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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
終焉迷宮

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245/365

241 王子

 しばらく待ち、金色のレームとともに宮殿の中に入る。


 宮殿の中はひんやりとしており、石の壁と、そこに並ぶ石柱は、何処か神殿を思わせる。


 金色のレームの案内で宮殿内を歩いて行く。時々、すれ違う人々が驚いた顔でこちらを見ている。


 そして、部屋に案内される。


 外から中が見えないようになっている、扉付きのちょっと豪華な部屋だ。その中には足の短い机とふかふかの椅子が並んでいた。


「ここで待っていてくれ」

 金色のレームに頷きを返す。


 そのままふかふかの椅子に座って待つ。うん、ふかふかだ。何の素材で作られているのだろう? 体が沈み込む。

 これなら楽しい気分で待つことが出来る。


 にしても、何がやって来るのだろうか。


 しばらく待っていると、扉が開き、一人の初老の男性が入ってきた。かつては金だったと思われる髪はうっすらと白く変わり始めているが、背は曲がっておらず、その瞳に宿った力は強い。

 そして、その手には、金色のレームに持たせていたはずの剣があった。


「お初にお目にかかる」

 男が口を開く。低く、重く、良く通る声だ。普段から、声を出すことになれているのだろう。


「初めまして」

 ふかふかの椅子に座ったまま、頭を下げる。椅子から立ち上がった方が良かっただろうか?


「どうぞ、そのままで」

 男が机を挟んで向かい側に座る。そちらの椅子もふかふかのようだ。男の体が半分沈んでいる。

 そして、持ってきた剣を机の上に置く。


「良い椅子であろう? これも迷宮から見つかったものなのだよ」

 男は笑う。そして、強い瞳で――こちらを見透かすような瞳でこちらを見る。


 男が再び口を開いた。

「まずは名乗ろう。私の名前はジャーバッグ・アイロ十四世だ。この領地の王をしている。本当はもっと長い名前があるのだが、そなたには不要であろう?」

 男――王様が笑う。


 現れたのは王様だった。予想外の大物がいきなり現れた。


「では、こちらも。ヒトシュが禁忌の地と呼ぶ場所の王をしているソラです」

 名乗る。


 さあ、どう反応する?


 今までのヒトシュは、どの人物も見た目だけで判断して疑ってきた。


 この王はどうだろうか?


「ああ、ソラ王、よろしく頼む」

 王がこちらを見る。


 見るものを安心させるような柔らかい視線だ。


「疑わないのですか?」

 王は顎に手をやり、少しだけ、何処か面白そうに口角を上げる。


「うむ。私は、子の言ったことを疑うような親ではないのでな」


 子?


 親?


 うん?


「えーっと、もしかして、レームは……」

「ああ、私の子、すなわち王子になるな」

 そして、王が頭を下げる。


「ソラ王、あやつを助けてくれて感謝する。公の場では頭を下げるわけにはいかぬ故、このような場ですまぬが、本当に感謝している」

 金色のレームが王子だった?


「あやつは三番目の王子、末の王子でな、私が歳を取ってから生まれた子故、一番、可愛くてな。しかもやんちゃで一番手がかかる。あれが禁域から戻らぬと聞いた時は気が気ではなかった」

 王が顔を上げる。


 三番目の王子?


 門番がぼろくそに言っていた王子じゃないか。力で弱き者を虐げる王子だと聞いたぞ。


 金色のレームとどうにも繋がらない。


 それに、だ。そんなことを言っていた門番が、その王子に膝を付いていたのか? いや、もしかして、だから、恐れて、したがっていたのか?


 ……。


 いや、人の言っていることに惑わされても仕方ない。自分が感じたこと、思ったことを信じるべきだ。


「たまたまですよ」

「たまたまでも恩人であることには変わりない」

 王はこちらを見ている。

「それで、ソラ王は迷宮に入る許可が欲しいと聞いた」

「はい、そうです。それと出来れば、この都市で自由に動ける権限が欲しいです」

 もう、他のヒトシュに面倒をかけられるのは勘弁して欲しい。


「ふむ」

 王が顎に手をやる。もしかすると癖なのかもしれない。

「息子を助けてくれたことには感謝している。しかし、そこは王としての本分に関わること故、安易な許可は出せぬ、と言いたいところだが……」

 王が剣を手に取る。

「このようなものまで見せられてしまえば、な。しかも、ソラ王の配下は一騎当千の猛者揃いと聞いた。単身でここまで乗り込まれたのも、その王たる自分の力に自信がある故、と見える」

 王が少し困ったような顔でこちらを見ている。


 確かに、いざとなれば、全てを力で解決できるかもしれない。


 正直に言って、この地に住むヒトシュたちに強者が居るようには見えない。


「では、どうするのですか?」

「良き隣人として交流したい」

 王の目を見る。


 意志の強さを感じさせる強い瞳だ。


 だから、頷く。

「はい。もとより、そのつもりです」

「ソラ王が、話の分かる方で良かった」

 王が笑う。


「もし、こちらが力でなんとかすると言っていたらどうしました?」

 王が片目を閉じ、こちらを見る。

「ソラ王、その時は、全ての人が、その力を持って戦うだろうな」

 なるほど。


「人は弱く、脆く、疑いやすい。しかし、その数は多く、弱き故に、共通の敵を持った時は力を合わせ、束ね合わせた奇跡の力で、それを打ち破る。それが人の歴史故だ」


 なるほど。


 肝に銘じておこう。


 もし、攻めるというのであれば、その覚悟が必要だと言うことだ。


「わかりました。戯れ言を言いました。仲良くしましょう。それと、出来れば、交流に当たって、お互いのことを知り、友好を深めたいのですが」

 金色のレームが言っていた黒い粉に興味がある。


 是非、調べてみたい。


「もちろん。私としても、ソラ王の地で採れる美味しい食べ物が食べてみたい、友好を深めたい、のだが、すまぬ。この後、少し予定が詰まっていてな」

「そうですか」


 王だから、忙しいのかもしれない。


 自分のように全てを任せて、自身で乗り込むような王が異端なのだろう。


「ソラ王が待ってくれるというのならば、その後に」

「分かりました」


 と、そこで、王が、何かいたずらを思いついたような顔をする。


「そうだ。この後、謁見を求めているのは鍛冶士のファフテマだが、もし良ければ、ソラ王も一緒にくるかね?」


 ん?


 ファフテマ?


 あの鍛冶士が王に謁見?


「ええ、それは面白そうですね。分かりました。もし良ければ、影で隠れて見ています」


 あの鍛冶士は、何を言いに来たのだろうか。

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