表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小人族御伽草子 呪いの珍皇子  作者: おかやす
幕間 〜 呪い
70/114

69 神々と呪い

 飛行機は無事、南紀白浜空港を飛び立った。「また襲撃されたりして」なんて不吉なことをミトが言っていたけれど、この飛行機に神の手下はおらず、先ずは一安心だった。


 「月読……か」


 青空にうっすらと光る月を見て、僕は舌打ちした。こいつが見てるんだろうな、と思ってはいた。月は世界中で神格化されている。たとえ概念神だったとしても侮れない相手だというのに、ミトの見立てでは古代神、しかもかなり上位というから、まともに当たるのは避けたい。


 「さて、どのクラスか……」


 一柱(いっちゅう)三神(さんしん)五天(ごてん)七王(しちおう)九部(きゅうぶ)十一将(じゅういっしょう)

 古代神を上位から並べるとそうなる。この世界そのものと言っていい一柱はありえない。三神、五天は別格の神、こいつらが僕ごときで動くとは思えない。七王、九部、十一将は、さてどうか。かつて天上にいたころ、僕が直接やりあったのは十一将配下の神まで。そいつらですら僕はまともに戦えばコテンパンにやられた。


 「チッ……このクラスが出てきたら、今は逃げの一手か」


 僕は鞄から本を取り出した。

 物理学。この世の全てを解き明かし、分解し、神秘を方程式に置き換える、ホモ・サピエンスが生んだ知識という名の力。これさえあれば僕は神と戦えるはず。ミトは「そんなことできるのか?」と懐疑的だ。だけど新幹線の中で神の手下と戦っている時に、光明のようなものは見た。


 やってやるさ。


 やつらが放った力を分解してやればいい。神の奇跡なんて言っても、僕に当たる瞬間には物理的な「力」になる。質量とベクトルに分解してベクトルを変えてやれば、攻撃をかわすことができる。

 いや、できた。

 ほんの少しだけど、できた。神の力を物理的な力に変え、バラバラにして消す、それができた。素粒子にまで分解してやれば、質量を消すことだってできるはず。そうなれば神なんて恐れるに足りない。

 だけどまだ足りない。もっともっと知識がいる。宇宙の全てを解き明かし、ビッグバンのその向こうへたどり着かなければ、一柱を守る神々は倒せない。


 「見てろよ、神」


 どこの神だか知らないが、眠らせた記憶を揺り動かし、神に受けた屈辱を思い出させたやつがいる。心から愛した人を思い出させたやつがいる。

 愛したからこそ、最期の祈りを呪いに変えた。この呪いは、楓機構がある限り消えはしない。


 「僕が、食い尽くしてやる」


 隣を見ると、ミトはすでに寝息を立てていた。実に気持ちよさそうに眠っている。いつ神が襲ってきてもおかしくないというのに、のんきなやつだ。


 「……お前も、そろそろ決めろよ」


 僕は、コツン、とミトの肩に頭を置いた。

 三代目一寸法師、ミトロビッチ。二代目の遺志を継ぎ、人を僕から守るために生まれた男。

 僕と同じ、生まれた時には課された使命がなくなっていた男。


 「僕は止まらないからな」


 神を食い尽くすまで。この世の全てを僕の呪いで染め上げるまで。そうなれば神だけではなく人間を巻き込み、きっと滅亡へ追いやるだろう。


 ねえ、ミト。

 その時お前は、僕の敵になるの? それとも、味方になるの?


 僕は心の中でそう問いかけながら、ミトに体を預けて、眠りに落ちた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] おもしろいよう……(語彙力の限界)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ