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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
空の生命

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266 結末

 教えて欲しい、何があったのかを。


 フードを深くかぶったボロ布の男から言葉が漏れる。

「魔王ソラは、最初、この国の第三王子の友人としてやって来た。そこが始まりだ。いや、もしかすると始まったのは、あの禁域とされた地の封印が、氷の壁がなくなったことが始まりだったのかもしれない」

 それはとても辛そうで、嫌な過去を思い出しているかのような喋り方だった。


「やつは、あの禁域の地の王だと名乗った。そして、その言葉に偽りないだけの力を持っていた。当時の王は、その力に屈したのか、それとも何らかのやりとりがあったのか、魔王ソラと同盟を組んだ」

 そうだ、ここまでは知っている。そこから何が起こったかだ。


「最初は上手くいっていた。禁域の地から運び込まれる多くの食料、武器、それらは、この都市を、この領国を潤した。誰もが大きな繁栄を信じて、夢を見た」

 ボロ布の男が大きなため息を吐き出す。


「だが、それは長く続かなかった。いや、それなりに長くは続いたのか? まぁ、終わったんだよ」

 どっちだ? 長い、長くない? どれくらいの年数が経っているのだろうか?


「ど、ど、どう?」

「あ、ああ、そうだな。王が亡くなったんだよ。そして、その時の二番目の王子が王となったんだが、それが問題だった」

 あの王様、亡くなったのか。僕が出会った時にはかなりの高齢だった。それが原因?

「と、とし?」

「あ? ああ、前の王か。寿命だとも、二番目の王子が暗殺しただの、色々言われているな。もう真相は分からないさ」

 全ては闇の中に、か。


 でも、あの時、王様と第二王子の仲は悪いように見えなかった。暗殺ではなく、寿命だったと思いたい。


 にしても、二番目の王子が王になったのか。僕個人としては金色のレームが王になって欲しかったな。


 ……全ては過去だけれど。


「新しい王になってからは酷いものさ。同盟は終わった。その理由は分からない。あの魔王は新しい王が約束を違えたと言っていたが、それも何処までが本当か分からないしな」

「そ、そ、それ、で?」

 ボロ布の男が頷く。


「魔王が攻めてきたのさ。そりゃあもう、圧倒的だったよ。こちらは神殿を破壊され……そうだよ、外の神殿街さ、マナの奉納が出来なくなったのさ。神殿から力を手に入れることが出来なくなった後は速いものさ」

 ああ。そうか。


 神殿を壊したのは、神にマナを送らせないためだけではなく、ヒトシュの力を奪う意味もあったのか。


「そ、そ?」

「その後だろう? 三番目の王子が立ち上がったのさ。人の中でも優れた力を持った勇士が集まって、魔王ソラと戦った」

 金色のレームが戦った?


 そういえば、王は全ての人が敵として立ち上がると言っていた。その結果が今なのだろうか? それとも立ち上がらなかったのだろうか。


「三番目の王子と魔王ソラは一騎打ちを行ったらしいが、まぁ、その結果は言うまでもないよな」

 今の現状。


 この都市の現状。


 ……滅びている。


「お、おう、おうじ、れーむ、ど、なた?」

「ああ、そうだ。三番目の王子の名前はレームだよ。よく知っているな」

「ど、どう、なった?」

「一騎打ちに敗れたんだ。死んでいるだろうさ」

 ボロ布の男が肩を竦める。


 金色のレームが死んでいる。


 死んでいる?


 最後に、最後に会ったのが、迷宮の穴に落ちる前の、あの時に……なるのか。


 そんな簡単に会えなくなるのか。


 もう会えない。


 どうして、こんなことになっているんだ。


 何で……。


 ……。


「あ、う、あ、あ」

「その後はあんたも知っているだろう? 魔王ソラは、人を捕まえ、人を魔獣に変える実験を始めたのさ。あいつが、何故、そんなことを始めたのかは分からない。だが、戦う力を失った俺たちには逆らうことなんて出来なかった。俺も捕まって、このザマさ」


 人を魔獣に変える実験?


 何故、そんなことをしているんだ?


 何の理由があって?


「あ、う?」

「あんたも同じだろう? 俺も同じさ」

 ボロ布の男がフードを取る。その下にあったのは歪み、溶け、眼球がむき出しになった顔だった。


「化け物の姿さ。でもよ、俺はまだ良いんだ。俺は人としての意識が残っているからよ。あんたも見たろ。人としての意識すら失って、ただの魔獣として徘徊している奴らを。もう、あーなったら終わりだぜ」


 あれが、あの崖を登った先にいたのが成れの果て。知っていたけれど、知っていたけれど。


「ど、う、どう、して?」

「魔王ソラの考えなんて分からないさ」

 ボロ布の男は肩を竦める。


 だから、首を横に振る。


「ちが、ちがう。し、し、しんせつ」

「しんせつ? ああ、なんで親切にするかってことか。同じ境遇に同情しているってのもあるさ。でも、それだけじゃない」

 ボロ布の男が首を横に振る。


「俺は以前に失敗をしたことがあってな。以前、俺はさる高貴な方の護衛をしていたのさ。その時に人を見かけで判断して失敗した。それが元で、俺の人生が転がり落ち続けた。だからさ、思ったのさ。落ちるところまで落ちたんだ。もう後は死ぬだけだ。だったら、人のために生きても良いってな。照れくさいが、だから、出来ることをやろうと思っているのさ」


 高貴な方の護衛……。


 何処かで聞いたことがあるような……。


 だが、だけど、でも、だから、人に親切に、か。


「ありが、と」

「良いって。気にするなよ」

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