬もどきの体がぐちゃりと裂けた。

『切れ味はまぁまぁだね』

 切れ味だけで言えば、自分が頑張って磨いた折れた刃の部分の方が上かもしれない。


 鉄の剣を振り払い、刃についた血を飛ばし、鞘に収める。そのまま犬もどきの体に手を突っ込んでマナ結晶を取り出す。

「お待たせしました」

 取り出した小さなマナ結晶を堅い拳さんの前へと持っていく。堅い拳さんは、少しだけ驚いた様子でこちらを見ていた。

「強大なマナを持った存在を倒したというのも納得なのです。その結晶はソラが持つと良いのです」

「この肉は食べないんですか? もしかして、食べられない肉なんですか?」

 蜥蜴人さんたちは肉が好きだと思っていたから意外である。

「食べられないことはないのです。ただ、堅く、筋が多く、食べるにも手間がかかるのです」

 だから、急いでいる今は食べないってことか。


 煮込みとかにするとちょうど良いのかもしれない。


『邪なる竜の王を倒したら、狩ってみるのも良いかな』

『小物を倒しても、糧にはならないのじゃ』

 手に入った小粒な結晶は、銀のイフリーダに食べて貰った。小粒でも、少しは力になるはずだ。


 その後も、犬もどきを倒しながら平原を進む。この犬もどきは群れを成さないようだが、もし、森の小動物みたいに数で攻めてきたら、苦労するかもしれない――そう思うくらいには厄介だった。

『体が小さいから小回りが利いて、動きもそこそこ早いし、意外に厄介だよね。この魔獣が大きくなったらスコルみたいになるのかな』

『確かに似ているのじゃ』


 歩き続けると、平原の途中に何かが見えてきた。


 それは切り株の上に鉄の板をのせたテーブルのようなものだった。

「これは?」

「第一休憩所なのです」

「ご飯にするのです」

 学ぶ赤が鉄の板の横に座る。


 椅子は……ないようだ。


 自分も、そのまま地面に座る。


「少し休憩にするのです」

 戦士さんが用意してくれた干しキノコを囓り、お手製の水筒から水を飲む。


「ちゃんと休憩場が作られているんですね」

「無理をしても疲れるだけなのです」

 何度も生け贄を捧げるために往復していた道だ。休憩場があって当然だった。


 簡単な食事を取り、少し体を休め、すぐに出発する。

「今日の夜には湿地帯の入り口まで進むのです」


 犬もどきを倒しながら、平原を進み続けると、いくつもの水たまりが見えてきた。それに合わせて、地面もぐちゃぐちゃとぬかるんだものになる。


 ここが湿地帯なのかもしれない。


 ぬかるんだ地面を進む。


 空が紅く染まり始めた。

『もう夕方だね』


 やがて日が落ち、暗闇に染まる。


 それでもぬかるんだ地面を歩き続ける。


「ソラ、そっちは深いのです。危険なのです」

 学ぶ赤の言葉を聞き、慌てて足を止める。暗くてよく見えない。


 蜥蜴人たちは、この暗闇でも問題無く周囲が見えているようだ。


「すいません。夜目が利かないので……」

「ああ、ソラがヒトシュだということを忘れていたのです」

 学ぶ赤さんが、そう言って、こちらの手を取った。

「このまま着いてくるのです」

「確かに私たちの感覚で動いていたのは迂闊だったのです。次の休憩場まで、もう少しなのです」


 暗い闇の中を、ぐちゃぐちゃと地面を踏みならしながら歩いて行く。


 握った学ぶ赤さんの手だけが頼りだ。


 どれくらい歩いただろうか。


 闇に包まれ、時間の感覚が分からなくなるくらいに歩いたところで、皆の動きが止まった。


 やっと目的の休憩場に着いたようだ。


「休憩場に着いたのですか?」

 しかし、返事がない。


「最悪なのです」

 堅い拳さんから緊張した言葉が漏れる。


『ソラ、魔獣なのじゃ』


 どうやら、魔獣に襲われたようだ。

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