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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
終焉迷宮

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239 目的の場所

 金色のレームは馬主と話している。


 どうやら自分はこのまま、この暴れ馬を譲り受けることになりそうだ。


 金色のレームは毛並みがサラサラで大人しそうな馬を受け取っている。その馬に、鐙がついていない鞍を乗せ、今まで背負っていた荷物を結びつけ始めた。

「ソラ王は鞍をつけないのか?」


 鞍、か。


 鐙がなければ鞍だけ取り付けても、あまり意味がないと思う。


 それに、この馬は大人しく、こちらの言葉を聞いてくれる。


「このままで大丈夫です」

「そうか」


 そのまま馬を連れ、宿に戻る。


 金色のレームの案内で部屋に入り、中にあったベッドの上に体を横たえる。ちょっと硬い。でも、リュウシュの皆さんが使っているものと比べたら段違い、充分、眠ることが出来る硬さだ。


 金色のレームが居てくれるおかげで面倒ごとが起こらない。よく分からない理由で横暴に耐える必要があったり、会話やお願いを断られたりすることがない。


 快適だ。


 うん、寝よう。


 翌朝、それなりに心地よい気分で目が覚める。


 ベッドは良い。本当に良い。拠点に戻ったら炎の手さんか走る手さんに頑張って作って貰おう。


 宿の外に出て、昨日、譲り受けた馬に乗る。暴れ馬という名前の馬は、その名前とは違い、とても大人しく従順だ。

「よろしく、暴れ馬」

 暴れ馬の首筋を撫でる。暴れ馬は怯えたように震えていた。


 さあ、行こう。


「ソラ王、こちらだ」

 金色のレームの案内で馬を走らせる。金色のレームの馬はあまり速くないようだ。暴れ馬をゆっくりと走らせ、少しだけ金色のレームの馬を先に走らせる形で併走する。


「馬も悪くないですね」

「ああ。悪くない」

 金色のレームと馬を走らせる。


「でも、こんなにも、便利な馬なのに、姿を見かけないのは何故ですか?」

 それを聞いた金色のレームが笑う。

「簡単な理由だ。まず、馬は高い。そして、その維持が大変だからな。急ぎの伝令や大物を運ぶ商人くらいしか使わない」

 なるほど。


 って、うん?


「えーっと、そうなると、今、馬を使っているのは大丈夫なんですか?」

「ああ、急ぐ必要があるのだから、馬を使う必要が……当然、ある!」

 急ぐ必要、か。


 あれだけ、拠点でのんびりしていたのに、今更、急ぐというのもなんだか不思議な感じだ。


 でも、だ。


 ヒトシュの地のことは、ヒトシュである金色のレームに任せている。


 馬を走らせ、日が暮れれば野宿をし、馬を休め、自分たちも休む。次の日も馬を走らせ、そして昼頃には都市が見えてきた。


 確かに馬は速い。


 しかも歩くより楽だ。


「ソラ王、都市の中では馬を走らせることが禁じられている。預けてから都市に入るぞ」

 併走していた金色のレームが声をかけてくる。


 都市の中を馬で走っては駄目なのか。この馬という魔獣は、自分で考えて動いてくれるスコルとは違い、こちらが指示を出して走らせないと動いてくれない。そこが楽しくなってきたところだったのに、少し残念だ。


「分かりました」

 都市の始まり側――隅っこの方にある石造りの四角い建物へと向かい、そこで馬を降りる。


「連れて行くよ」

 金色のレームが自分の馬を引く。そのまま暴れ馬に近づき、同じように引こうとする。しかし、暴れ馬は、いやいやと首を振り始めた。

「こいつは……」

 金色のレームが近寄れない。


「大人しく」

 暴れ馬の眉間に手を当て大人しくさせる。

「レームさん、お願いします」

 暴れ馬は静かだ。

「助かる」


 金色のレームが四角い建物に近寄り、人を呼ぶ。すると中から鎧を着込んだ男たちが現れた。鎧の男たちは金色のレームを見て驚き、慌てて敬礼をしている。金色のレームはヒトシュの都市で結構有名人なのかもしれない。


 そのまま鎧の男たちに馬を引き渡す。


 馬は馬で良い乗り物だった。


「では、案内するよ」

 改めて金色のレームが都市を案内してくれるようだ。


 そのまま大通りを歩き、歩き、歩き……。


 ……ん?


 もしかして、中央の宮殿に向かっているのか? それとも学院とやらの塔だろうか。


「レームさん、王の宮殿に向かっていますか?」

「ああ。まずは、そこだよ。王にソラ王のことを話して許可をもらう必要がある。そこから始めないと、ソラ王に不要な迷惑をかけてしまうことになりそうだから、な」

 金色のレームは苦虫をかみつぶしたような、苦笑をして良いのか迷っているような、そんな複雑な表情を浮かべている。


「分かりました。お願いします」

 ここの王に会って許可を貰う、か。王と面会できるなんて、金色のレームは、自分が思っていた以上に、かなりの大物なのかもしれない。


 大通りを歩き、宮殿の入り口らしき門が近づいてくる。そこに立っているのはいつぞやも出会った金属の胴鎧を着込んだ門番だ。


 割と普通に対応してくれた人だ。出会ったのは少し前のことでしかないのに、もう随分と前のような気がする。


 金色のレームが片手を上げ、そのまま門番の横を通り過ぎる。何も言われない。通っても良いのが当たり前という感じだ。


 金色のレームの後を追い、門を抜けようとする。


 しかし、そこに待ったがかかる。門番に肩を掴まれた。躱さない。あえて掴ませる。


 何か、掴まえないと駄目な理由があるはずだからだ。


「ここは領王の宮殿だ。何をかん……ん?」

 門番がこちらを見る。

「お前は、あの時の流民の子どもか。一度許可されたからといって、次も大丈夫な訳じゃないぞ」

 注意される。


 うーん。


 と、そこで、自分がついてきていないことに気付いた金色のレームが慌てて戻ってくる。

「ソラ王、どうした?」

「いえ、ちょっと、ここの門番さんに呼び止められました」


 金色のレームが門番の方へと向き直る。

「どういうことだ?」

「流民の子どもが中に入ろうとしていたので捕まえました」

 それを聞いた金色のレームは大きなため息を吐き出していた。


 そして、こちらを見る。金色のレームは、どうして、こうなったという顔をしている。


 まるで自分が悪いみたいじゃないか。


 まったく心外だ。

2018年10月25日修正

金色レームは、自分が → 金色のレームは、自分が

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