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小人族御伽草子 呪いの珍皇子  作者: おかやす
第3章 楓機構
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59 人形・楓 三

 悪霊と化した()たち数万体を寄せ付けもせず、一方的に蹂躙した三体の神。その三体の神を相手に、二代目は余裕すら感じさせる戦いぶりで圧倒した。


 「ほれ、お前はこっち」


 二代目が戦う隙に、僕は鬼によって助けられた。二十年ぶりに戒めから解き放たれたせいか、思うように手足が動かない。神に食われ続けたせいであちこちがボロボロだ。

 だけど、まもなく、鼓動が始まる。

 カコン、カコン、と音が響き、膨大なエネルギーが生まれ、僕の体を補っていく。


 「すげえな……」

 「魅入られるなよ!」


 神の攻撃をさばきながら、二代目が鬼に向かって叫んだ。


 「そいつは、神や鬼にとっては麻薬みたいなもんだ。一度口にしたら、こいつらみたいになるぜ!」


 二代目によって、神が滅ぼされていく。

 僕をいいように蹂躙し、貪り続けた神が、力を失い、チリとなっていく。


 ──楓を……楓をくれ!

 ──それをよこせ、我らによこせ!

 ──滅ぶ、滅んでしまう! 我らにそれを返せ!


 僕が生み出す力に魅入られ、溺れた神が消えていく。

 それを見ても、僕には何の感慨も湧かなかった。ザマアミロ、とすら思わなかった。ああ神が消えるんだな、という事実だけを認識し、僕は静かに二代目の戦いを見守った。


 「ほれ、着とけ」


 鬼が、どこからか着る物を持ってきてくれ、濡れた手ぬぐいとともに渡してくれた。

 僕がそれを受け取り、体を拭いて身支度を整え終える頃、二代目と神の戦いは終わった。


 「なんとまあ、あっさりと」

 「言ったじゃねえか。こんなラリったやつら、敵じゃねえよ。お前でもやれたって」

 「えー、まじかぁ? あんた基準に考えないでくれよ?」

 「お前、ビビりだなあ。本当に鈴丸と同じ鬼か?」

 「あんな超絶天才と一緒にするな。あいつは鬼の中でも別次元の存在だよ」


 ふわふわ浮いていた二代目が、鬼の肩に着地する。

 そして、服装を整え、無言で立っている僕を見据えた。


 「無事か……て、まあ、無事だわな」

 「まあね」


 カコン、カコン、と鼓動は続いていた。あらかた修復(・・)を終えた僕の体を、より完全なものにするために、力が生まれ続けている。

 この力は、何なのか。なんでこんな力が僕の中で生まれるのか。この力があるから、僕は、僕は……。


 「うおっ!」


 いきなり二代目に殴りかかった僕に、鬼が驚いて声を上げた。


 「おいこらてめえ、助けてくれた相手に一体何を……」

 「お前、ちょっと黙ってろ」


 怒りの声を上げる鬼を二代目が制し、ふわりと浮いて僕の前にやってきた。

 睨みつける僕を、二代目は静かな目で見返してくる。


 「ちく……しょう……ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう!」


 僕の中で怒りが爆発した。目の前に浮かぶ二代目に対し拳をふるい、落ちていた石を投げ、怒りのままに攻撃した。


 「お、おい……」


 鬼が何か口を挟もうとしたが、二代目が視線だけで制した。

 ああ、こいつはわかってやがる、と思った。

 僕の中に満ちた恨みが、嵐となって噴き出してくる。二代目が纏う青い光が僕の攻撃を全て受け流し、何の痛痒も与えられない。そうとわかっても、僕は攻撃を止められなかった。


 「ちくしょう……お前だろ、お前のせいだろ! お前たち小人のせいだろ!」

 「……だな」


 二代目が静かにうなずいた。

 その、全てを知っている、と言わんばかりの顔と、僕に向ける憐れみの目が、憎くて憎くてたまらず、僕は呪詛を吐きつつ二代目を攻撃し続けた。


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