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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
空の生命

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283 草木皆兵

 と、進むのは良いがどうやって進もう。


 沼地を沈みながら進むのは論外だ。かといって翼を広げ、空を飛んで進むのもどうだろう。


 沼地の上を見る。


 沼地の上には網の目のように広がった蜘蛛の糸が存在している。これはメロウが使っている道なのだろう。この蜘蛛の糸を避けて空を飛ぶのは大変そうだ。


 ……。


 いや、逆に考えよう。


 この道を使えば、進めるはずだ。


 ならばやることは一つ。


 自分の足を見る。


 違う、こうじゃない。


 足を作り替える。蜘蛛のように、甲殻を持った足へと作り替えていく。自分の足が硬く、節を持った蜘蛛足へと変わっていく。ぱっと見は金属のすね当てを身につけているかのようだ。


 何故だろう、とても良く馴染む。


 カノンさんたちメロウのように八本の足ではなく、二本しかないけれど、これなら蜘蛛の糸の上を歩けそうだ。


 足を深く沈め、蜘蛛糸の上へと飛び上がる。ネバネバとした糸なのに、足を絡め取ることがない。いや、落ちないように吸着はしている。しかも、その状態で安定しているから不思議だ。そして、足を持ち上げれば簡単に糸から足が離れる。まるで、こちらの意図を蜘蛛糸が読んでいるかのような反応だ。


 これなら、この蜘蛛糸の上を普通に歩いて進むことが出来るだろう。


 さあ、行こう。


『おぬし、もう何でもありなのじゃな』

 銀のイフリーダが呆れたような顔でこちらを見ている。何度目だろうか。その顔はすでに見慣れている。

『そうでもないよ。以前なら出来なかったと思う。何故か、こうしたら出来そうって分かったんだ。もしかするとカノンさんが力を貸してくれたのかな』

『ふむ。それはおぬし、都合良く考えすぎじゃ』

 銀のイフリーダは肩を竦めている。


 確かにそうかもしれない。でも、そう思った方が……。


『じゃが、そうじゃな。その方が意思の繋がりを感じて救いがあるのじゃ』

『そうだね』

 救い、か。


 蜘蛛の糸の上を進む。


 蜘蛛の糸は毒の沼地の上を繋がり何処までも広がっている。この糸は誰が作った糸なのだろうか。メロウ共通の道なのだろうか。


 昼も夜もなく、薄暗い森の中を、沼地の上を、蜘蛛の糸の上を歩いて行く。


 そして、その蜘蛛の糸の先にいくつかのマナの反応を見つける。

『どうにも、隠れてこちらの様子をうかがっているようだね。でも……カノンさんと比べたら、いや比べる方が間違っているのかな』

『うむ。バレバレなのじゃ』


 蜘蛛の糸の上を歩く。


 そして、上空の、それが動いた。


「異形の魔獣め、死ね」

 空から――身を隠していたメロウが細身の剣を手に飛びかかってくる。


 僕は、それを銀の手で受け止める。そう、受け止めた。カノンさんなら銀の手ごと斬られていただろう。だが、このメロウにそこまでの技量があるようには感じない。


『斬られるかも知れぬのに我を盾にするのはやめるのじゃ』

『でも、斬られなかったじゃないか』

 銀のイフリーダがため息を吐き出していた。


「こ、声をかけてから、お、おそいかかってくるのはびみょう」

 とりあえず受け止めた細身の剣を握りしめ、砕く。


「な、なんだと!」

 こちらへと飛びかかってきていたメロウが細身の剣を手放し、後方へと飛び退く。


「そ、それに、いきなり、おそいかかってくるのは、どうかとおもう。友こうてき? な、ひ、人、かもしれない」

 もしかしたら友好的な人物かもしれないのに、いきなり襲いかかってくるのは良くないと思う。


「何を言う。お前のような人がいるか。そんなぐちゃぐちゃと色々なマナが混ざったものは魔獣に決まっている」

 酷い誤解だ。

「そ、そうでもない」

「何を訳の分からないことを。お前のような魔獣を里に近づかせてなるものか。皆、かかるぞ」

 目の前のメロウの言葉に応えるように周囲のマナが動く。


 どこから飛んできたのか、新しい細身の剣が目の前のメロウに投げ渡される。


 そして、新しい細身の剣を構えたメロウが、こちらを取り囲んでいた三人のメロウが一斉に襲いかかってくる。


 だが、遅い。


 遅すぎる。


 酷い遅さだ。


 他に隠れているメロウのことを攻撃の前にわざわざ伝えるなんてあり得ない酷さだ。他のメロウが隠れていたことには気付いていたから、言われなくても分かっていた――でも、これはあまりにも酷すぎる。


『うむ。自分の力に自信がある故の過信なのじゃ』

 銀のイフリーダも呆れている。


 飛び上がる。


「な! やつが消えた」

「何処に?」

「見えぬ」

「一瞬にして」


 上の段の蜘蛛糸にぶら下がる。向こうはこちらが飛び上がったことに気付いていない。斬ることに集中しすぎて相手が見えていなかったのだろうか。


 そのまま世界樹の弓に矢を番える。


『あれ?』

『どうしたのじゃ?』


 世界樹の弓の弦が光り輝いている。いや、これは目に見える光じゃない。マナの輝きだ。銀の糸がこちらの意思に応えるかのように輝いている。

 この弦は迷宮で拾った糸を束ねたものだ。


 何故、今になって、こんな……?


 凄い力を感じる。今までに無い何か強い力だ。


 弓を引き絞り、矢を放つ。


 矢はマナの光に包まれ、飛ぶ。そして、狙い通り細身の剣に当たり、その刃を打ち砕く。


「な!」

 次の矢を番え、放つ。次々と矢を放ち、メロウが持っている細身の剣を砕いていく。面白いほど簡単に打ち砕くことが出来る。


「も、もうやめたら?」

 武器を無くしたメロウたちに声をかける。


「な! 上!?」

 メロウたちは驚いた顔でこちらを見ていた。

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