23 番外編2 念が重力を変える?
西原雪の視点
ロビーの賑やかな声がだんだん小さくなってきたの~。私はこっそりと騒がしい人混みから抜け出して、静かな場所で少し頭を整理したいなって思ったんだ。
このロビー、マジで広くて不思議な感じがするんだよね~。廊下や階段がまるで永遠に続いてるみたい。つま先立ちで大理石の床をそっと歩きながら、がらんとした廊下に自分の足音が響くのを聞いてた。
うぅ~正直、まだすっごく怖いの。こんなにたくさんの人がいるのに、なんだか凄く孤独で…。ポケットからこっそりペンレコーダーを取り出して、周りに誰もいないのを確認してから、壁の隅に寄りかかって座ったの。
「ふぅ~」深呼吸して、録音ボタンを押した。
「ここは西原雪、この怖いゲームに閉じ込められて二日目です。」私はなるべく声が震えないようにして、「今日は超~絶無敵に怖いタコ怪物を倒しました。たくさんの触手があって、三色のボールまで投げてくるんです!もう少しで私たちみんな食べられちゃうところでした、うぅぅ~」
あの大きなタコのことを思い出すと、思わずブルッと震えちゃった。
「白狼様ってマジで超~絶無敵カッコ~いい!最後の瞬間に反射能力を使って赤い爆発ボールをタコに打ち返したんだけど、あのポーズがヤバい~くらいカッコ良かった!えへへ、ホントに白狼様のこと尊敬しちゃう~。でもその後、白狼様が怪我しちゃって、すごく心配したんだよぉ…幸いエミリーさんがジャムで治療してくれたけど~。マジすごいよね~」
膝を抱えながら、指先でペンレコーダーについてるクマさんのシールを優しく撫でた。
「でも、今はこの超怪しいお城に閉じ込められちゃって、どう歩いても出られないの。みんなもうイライラし始めてる…私もずっとここに閉じ込められたままで、その…時間切れになるまで…ってことが怖いな…」
ここまで話すと、思わず声が震えちゃって、目に涙がにじんできた。
「わ、私、おうちに帰りたい…パパとママに会いたい…それから美奈子ちゃんと百合ちゃんにも…もし私がここで死んじゃったら、みんなはただ急に行方不明になっただけだと思うのかな?私が何に遭遇したのか、永遠に知らないままで…」
ついに涙がポロポロとこぼれ落ちて、袖でそっと拭った。
「でも!白狼様なら絶対に出口を見つけてくれるはず!あんなに凄いんだもん、きっとみんなを無事にクリアさせてくれるよ!わ、私も頑張るから!みんなの足を引っ張ったりしないからね!」
私は無理やり元気を出して、顔を上げて周りを見回しながら、何か明るい話題を探した。
「このお城、マジでヘンだよね~。階段だらけなのに、どう歩いても元の場所に戻っちゃう。なんかあれみたい…ペンローズの三角形?カルテルさんがそう言ってた。うーん…よく分かんないけどね~」
首をかしげていると、急に壁に伸びる階段に目が釘付けになった。
「あれ?この階段どうして…」録音を止めて、ペンレコーダーをしまい、立ち上がった。
その階段、そのまま壁に伸びてるじゃない!超不思議~。もしそこを歩いていけたら…出口が見つかるかも?
首をかしげて、その階段をじーっと見つめていたら、パチパチと瞬きして、急に変な感覚がしてきた…あれ~もしかしてあの壁は実は…床?だとしたら私って壁に立ってるってこと?
頭がクラクラ~。まるで綿あめを食べすぎたみたいな感じ~。
そう思った瞬間、世界がケーキみたいにひっくり返った気がした!
「わぁあああ~うわぁぁ~」
突然、私の体が「壁」から落ちて、「ドスン」って音がして…さっきまで壁に見えてた場所に着地しちゃった!
「いたたた~お尻いたいよぉ~」頬を膨らませながら痛いお尻をさすって、キョトンとした顔で大きな目をパチクリさせた。
ちょっと待って…これってどういうこと?今の私って…壁から落ちたの?違う、今立ってる場所って…さっきまで壁に見えてたとこじゃない?じゃあ私がさっき立ってた場所は…今は壁に見えてる?
体を回して、後ろを見てみた。さっきまでの「床」が今は高い壁になってる。
や、やばすぎる!
そーっと一歩前に進んで、さっきの「床」、つまり今の「壁」に近づいた。近づきながら「これって実は床なんだ」って思った瞬間…
「きゃああ~」
またグルグルっと世界が回って、元の床に落っこちた。
「いたっ~」今度は肘をぶつけちゃったけど、ぜんぜん気にならないくらい興奮してた。これマジですごい!
これ…いったいどんな魔法なの?
何回か試してみたけど、結果はいつも同じ—ある面を「床」だと思えば、重力がそれに合わせて変わるの!私の思いが重力の方向を変えられるなんて?
「す、すっごい!」小さな声で喜びながら、両手を胸の前で握りしめてウキウキした様子で、「これって…自分の考え方を変えるだけで重力の向きを変えて、出口を見つけられるってこと?」
胸がドキドキしてて、早くみんなにこの発見を伝えたくてウズウズしてたの、特に白狼様に!
全速力でロビーに戻ったけど、ハァハァと息を切らしながら着いたとき、ほとんどの人がもう寝てたの。ハンスは壁の隅でグーグー言ってるし、白狼様も目を閉じて、頭が少し下がっていて…
「はぁ~明日にしようかな~」小さくため息をついて、小さく唇を尖らせて少し残念そうにした。
私は隅っこを見つけて、こっそり座ったの。すごくワクワクしてたけど、今日の疲れでだんだんまぶたがもっそり重くなってきちゃったんだ。
みんなに教えるのは、今じゃないみたいだね…明日の朝にしよっと~。思わずあくびが出て、ゆっくりと目を閉じた。




