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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
氷雪凍土

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109 謎の破片

『これ、錬金小瓶だよね』

『うむ』

 銀のイフリーダは頷き、神妙な表情で腕を組む。そのまま口を閉じ、何か深く考え込み始めた。


 何故、ここに錬金小瓶が――しかも、その破片があったんだろうか?


 埋まっている?


 埋まっていた?


 蜥蜴人さんたちが、ここを耕そうとしなければ、この破片は見つからなかった。


 耕すために使っていた鉄の道具は、先端の鉄の部分が曲がってしまっている。蜥蜴人さんたちは、どれだけ凄い力で耕そうとしていたんだ、という思いと、それを跳ね返すほどの破片の硬さに驚く。


 破片。


 破片?


 そうだよね。


 よく考えたら、何で、破片になっているの?


 鉄を跳ね返すほどの錬金小瓶が破片になっている。つまり、ここに、錬金小瓶を破片にしてしまうような存在がいたかもしれないってことだよね。


「これは何か貴重なものに思えるのです」

 蜥蜴人さんは破片を持って大興奮だ。


 確かに貴重と言えば貴重。貴重な品の、しかも、普通では破壊が難しい物の破片だ。


「戦士の王に渡しておくのです」

 まだ誰が誰なのか名前が出てこない蜥蜴人さんから錬金小瓶の破片を受け取る。

「あ、はい。確かに受け取りました。他にも出てきたら教えてください」

「分かったのです」

 蜥蜴人さんは、そう言って畑作りを再開した。畑作りに使っている鉄の道具は、先端が曲がってしまったようだが、蜥蜴人さんはそれを気にせずに使っている。何というか、適当というか、とても力強い。


 ここは彼らに任せよう。


「大丈夫そうなのです」

「自分たちの仕事を行うのです」

 その畑作りのすぐ側で戦士の二人が木を切り始めた。


 鉄の斧を振り上げ、木に叩きつける。

「堅いのです」

 鉄の斧の一撃は、木にほんのりと線が入る程度の傷を作る。

「里の木よりも、ずっと堅いのです。これは時間がかかるのです」

 二人はかなり苦戦しているようだが、それでも諦めず、何度も鉄の斧を振り上げ、叩きつけている。


 二人は畑の近くで木と戦っているので、何かあっても、すぐに行動できるだろう。それに、ここにはスコルがいる。


『うん、これなら任せても大丈夫そうだよね』

 二人の戦士にその場は任せ、自分は石の斧を片手に、懐かしい手作りの籠を背負って森の奥を目指すことにした。

 東の森へと踏み入り、小動物に見つからないように気配を殺して、隠れながら進む。


 辿り着いた東の森の奥は、蜥蜴人さんたちの里に旅立つ前と変わらなかった。沢山の木々と、それに絡むように伸びたツタ。沢山のよく分からない植物。


 東の森の奥を手頃な大きさの若木を探して歩く。


『これがいいかな』

 それほど太くなく、出来るだけまっすぐに伸びた若木を選び、石の斧を構える。石の斧を振りかぶり、力一杯叩きつける。石で作られたあまり鋭くない刃が若木に傷を作る。

『石でも何とかなると思っていたけど、やっぱり鉄と比べると鋭さや硬さは落ちるよね。今度、炎の手さんに自分の分の鉄の斧も頼んでみようかな』

 そのまま若木を切り倒し続け、それを五本ほどと丈夫そうなツタを手に入れ、背中の籠に入れる。

 その頃には空が紅く染まり始めていた。


『帰ろうか』


 ある程度の採取で満足し、拠点へと帰還することにした。その帰り道も、出来る限り気配を殺して歩き、小動物から隠れて進む。こんな、背中の籠の中に若木を入れたような、バランスが悪い状態で戦いたくないからだ。

『肉と毛皮は欲しいけど、戦うなら、戦う準備をして、そっちに専念したいから、隠れて進むのは仕方ないよね』

 銀のイフリーダに言い訳をしながら進む。しかし、そのイフリーダからの返事はない。まだ、何か考え事をしているようだ。


「戦士の王が戻ってきたのです」

「戻ってきたのです」

 東の森を出たところでは、まだ戦士の二人が木と戦っていた。木に作った傷は半分くらいまで到達している。後、もう少しだ。今日の夜中までには、何とか切り倒せそうだった。


「戦士の王、あれから、さらに何個か見つかったのです」

 畑を耕していた蜥蜴人さんたちがこちらへと走ってくる。


 見せて貰った破片は全部で九つほどあった。中にはかなり鋭く尖った危険な破片もある。

「とりあえず、預かります」

 蜥蜴人さんたちから錬金小瓶の破片を預かる。これはこれで何か活用できるはずだ。


「皆さん、そろそろご飯にしましょう」

 すでに日は落ち始めている。暗くなる前に晩ご飯の準備をするべきだ。

「やったのです」

「肉なのです」

「一時、休憩なのです」

 蜥蜴人さんたちは大喜びだ。彼らが食料調達を行っている様子はなかったが、自分がいなかったらどうするつもりだったのだろうか。いや、もしかして自分がいるから行わなかったのだろうか。


 一応、自分は彼らが認める戦士の王だ。もしかすると、そういう役割だと思われているのかもしれない。


 うーん、これはこれで相談した方が良いのかもしれない。


 シェルターの近くに、籠ごと、今日、採取した若木とツタを置く。そのまま枯れ木を集めて火を起こし、湖から蛇肉を引き上げ、焼いていく。途中で語る黒さんも手伝いに来てくれる。


 肉が焼ければ晩ご飯だ。


 そこで聞いてみた。

「えーっと、皆さんに聞きたいのですが、食料はどうするつもりだったんでしょうか?」

 その問いに答えてくれたのは炎の手さんだった。もしかすると、この人が彼らのリーダー役なのかもしれない。

「戦士の王の助力には、本当に助かっているのです。切り倒した木を使って暗所を作り、キノコを育てる予定だったのです」

 あー、そのためにまずは木を切らせていた……のかな?

「それよりもまずは祠なのです!」

 が、そこに語る黒さんが割り込んできた。祠? 何をするものなのだろう。


「木を切り倒し終え、自分が加工している間、戦士に狩りを頼む予定だったのです」

 炎の手さんは語る黒さんを無視した。なるほど、そういう段取りのつもりだったのか。

「申し訳ないのです」

「不甲斐ないのです」

 戦士の二人が申し訳なさそうに頭を下げている。


「いや、二人は頑張っていると思いますよ」

 自分の言葉に炎の手さんも頷く。

「自分の予想が甘かっただけなのです。明日は狩りと分けるのです」

 戦士の二人が頷く。一人が狩り、一人が木を切る、という感じだろうか。


 いやいやいや。


「一人で十人分の食料を狩ってくるのは難しいと思います」

 というよりも無理だ。狩りは最初だけで、キノコが育ち始めれば、そちらを中心にする予定なのだとは思うが、それでも無理だと思う。


「確かに、ここの魔獣は手強いのです」

「肉……なのです」

 戦士の二人はうなだれたままだ。


「話は分かったのです! 戦士を増やすのです。院にも手伝って欲しいのです」

 そう言ったのは青く煌めく閃光さんだった。彼は語る黒さんに片目を閉じ微笑みかけている。チラリと見えた牙が光り輝いている。

「分かったのです。院も手伝うのです」

 語る黒さんが頷く。


 その後の話し合いで、畑班の五人の中から二人が戦士になるようだ。


 えーっと、そんな簡単に戦士になって良いのだろうか。自分の時のような試験とかはないのだろうか。

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