52 デカい手 炸裂!
俺はありったけの力を振り絞って、無様に横へドサッと飛び込んだ!地面の冷たくて硬い感触が、薄っぺらい服越しに伝わってきた。
シュッ!またしてもギリギリセーフ!
耳元でバリバリッと木が砕けるデカい音がして、さっきまで俺の頭があった場所は、今ごろ木っ端微塵だろうな。
視界の端に雪ちゃんが映ったんだけど…えっ?!あいつ、想像を絶する軽やかな身のこなしで、ヒョイっとめちゃくちゃ遠くまで避けてやがった!マジかよ?こ、これは機敏すぎるだろ!どうやら昨晩の特訓の成果は俺が思ってたよりスゴイみたいだ!
周りの他のプレイヤーたちも、それぞれ驚異的な反応速度を見せて、よろめいたり、ゴロゴロ転がりながら必死に避けていた。だけど…
「うわあああっ!」
短い悲鳴が、張り詰めた空気を切り裂いた。
チャカベだ!あのビリヤードキューを持ったヤツ!あいつはまるでデカいハエたたきで叩かれた蚊みたいに、一瞬でなんだかよくわからないグチャグチャの肉塊になっちまった。
哀れなヤツ…自慢の突き攻撃も、披露する間もなくお陀仏か。ちぇっ、もったいねぇ。
「おいおいおい!まだ来るのかよ!」ハンスのオーバーな叫び声が響いた。
パペットジョーカーの二つのデカい手が、モグラ叩きのハンマーみたいに、また立て続けに叩きつけられてきた!
ドゴォォン!ドゴォォン!ドゴォォン!
一撃ごとにステージ全体がグラグラッと激しく揺れて、マジで大地震と変わんねぇ。俺たちは狭い空間で右往左往するしかなくて、心臓がドキドキして喉から飛び出そうだったぜ!
やっとのことで、あの嵐みたいな攻撃の嵐が一時的に止んだ。
でも、息つく暇もなくだぜ――
シュバッ!シュバッ!
パペットジョーカーの虚ろな眼窩から、いきなり二筋の真っ赤な光線が飛び出してきた!光線がステージに触れた瞬間、ジュッとすぐに真っ黒な焦げ跡と鼻をつく煙が上がった!
「くそっ、レーザーだ!避けろ!」俺は声を張り上げて叫んだ。
このステージ、ただでさえ狭いってのに、今度はこんなモンまで追加かよ!
二筋のレーザー光線が、めちゃくちゃ不規則な軌道でステージ上を狂ったように薙ぎ払い始めた!横やら縦やら斜めやら、もうメチャクチャだ!
俺は避けることに全神経を集中させて、これまでの戦闘で培った勘を頼りに、光線と光線の間の狭い隙間を、スリル満点でギリギリのステップで動き回った。ちょっとでも足が遅れたら、丸焦げにされてたかもしれねぇ!
他のプレイヤーたちも各々ありったけの技を繰り出して、あちこちで悲鳴が上がり、現場はカオス状態だった。
俺たちがレーザーに追いかけられて大騒ぎしている最中、さらに最悪の事態が起きた。
ギィィ――ガァァ――
ステージの上から、なんかイヤ~な音が聞こえてきて、その直後、天井の一部が開いた。
そして――ドスン!ドスン!ドスン!ドスン!
二十数体…いや、もっといるかも!等身大くらいのジョーカー姿の人形が、空から降ってきて、ステージに重々しく叩きつけられた!そいつらの背中につながってたワイヤーは着地の瞬間にブチッと切れて、それから一体ずつ、なんだか超マヌケだけど妙にゾッとするような足取りで、ゆらゆらと俺たちに迫ってきた!こいつら…とりあえず「小型ジョーカー」とでも呼んでおくか。
ちっ!こいつはマジで厄介なことになったぜ!死神の呼び出し状みたいなレーザーを避けなきゃなんねぇ上に、今度はこのクソ多い小型ジョーカーの群れまで相手にしなきゃなんねぇのかよ!
「くそっ!キリがねぇぞ!」
俺はレーザー光線の動きに注意しながら、手にしたゴルフクラブをブンブン振り回し、小型ジョーカーのフニャフニャしてるけど地味に威力のある攻撃をガードした。
「し、白狼様…こっち…」雪ちゃんの声が少し震えていて、彼女は手に持ったマシュマロ杖をギュッと握りしめ、小型ジョーカーたちに狙いを定めた。
次の瞬間、もともと別の方向に動いていた小型ジョーカーたちが、まるで目に見えない糸で引っぱられてるみたいに、クルッと向きを変えて、雪ちゃんの方へ一斉に集まってきた!
おおっ!やるじゃん雪ちゃん!このスキル、タイミングばっちりじゃねーか!
「うおおおおお!食らいやがれぇ!」
ハンスのヤツはとっくに待ちきれなかったらしく、雪ちゃんが集めた小型ジョーカーの群れに一足飛びで突っ込んでいくと、改造ボクシンググローブからシュゴーッと白い蒸気を噴き上げながら、強烈な一撃を叩き込んだ!
ドッゴォォン!重々しい爆音と共に、強烈な衝撃波が広がった。
あの四、五体の小型ジョーカーは、まるで爆薬を詰められたスイカみたいに、一瞬でバラバラに吹き飛んで、木片やパーツがそこら中に飛び散った!
うわぁ…この改造ボクシンググローブの威力、マジでモンスター級だな!
イ・ユンチョルのヤツは、相変わらずクールに例の花火筒を構えた。
ヒュゥゥ――ドカン!
長い尾を引いた花火が筒口から発射され、別の小型ジョーカーの群れに正確に命中した。激しい爆発音が響き渡り、さらに六、七体の小型ジョーカーが一瞬で灰になった。
「ちっ、俺も負けてられねぇ!」
俺はスライディングで足元をピュッと薙ぎ払うレーザーをギリギリでかわし、そのままターンすると、手にしたクラブがブンッと唸りを上げて風を切り、迫ってくる小型ジョーカーの心臓部分――いや、あの木製パーツの塊に心臓があるなら、だけどな――に、思いっきり叩きつけた!
パキィッ!
意外と軽い手応えだった。その小型ジョーカーは、安物の陶器人形みたいに、あっけなく砕け散った。思ったより脆いじゃねーか!
俺は深追いせず、返す刀でもう一体、飛びかかってきた小型ジョーカーを真っ二つにしてやった!
他のプレイヤーたちも次々と反応し、それぞれの武器で、このウザいチビ共を片付け始めた。ダーツ、水鉄砲、箒、それにロープスリングと、ありとあらゆる攻撃が一斉に浴びせられ、小型ジョーカーは次々と倒されていった。
混乱した戦いは一、二分ほど続き、あっという間に、あの鬱陶しい小型ジョーカーたちは俺たちによって掃討された。
はぁ…はぁ…やっと一群片付けたぜ。
小型ジョーカーが掃討され尽くした瞬間、ステージ上を狂ったように薙ぎ払っていた二筋のレーザー光線も、スッと消えた。
ん?待てよ…強烈な不吉な予感が、全身をゾワゾワッと駆け巡った。やべぇ!
俺はハッと顔を上げ、素早く視線をステージ中央のデカいパペットジョーカーに向けた――
案の定だ!
ヤツの右のデカい手が、何の前触れもなく、これまでのどの攻撃よりも速いスピードで、空気を切り裂くゴオオッという轟音を伴って、俺たちに叩きつけられてきた!
「うわっ!」
周りのプレイヤーたちも、明らかにこの不意打ちに度肝を抜かれて、次々に驚きの声を上げた。
やべぇ!この一撃、スピードが速すぎる!しかも範囲がデカい!俺が避けられたとしても、隣の仲間は多分…反応しきれねぇ!
脳裏に、ルーレットで手に入れたあのスキル――「ガード反撃」!そうだ、これだ!前に引いた「発射物反射」と似たようなモンだろ、同じく五回しか使えない制限付きだけど…くそっ、こんな状況じゃ背に腹は代えられねぇ!賭けてみるか!
「ガー・ド・反・撃!」
俺はほとんど本能的に、全身の力を両腕に込めて、クラブをアッパーカットの構えで、まるで山が崩れ落ちてくるようなデカい手に向かって、ありったけの力で振り抜いた!心の中で同時に、狂ったようにスキル名を念じた!
時間が、まるでこの瞬間に凍りついたかのようだった。
次の刹那、クラブとパペットジョーカーのデカい手の先端が、激しくぶつかり合った!
カシャカシャ…パリーンッ――!
パペットジョーカーの、あの見るからに頑丈そうなデカい手が、なんと乾いた砕ける音と共に、クラブとの接触点から、一気に全体が爆ぜ飛んだ!




