108 奮闘
「どぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁっ!」
よっしゃ、これで三体目撃破!
「ぐっ……がっ、はっ、はっ、はっ、はっ!」
息してんだか笑ってんだか自分でも分からねえな。やれやれ、体力だけは自信あったんだけどな。
「おのれ……」
残る神が憤怒の形相で俺に武器を向ける。あーちくしょう、まだ六体いるのか。しかもその後ろで腕組んで余裕こいてるやつもいるし。
かぁーっ、キツイ。やっぱこれキツイ!
「お?」
さーてやったるか、と打出の小槌を持ち上げようとして、足がガクンと崩れた。
あれ、どうした?
うーむ、まだまだやれると思ったんだがな。これはアレか、歳を取ったということか? やれやれ、若い頃のような無茶はもうできんってか?
あれ、俺って若いのかな、年寄りなのかな?
鬼や小人の平均寿命って何歳なんだろ? 六千歳は、人間でいえば何歳だ?
「天よ、こやつは打ち滅ぼしますぞ!」
おーおー、女神様がお怒りだ。キレーな顔が台無しだぜ?
「んがっ!」
ドスドスッ、と俺の体に矢が突き立った。
いってぇな、おい。さっきから好き勝手矢を打ち込みやがって。それ痛いんだぞ!
「よぉーし、次はてめえだ、覚悟しやがれ」
「か、返り討ちにしてくれるわ!」
ケケッ、声が震えてるぜ。びびってんな。よし、さあて、行くか。
……て。
あれ、やべえな、足に力が入らねえ。
「さすがのお前も限界か」
高みの見物決め込んでた鈴丸が笑う。
「七王と九部を相手にここまで戦うとはな。見事であった」
「え……えらそうに……してるんじゃねえ……」
あーちくしょう、喉がいてえ。声がうまく出ねえな。ちぃっと無茶しすぎたか?
「惜しいものだ。我が眷属となれば、存分に力を発揮できたものを」
ずっと後ろにいた鈴丸が、他の神を制して前に出た。
だーれーが、お前の眷属になんかなるものか。俺の相棒は、もう決まってるんだよ。
「止めは私が刺してやろう。言い残すことはあるか?」
「あ……ある……ぜえ……」
やぁっと……やぁっと出てきたな、鈴丸。俺の間合いだぜ。
「てめえは……今から、俺が、倒す!」
「そうか。では、やってみるがいい。起死回生の一撃となるやもしれんぞ!」
保てよ、俺の体。これが最後の一撃だ。零が帰ってくるにせよ、俺があいつのところに行くにせよ、これで胸張って言えるぜ。
俺は五天・鈴丸を倒した、てな。
くっくっく、あいつ、俺のかっこよさにメロメロになって、抱いてくれって泣いて頼むに違いない!
よっしゃ、がんばるぜ!
「せい……やぁぁぁぁぁぁっ!」
俺の体に残った全パワーを打出の小槌に集中!
さあて行こうか、打出の小槌! この一撃で鬼退治だ!
ドン、と打出の小槌が大きくなる。
ドォン、と衝撃が走り、鈴丸以外の神を吹き飛ばす。
「まだそれだけの力を残していたか……面白い」
鈴丸が構えた。
「こい、打たせてやる。この五天・鈴丸を見事打ち果たしてみよ!」
「えらそうに……してるんじゃねぇぇぇぇっ!」
頼むぜ、打出の小槌。これで俺は空っぽだ。
この一撃に俺の全てを賭ける。
だから、鈴丸を打ち抜け!
「怨敵調伏! アルティメット・打出の小槌!」
小人族の青きオーラも上乗せだ! さあ、くらいやがれ!
………………あん?
「……どうした?」
俺がいきなり止まったもんだから、鈴丸が訝しげに首を傾げている。
あー……なんだ、お前もそういう顔するんだな。
「天!」
神が声を上げる。その緊迫した雰囲気に、鈴丸が振り返りぎょっとする。
鈴丸のすぐ後ろ、奴の間合いのど真ん中に。
男に戻った零がいた。




