表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
禁忌の森

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/365

031 虫

 少しだけ駆け足で拠点へと戻る。拠点に戻った後は急ぎ、瓶の中に保存していた水を飲む。いつでも飲めるように飲み水は作り置きしてある。

「ふー、キツかった。今までで一番キツかった気がするよ」

 たくさんの水を飲み、やっと口の中に残っていたヒリヒリ感が消えた気がする。


 背負い籠を置き、中の赤い実を確認する。数は19個ほどだ。もっと収穫したように思っていたが、改めて数えてみると、それほどでもない。


 これをツタに巻き付け、天日干しにしていた蛇肉の横に並べる。

『それをどうするのじゃ』

「乾燥させて、後で粉にするつもりだよ。凄く辛かったけど、料理の時に少量だけ使えば、良いアクセントになるかなって思ったんだ」

『ふむ。さっきのは一度にたくさん食べたからなのじゃな』

「いやいやいや、そうじゃないよ。甘そうに見えたから油断したというか、生だったから刺激が強かったというか……」


 同意を求めてスコルの方を見る。スコルはすでに丸くなっており、自分には食べさせるなよ、と言わんばかりに顔を背けていた。


「はぁ、まぁ、そういう感じだよ」

 赤い実を干しながら、天日干しにしていた蛇肉の状態も確認する。表面が乾き、固くなっている。腐り始めている様子はない。これなら、このまま干し続けることで乾燥肉が作れそうだ。


 と、そこで違和感に気付く。


「あれ?」

『ふむ。どうしたのじゃ』

 改めて簡易物干し台に干していた蛇肉を見る。

「これも、これも、これも、だ」

 簡易物干し台に干していた全ての蛇肉が――そう、全てが、


「虫がたかっていない」


 どの肉にも虫がついた様子がない。普通なら天日干しにした肉には虫が集まり大変なことになる。それを防ぐためにネットの中に入れるなどの防虫対策を行う必要があるはずだ。


 まだ一日しか経っていないから?


 違う。


 考え、思い出す。


 この湖の周りで虫を見かけた? いや、見ていない。森の中では普通に色々な虫の姿を見かけている。虫が存在しないわけじゃない。


 何で、この場所だけ?


 綺麗に区切られたように生息地が別れている?


「分からない」

 でも、おかしい。これは、おかしいと思ってしまう。


 ……。


 頭を振って、気付いてしまった違和感を追い出す。

「考えても仕方ないね。それに、これは自分にとって有利なことのはずだ」

 そう考える。


 普通なら虫対策が必要なのに、それを考えなくても良い。

「うん、プラスだ」


 日が落ちるまで折れた剣を使って戦うための訓練を行い、その後は残った蛇肉を焼いて食べた。


 そして眠る。


 次の日。


 いつものようにシェルターの中に差し込んできた朝日で目が覚める。シェルターの外に出て大きく伸びをして体をほぐす。毎日、座った状態で眠っているため、体に負担がかかっているのかもしれない。


「うーん」

『ソラよ、どうしたのじゃ』

 いつものように、いつの間にかイフリーダの姿が足元にあった。

「安全に若木が手に入るようになったからね。雨から防ぐための屋根と体を伸ばして眠ることが出来るベッドを作ろうと思ったんだよ」

 窯の方を見る。本当は窯を使ってレンガを作ろうと思っていたが、探索できる場所、収穫できるものが増えたので、そちらは後回しだ。


「後は水筒だ」

 昨日は酷い目にあった。もし水筒があれば、もう少しは違ったはずだ。

「でも水筒かぁ」

 水筒は遠出するためには必要なものだ。四つの王を倒すために探索範囲を広げていくなら、必ず必要になってくる。水を入れるための瓶は作った。でも、乱暴に扱うことが出来ない瓶では持ち運びに向かない。


 どうしても水筒が必要だ。


「どうやって作ろう」


 木をくり抜いて作る? 失敗しそうだ。


「うーん、うーん」

 腕を組み、何か良い方法がないか考える。


 と、その横からガツガツという音が聞こえ、思考が中断される。スコルが朝ご飯代わりに大蛇の肉を食べていた。スコルは大蛇を皮ごとガツガツと食べているが、それでもまだ半分くらいは残っている。


 スコルが食べている大蛇の死骸に近づいて状態を確認する。スコルは、何? という感じで食べながらこちらを見る。

「少し確認だよ」

 ボロボロになった大蛇からは少しだけ異臭がした。腐り始めているのかもしれない。

「スコル、肉が腐り始めているみたいだけど、食べても大丈夫なの?」

「ガル」

 スコルはそれがどうした、という感じで小さく唸る。もしかするとお腹の中に入れば同じだとか思っているのかもしれない。


「明日から、スコルが食べる分も焼いてあげるよ」

「ガル」

 スコルは好きにしろ、という感じで小さく頷いていた。


 ……。


 と、そうだ。


 この大蛇の胃袋を使って水筒が作れないだろうか。大蛇の胃袋はかなり大きい。そのまま使ったら背負い袋みたいになってしまう。それに中はかなり臭いだろうから、しっかりと洗って匂いを取らないと大変なことになるだろう。それらを考えて加工するとなると、水筒を作るための作業はかなりの手間になる。


「うーん。手間を考えるとあまり良い考えじゃないかも」

 一つの案として考慮の余地があるとしておく。


「うん。まずは東の森の奥の探索だね。そこで何か、この問題を解決するための良いものが見つかるかもしれないしね」

 籠を背負い、石の斧と石の短剣を持つ。


 さあ、今日も頑張ろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ