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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
空の生命

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286/365

281 始まりの

 見るからに強固な防壁を目指し歩いて行く。防壁の奥には立派な城が見えている。


「あそこに見えるのが我らに与えられた拠点なのです」

「偉大なるソラ王によって切り拓かれ、我が同胞によって作られた城なのです。かの偉大な王によってリュウシュは助けられ、住む場所を与えられ、生きる道を与えられたのです」


 戦士の二人が防壁を見る。いや、防壁の向こう側を見ているのだろう。


『ああ、ソラ王は偉大だ』

 馬上のレームが頭蓋骨をカタカタと鳴らし笑っている。


『泣きそうになることを言わないで欲しいな。この体だと涙を流すことも出来ないんだから』

 本当に涙が出そうだ。三人が僕のやったことを肯定してくれている。


 戦士の二人の言葉は続く。

「魔王に従わないものもいるのです」

「同胞を兵として使い潰すようなやり方を否定するものもいるのです。それでも、皆、元気に、無事に、生きているのです。暮らしているのです」


 ……二人の言葉。


 それは、僕に現状を教えてくれる。


 僕が知っている皆が無事だと教えてくれる。そして、魔王に従わない人がいることも教えてくれる。


『無事で良かったよ』

『ああ、ソラ。そうだな』

 レームが防壁の向こう側を見ている。レームにとっても懐かしい場所なのだろうか。


 リュウシュの一団が歩みを止める。


「到着なのです」

「皆、中で休憩なのです。その間に、この捕獲したものたちを牢に運ぶのです」

 戦士の二人の言葉に応えて、リュウシュの一団が防壁の中へと消えていく。


 だが、その一団の中の数人が足を止める。

「隊長、我々が、そいつたちを牢に運ぶのです」

「隊長も休むのです」

 戦士の二人は、仲間から慕われているようだ。


 それを聞いた戦士の二人が顔を見合わせ、露骨に慌てている。

「大丈夫なのです」

「そうなのです。凶暴で強敵なので任せられないのです」

 何という、分かり易い態度なのだろう。


「なんと、なのです」

「それほど凶暴なら自分たちも見守るのです」

「隊長を助けるのです」

 戦士の二人は本当に仲間から慕われているようだ。


 だが、戦士の二人は顔を見合わせ、どうしたら良いか、キョロキョロと周囲を見回しているだけだった。


 何というか、リュウシュらしいやりとりだ。


 どうするのだろう。


 戦士の二人はしばらく悩み続け、考え続け、そして口を開く。


「み、みなを危険に晒すわけにはいかないのです」

「もし逃げられた時に皆がいれば巻き込んでしまうのです。それに、その時の責任を皆に負わすわけにはいかないのです」

 何故か逃げられる前提で話し始めている。


『酷いものなのじゃ。これでは誰も騙されないのじゃ』

 銀のイフリーダは呆れたような顔で戦士の二人を見ている。


 何だろう。凄く微笑ましい。


「さすがは隊長なのです」

「隊長に任せれば安心なのです」

 残っていたリュウシュたちも防壁の中へと消えていく。


 ……。


「危なかったのです」

「とても大変だったのです」

 戦士の二人は安堵のため息を吐き出していた。


「それでは行くのです」

「こちらなのです。戦士の王を案内するのです」

 二人が城の中へと僕たちを案内しようとする。だけど、それに待ったをかける。


「ご、ごめん。にし、西の森にむかいたい」

 そう目的は拠点に戻ることじゃない。西の森の奥へ。そこが僕の目的地だ。


「分かったのです」

「見つからないように案内するのです。着いてきて欲しいのです」

 戦士の二人が防壁に沿って歩いていく。その後を普通に追いかける。自由行動だ。ここまでの道中でも行動は制限されていない。普通に捕縛したら紐で縛るとか、枷を付けるとかすると思うのだが、戦士の二人はそんなことをしない。他のリュウシュたちも自分たちが大人しく従っていたので疑いもしなかったのだろう。


 防壁に沿って歩き、西の森へと向かう。


 そして、すぐに西の森の入り口へと辿り着く。


「着いたのです」

「戦士の王、ここまでなのです」

 戦士の二人が足を止める。そして、こちらへと拳を突き出す。


 最後に拠点を離れた時にも見た姿だ。あの時の皆の姿が思い出される。


「皆、帰りを待っているのです。皆、無事で元気なのです」

「全てが終わったら戻ってきて欲しいのです。待っているのです」

 二人の言葉が暖かい。


「きっと、きっと、もどってくる」

 戦士の二人へと拳を、拳のようにした手を突き出す。戦士の二人は頷いている。


「戦士の王、聞いて欲しいのです」

「魔将のカノンは戦いを求めていたのです。魔将のカノンが死に、メロウのカノンは戦士の王とともにあるのです。誇りなのです」

 戦士の二人の言葉。二人は僕よりもずっとずっと長くカノンさんと一緒に居たのだろう。一緒に戦っていたのだろう。その二人の言葉だ。


 何処か救われた気がする。


「あ、ありがとう。行ってくる」

 西の森へと踏み出す。


 戦士の二人が、ずっと、こちらを見守ってくれている。


 行こう。


『あー。それにしても、だな。少しくらいはお湯に浸かっても良かったのではないだろうか』

 レームは少し残念そうな様子で拠点の方を見ていた。

『レームは好きだったものね。でも、その骨の姿で浸かるの?』

『うむ。良い出汁が出そうなのじゃ』

 銀のイフリーダが足をばたつかせて笑っている。


『二人とも酷いな』

 レームが肩を竦める。


 さあ、西の森を進もう。

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