四十一、鬼ごっこ?
「私ト錆色サンハ『D』ノ道ニ先回リシテマース」
そう言ってシルコ達は走っていった。僕はしるこの神を追った。
一番圧迫感を必要とする追手役は二名と決めていた。ただし、そのうちの一人はどこかの防衛が突破された際に対処出来るよう一区画分後方を走る。そして、十字路で二本の道を塞ぐ役が二名、次の十字路に二名、計六名で追い込みを掛ける。
追い込みを掛けるのは僕とシルコとしるこレンジャーだ。しるこババアには海沿い公園で待機して貰っている。
「こちら追跡班。神は予定通り『E6』へ北上しています」
(こちら臙脂色。『E5』にいるよ)
(こちらワインレッド。迎撃準備は完了してる)
作戦を遂行するには先回りをしなければならない。その為には、ただ道を塞ぐだけではなく、時間稼ぎも必要になってくる。
ワインレッドは次の角で待ち伏せをしているはずだ。
しるこの神が『E6』の十字路に差し掛かった瞬間、右側からゆで小豆が散弾のように幾つも飛んできた。神は足を止め、体を反らしてそれをかわした。僕は追い付かないように十字路手前で速度を落とした。
神は体勢を整えて辺りを見回し、東西どちらも退路が塞がっていることを確認すると、再び北へ向かって走り出した。
「こちら追跡班。神は『D6』に進行中」
(こちら錆色。俺とシルコは待ち構えてるぜ)
神は『D6』の十字路を左折した。そこにはシルコがいる。
「マタ、会イマシタネー」
シルコは神の足元めがけてしるこを放った。神は足を取られて前のめりになる。しかし走る勢いを維持したまま、地面に手を付いて前方転回し、シルコへ真っ直ぐ向かっていった。シルコが構える。
ところが神はシルコと戦わなかった。眼前で左に進路を曲げ、塀を蹴ってシルコの後ろへと回り、逃げていったのだ。
急いで報告をする。
「防衛突破。神が『D5』へ向かいました!」
「失敗シマシタ。私ガ神サン追イマス。アイツ、私ノコト怖ガッテマス」
「分かりました。じゃあ、僕が『B』に先回りします」
(こちら赤褐色。南下を防ぐため『E5』に向かう)
(こちら臙脂色。『D4』到着! 神が曲がった。『C5』に向かってる。俺はこのまま『C4』に行くよ。早く『4』の道に応援来てくれ!)
(錆色だ。いま『4』に向かってる)
(こちらワインレッド。もう『C5』で待ち伏せしてる。迎撃しといてやるさ)
僕が『6』の道を北上している最中、(発射!)という声が聞こえた。同時に左手から爆発する音が響き、そして石の砕けるような音が立て続けに聞こえてきた。
(こちらワインレッド。命中した。神は『C4』方面に吹っ飛んで、臙脂色と交戦中、あ……)
(臙脂色だ! 神が、神が、凄い怒って追い掛けてきた!)
幾つもの声が揃う。
(北へ逃げろ!)




