表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
空の生命

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

349/365

344 魔王が創り壊したもの

 レームが動く。


 動く四角い金属の塊は素早い。四角い金属の腕を振り回し、レームを殴りつける。


 レームが転がるように動き、躱し、投げ捨てられたもう一つの剣を拾う。そして、そのまま振り返り、二本の剣を交差するようにして金属の塊へと切りつける。

 だが、その交差させた一撃を金属の塊が跳ね返す。随分と硬いようだ。

『くっ』

 レームはすぐに後方へと飛び距離を取る。


 金属の塊はレームの方を向いている。


 その間を狙い、マナを纏わせた矢を放つ。だが、そのマナの輝きごと跳ね返される。


『硬いですね』

『ああ。あれを突破するのは大変そうだ』

 硬い。そして素早い。

『ちょっと、どうするの!』

 本当にどうしよう。


 倒す方法が浮かばない。


 近寄って何とかする?


 レームの一撃にも反応するような相手に何をするというのだろう。難しい。


 単純だが、これ以上無いくらいに嫌な敵だ。もう魔王は目の前だというのに、この程度の相手に邪魔されて進めないなんて……。


 魔王の門番は伊達じゃないということか。


 どうすれば……?


 その時だった。

「任せるのです」

 矢が飛ぶ。


 矢は僕たちの横を抜け、金属の塊に当たる。その矢はむなしく跳ね返されるが、金属の塊の注意を引くことには成功したようだ。

 金属の塊が矢の飛んできた方へと向き直り、動き出す。


 その後も次々と矢が飛ぶ。その矢は全て金属の塊の体に跳ね返されてしまうが、注意を引くことには成功している。成功し続けている。


 金属の塊が扉の前から動き、次の国へと迫る。

「ここは任せて、早く行くのです」

 矢が飛ぶ。


 金属の塊の注意を引くように矢が飛ぶ。


 矢は跳ね返されている。


「この程度に負けないのです。早く行くのです」

 次の国が勝てるとは思えない。


 レームの動きに反応するほど素早く、そしてマナの矢すら跳ね返すほど硬い。


『行こう』

 レームが僕の肩を掴む。

『しかし……』

『彼が引きつけてくれている間に魔王を倒し、戻ってきて皆で倒す。それが一番だ』


 ……。


 それで良いのだろうか。


 次の国を見る。その目は諦めていない。


 ……そうだ。


 次の国の意思を無駄にしてはいけない。進もう。


「必ず戻ってきます」

「気にせず進むのです」


 そうだ。


 次の国を信じる。そう、これは信じることだ。


 レームが扉に手をかけ、それを押し開ける。


 それに気付いた金属の塊がこちらへと振りかえる。だが、その金属の塊に次の国の矢が飛ぶ。動く金属の塊は、それに注意を逸らされる。


 進もう。


 進むべきだ。


 レームが開いた扉の先へ抜ける。


 すぐに真っ赤な猫とレームも扉を抜けてくる。


 先へ。


 扉を抜けた先は……階段だった。


 上の階層への階段。そう階段だ。

『もう! また階段!』

 真っ赤な猫はうんざりとした様子で叫んでいる。


 階段を上がる。


 そして扉。


 扉だ。


 扉の向こうに気配がある。強大なマナの気配だ。


 間違いなく、この扉の向こうに居る。


 待っている。


『ソラ』

 レームがこちらを見る。レームも気付いている。

『ええ。この向こうに居ます』

『魔王? ちゃっちゃと倒して、あの蜥蜴を助けに戻ろ!』

 居るのは魔王だけじゃない。


『感じるのじゃ。我を感じるのじゃ。我が自分でなくなるような、自分を見失ってしまいそうな力を感じるのじゃ』

 銀のイフリーダは気付いている。


 銀のイフリーダは銀のイフリーダだ。決して無の女神インフィーディアなんかじゃない。負けて欲しくない。


『ソラ、開けるぞ』

『ええ。頼みます』


 レームが扉に手をかける。


 そして、ゆっくりと押し開けていく。


 扉が開かれていく。


 音が流れてくる。


 扉が開かれていくとともに音が聞こえてきた。


 部屋の中央に蓋の開いた四角い機械、その前に男が座っている。男は機械を必死に叩いている。音はその機械から流れているようだ。機械の横には女がうっとりとした様子で目を閉じ、流れる音に耳を傾けている。その姿は銀のイフリーダによく似ている。


「思ったよりも早い。下の階のゴーレムを突破出来るとは思わなかったが……これは意外だ」

 男は音の流れる機械を叩きながらそんなことを言っている。


 この部屋に居るのは、この男と女の二人だけだ。スコルの姿は見えない。


「スコルは……」

「ディザスターなら反乱軍の鎮圧に向かわせた。まさか、それが陽動だったとは思わなかったが」

 男は音の流れる機械を叩き続けている。


 反乱軍?


 良く分からないが、スコルとは戦わなくても済みそうだ。好都合だ。魔王を倒した後に事情を説明して分かって貰おう。


『ねぇ、この男が魔王?』

 真っ赤な猫の言葉に頷きを返す。

『やっぱり似てるのね』

 真っ赤な猫の言葉。誰に、とは聞き返さない。分かっている。似てて当然だ。


 僕の体を使っているのだから。


「倒しに来た」

 男はこちらへと振り返らない。音の流れる機械を叩き続けている。

「もう少しで演奏が終わるんだ。それまで待てないか」

「ふざけるな!」

 素早く矢にマナを纏わせ、放つ。


 男を目掛けて矢を放つ。


 だが、その矢は、目を閉じ音を聞いていた女に掴まれ、阻まれる。

「使徒とは思えぬ弱き力なのじゃ」

「神の使徒も人手不足か。ますます、あのゴーレムをどうやったのか気になるな」

 神の使徒?


 この男は何を言っている。


 この魔王は何を言っている!


「僕は神の使徒なんかじゃない。僕は、ソラだ!」

 魔王に叫ぶ。


 僕はこの男に全てを奪われた。


 僕が自分の記憶だと思っていたものも――全て偽りだった。


 何も無かった。


 僕を創ったのはこの男だ。


 そして、今の復讐に生きている僕を創ったのも、この男だ。


 魔王アイロ。


 倒すべき存在。


 乗り越える存在。


 それが出来て、僕は本当の人になれる。


 だから倒す!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ