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40 逃れられないチェーンソー・ジョーカー

「一隊は俺についてこい!」ハンスが大声で叫ぶと、真っ先に右側の歪んだ鏡に向かってダッシュした。


「おい!ハンス!」俺は思わず焦って叫んだ。「お前、移動速度ダウンのデバフ食らってたろ? そんなんで突っ込んで大丈夫かよ?」


「靴にローラー仕込んであるんだよ!」ハンスは振り返りざまに叫ぶと、同時に「カキン!」と強く足を踏み鳴らした。金属製の靴底が甲高い音を立て、次にブースターでも点けたみたいに、「シュンッ」と歪んだ鏡に向かって滑っていった。


こいつ…また変なモン持ち出しやがって。まあいい、今はあいつにかまってる暇はない。


「残りは俺についてこい!左だ!」俺はまだ呆然としてる後ろのプレイヤーたちに怒鳴りつけ、ゴルフクラブを振るって、襲ってきたチェーンソー・ジョーカーを弾き飛ばした。


クソッ、こいつら、狂犬みたいにしつこい! 全然キリがねぇ!


「行くぞ!」そのうちの一人が素早く反応して叫び、すぐに続いた。他の連中もハッと我に返り、俺の後ろについて左の歪んだ鏡へと駆け出した。


歪んだ鏡に飛び込んだ瞬間、妙な吸引力を感じた。まるでぬるま湯に包まれるような感覚で、ぐにゃりと視界が歪んだ。


次の瞬間、足がしっかり地面に着いた。


「うわっ!」


「ここって…?」


周りからプレイヤーたちの驚きの声が上がった。俺は素早く体勢を整え、周りを見渡した。


ウソだろ…?


目の前にあるのは、さっきのクソ面倒なマスエリアじゃねえか!俺たち、ここに戻ってきちまったのかよ!


しかも、俺たちの背後の歪んだ鏡…これ、以前マスエリアを抜けた先で見たやつだ!


「くそ! なんでここに戻ってくんだよ!」チャカベが信じられないって顔で唸った。


さらに悪いことに、背後の歪んだ鏡の表面が再び波紋を描いたかと思うと、次の瞬間、一人、二人…チェーンソー・ジョーカーどもが、次々と鏡から飛び出してきた!まるでコピペみたいに、ぞろぞろと!


「ウソだろ!?あいつら、ここまで追ってきたのか!?」誰かが絶望的な叫び声を上げた。


目の前のマスエリアと、背後から絶え間なく湧いてくるチェーンソー・ジョーカーどもを見比べて…クソッ、まさに前門の虎、後門の狼か!このマスエリアを逆走してでも、もう一度突破するしかねぇ!


「あの、白狼様…マスのルール、光るところが…」雪ちゃんがおずおずと俺の服の裾を引っ張った。顔は真っ青で、何か伝えようとしていた。


「時間がねぇんだ!」俺は強い口調で雪ちゃんの言葉を遮った。声がデカすぎたのか、雪ちゃんはビクッと首をすくめた。


「おい、お前ら!」俺は後ろの十数人のプレイヤーたちを振り返って大声で叫んだ。「このマスエリアはさっき通った!今度は逆向きに跳ぶだけだ、いけるよな!?」


「問題ない!」すぐに誰かが返事をした。


「よし!俺が先に行く!」言い終わるか終わらないかのうちに、俺は前方の一番近くで光っているマスを睨みつけ、勢いよく跳んだ!


ドンッ!と、しっかり着地。


後ろのプレイヤーたちもすぐに反応し、一人また一人と続いて跳んできた。


一方、歪んだ鏡から飛び出してきたチェーンソー・ジョーカーどもは、まるで「ジャンプする」という概念がないみたいで、頭も無しにまっすぐこっちに向かって突っ込んでくるだけだ!


結果は、まあ、お察しの通り。先頭の数体ジョーカーが、暗いマスの上に足を踏み入れた――


ドーン!ドーン!ドーン!


激しい爆発音が連続して響き、火花と何かの破片がそこら中に飛び散った。脳筋ジョーカーどもは一瞬で吹っ飛び、粉々に。あたり一面に赤いペンキ(だと信じたい)がぶちまけられた。


後ろのジョーカーどもは、危険なんてまったくお構いなし。まるで光に吸い寄せられる虫みたいに突っ込んできては、先に行った奴らと同じように、ドカンと空に打ち上げられていった。


俺たちは休まず、ジョーカーどもがマスエリアで足止めされている隙に、光るマスを素早く跳び移っていった。すぐに、俺たちはマスエリアの対岸に到着した。


振り返ると、歪んだ鏡からはまだチェーンソー・ジョーカーが次々と湧き出し、そいつらが生産ラインの不良品のように、続々とマスエリアに突っ込んでは爆発四散していた。あちこちで絶えず響く爆発音が、不気味で少し笑える光景を作り出していた。


なるほど…これでゲームの仕組みを使えば、しつこいけど頭の悪い奴らにも対抗できるってわけか。勉強になったぜ。


ホッとした、まさにその時――


視界の端で、黒煙を上げ、パーツをガタガタさせながら、数体のチェーンソー・ジョーカーが爆発の合間を縫って、フラフラとこっちへ向かってくるのが見えた!爆死しなかっただと!?


なんだと!?


歪んだ鏡を見上げると、中からジョーカーがひっきりなしに飛び出し、見た感じもう百体は超えている。しかも、その数はどんどん増え続けていた!


あいつら、死を恐れていない。ただ突撃を繰り返し、数の暴力でゴリ押しして、爆発のわずかな隙間から無理やり突破してきた!


クソッ!これはいわゆるゾンビアタックってやつか!?数に物を言わせて、爆発のクールダウンを潰すつもりかよ?えげつねぇな!


「ヤバい!走れ!止まるな!」俺はすぐに、前方の見覚えあるカラフルな小屋エリアに駆け出した。


みんなも危険を感じ、慌てて俺の後に続き、必死に前へ走った。


背後からは、運良くマスエリアを通り抜け、ボロボロの十数体のチェーンソー・ジョーカーが、チェーンソーを振り回し、耳障りな唸り声を上げながら、フラフラと追いかけてきた!しかも、後ろにはもっと多くのジョーカーがマスエリアを突破しようと試みていた!


俺たちは必死にカラフルな小屋の間を駆け抜け、追手を振り切ろうとした。だが、ほんの数歩も走らないうちに――


ドンッ!


先頭を走っていた俺は、思わず急ブレーキをかけ、危うくそのまま突っ込むところだった。


目の前には、巨大な、固く閉ざされた黒い鉄のドアがそびえ立っていた!


クソッ!行き止まりかよ!この鉄のドア…覚えてるぞ、前にここを通った時は、確かに開いてたはずだ!なんで今は閉まってんだ!?ふざけんな!


「ど、どうしよう?塞がれちゃった…!」後ろのプレイヤーたちも足を止め、声が震えていた。


ますます大きくなるチェーンソーの唸り声がいくつも重なって、俺の耳をつんざいた。


クソが、マジで何の冗談だよ!まさか俺たちを袋小路に追い込むなんてな!?


俺は焦ってキョロキョロとあたりを見回し、他の逃げ道を探そうとしたが、両側は高い小屋の壁で、どこにも道なんてなかった!


ボロボロのチェーンソー・ジョーカーどもが、どんどん近づいてくるのが見える。奴らが放つ焦げ臭い匂いやペンキの臭いすら漂ってくる…!


まさに絶体絶命、と思ったその瞬間――


ギィィ――


横の緑色の屋根の小屋のドアが、内側から突然開いた!


ドアの後ろにはラマールが立っていて、焦った様子で俺たちに必死に手招きしながら、声を潜めて叫んだ。


「大谷! みんなも!早く!こっちに入れ!小屋の中に歪んだ鏡があるぞ!」


歪んだ鏡だと!?こんなところに?!まさに地獄に仏だ!


「急げ!入るぞ!」俺は迷わず体を回し、小屋に駆け込んだ。


小屋の中は薄暗かったが、隅っこに案の定、ぼんやりと光を放つ歪んだ鏡が立ているのが見えた!


後ろからプレイヤーたちもぞろぞろ入ってきた。


「早く行け!」


俺は後ろの連中に叫び、そのまま歪んだ鏡に頭から突っ込んだ。


また、あの慣れた無重力感と、ぐにゃりと空間が歪む感覚。


視界が再びはっきりした時、見覚えある場所に立っていることに気づいた…周りには透かし彫りの壁、そして上へと伸び、複雑に入り組んで渦を巻く階段…


あれ?ここって…


俺はハッと気づいた。ここは、俺たちが前によくやく抜け出した、あの城の迷宮の出口付近じゃないか!なんでまたここに戻ったんだ!?


さらに絶望的なことに――


後ろ、俺たちがたった今通り抜けてきた歪んだ鏡が、また波紋を立て始めた。そして、あのどこまでも憑いてくるチェーンソー・ジョーカーどもが、次々と鏡の中から這い出てきた!


ウソだろ!?こいつらストーカーか何かか!?全然まけねぇじゃんか!


「急げ!先に城の中へ!!」見慣れた城の入口と、背後から絶えず湧き出てくる追手を前に、俺はほとんど本能的に叫んでいた。

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