326 創造の力破壊の力
四魔将の一人?
僕が出会った四魔将は、獣魔将のスコル、斬魔将のカノン、空魔将のセツの三人だ。戦ったのは二人。
だが、魔王に伝わっているのは一人。
魔王に情報が伝わるのが遅れているのか、それとも魔王はそれほどこちらに興味がないのか。興味が無いから情報の鮮度が悪いのか。
いや、そもそも魔王はこちらのことをどれだけ知っているのだろうか?
こちらのことをどう思っているのだろうか?
僕が僕だと知っているとは思えない。
だけど、だ。
こうやって同盟国? に話を通しているくらいなのだから危険だとは思っているのだろう。
国の将軍を倒しているのだから、それも当然か。
……。
『ちょっと! もう、なんで!』
真っ赤な猫が足をバタバタと叩きつけ、ふーふーと唸っている。真っ赤な猫――彼女がそう言いたくなる、その気持ちはなんとなく分かる。
信じたいから、こそ、だ。
だけど、ここまで来たら、出来る事なんて、何も――殆ど無い。後は会話をして出来るだけ情報を得るくらいだろうか。
「それで、どうするつもり、ですか?」
「随分と余裕ですね」
ラーラは表情の消えた顔でこちらを見ている。
この東屋の下で蠢いていた黒いマナは銀のイフリーダに抑えて貰っている。ラーラは手詰まりだ。
「ま、魔王が何をやろうとしているのか、こ、この力のことを、く、黒いマナのことを」
話して貰う。
「魔王陛下がやろうとしていること? 話したはずです。人の解放です」
……。
「そして、この力は、創造の力。生み出す力」
ラーラを覆っている黒いマナが蠢く。
だが、それだけだ。
何も出来ない。
「創造の力?」
「ええ。創る力です」
創る?
「それは、どういう……」
「随分と余裕ですね」
ラーラを覆っている黒いマナが蠢く。
だが、何も起こらない。
それだけだ。
変わらない。
「ま、魔王は……」
その時だった。
周囲が蠢く。
この庭園の周囲に何かが蠢いている。
慌てて周りを見回す。
え……?
この庭園を囲むように、黒いもやが蠢いている。
「目の前の大きなものに気を取られすぎたようですね」
ラーラがこちらを見ている。
そこに表情はない。何の感情も見えない。
庭園を覆うように黒いもやが立ち上る。
『ソラ!』
レームが叫ぶ。
黒いもやが閉じる。僕たちの居る庭園が黒いもやによって閉じられる。
閉じ込められた?
でも!
この黒いもやが黒いマナで作られたものだというのならば、壊せばいい。セツを打ち破った時のように、この公国に入った時のように――同じことをすればいい。そうやって脱出すればいい。
「あなたは創造の力を打ち消す、言うなれば破壊の力を持っているようですね。ですが、その力はどれだけの範囲に効果を及ぼすものなのでしょうか?」
ラーラはこちらを見ている。
黒いマナに覆われ、表情のない顔でこちらを見ている。
「この公国の入り口に作った結界くらいでしょうか? それとももっとですか? この都市全てくらいですか? それとも公国全て覆うくらいの層でも越えることは出来ますか?」
何を……言っている?
「あなた方は、ここに、この公国に入った時点ですでに囚われていたのです。籠の中だったのですよ」
ラーラの言葉。
まさか……?
この黒いマナは、ここを覆っている黒いマナは、どれくらいの厚さなのだろうか。
突破出来ないほどなのだろうか。
「殺しはしません。この籠の中で大人しくしていてください」
ラーラは虚ろにこちらを見ている。
まるで魂が抜けたかのような様子でこちらを見ている。
「で、ですが、あなたも閉じ込められたのでは?」
そう、黒いマナの壁に覆われた、この中に、ラーラも閉じ込められている。だが、そのラーラに焦った様子は無い。
何か脱出する方法があるのだろう。
もし、この黒いマナの壁を突破するのが難しいのならば――ラーラの脱出法を、それを見て、確認して、理解して、同じように突破する。
それだけだ。
だが……、
だが、そう思った時だった。
「ええ。ですから、私は、元からここにはいません」
その言葉とともに、ラーラは黒い液体に姿を変え、そのままべちゃりと溶け、広がった。
……。
ラーラだったものは、もう何も喋らない。
ただの黒い液体だ。
黒いマナで覆われていたんじゃない。元から黒いマナで作られていた偽物だった。
本物のラーラはここには居なかった。
「おい、どうするんだよ!」
フードのサザが叫び、黒い壁を見ている。
サザでも見えるほどの濃さのマナの塊だ。
突破出来るだろうか。
完全に油断していた。どうにか出来るはずだとうぬぼれていた。
いや、まだだ。
「突破出来ないか、か、確認してみます」




