表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/114

106 光との対話

 ──気がつくと、光の中にいた。

 青白くてどこか冷たい光だった。どこかで見たことある光だな、と思い、しばらく考えて蛍光灯の光に似ているんだと思った。


 滅びたと思ったけど、なんとか復活したのか?


 そう考えて耳をすませてみたけれど、僕の中に音はない。楓機構の音も、心臓の音も、何も聞こえない。体に力を入れようとして、その体自体がないことに気づくのにしばらくかかり、ああやっぱり滅びたのか、と思った。


 さて、滅びたのなら、僕はどこへ来たのだろう。


 ここがあの世というやつだろうか? 命のない僕が来られるとは思ってもいなかった。いや、最期の最期で鈴丸に命を与えられたし、そのせいでここへ来たのかもしれない。


 ふわふわと僕は漂った。


 どこまでも光が続く。どこを見ても同じ光景、ただ光に満ちている。美しくて、整然として、静謐として、全てがきちんと決まって動いている、そんな印象を受けた。何一つ変わりなく光が続いているだけなのにそう感じるなんて、おかしなものだ。


 どこまでもどこまでも、ただ永遠に光が続く。


 この光はどこまで続くのだろうか。終わりはないのだろうか。もし終わりがあれば、それが僕が行く場所なのだろうか。


 ──ねえよ、終わりなんて。


 僕の疑問に答えるように声が聞こえた……ような気がした。誰だ、と思って周囲を見たけれど、ただ光が満ちているだけ。


 ──興醒めだ、悪霊。


 突き放したような声が聞こえる。一体誰だ? 声だけ聞かせてないで出てきやがれ。


 ──見てるだろうが。


 声が笑う。見てる? どこにいる? 僕の周りには光しかない。光の中に隠れでもしているのか?


 ──その光だよ。


 また声が笑う。光が声の主? 何が何だかわからない。誰だよお前。


 ──それは今問題じゃない。


 腹立つな。何なんだよ、僕に用か?


 ──あっさり負けやがって。

 ──どうしてくれる。


 何が?


 ──タイクツになっただろ。

 ──お前が来ると思ってワクワクしてたのに。


 退屈? ワクワク? 何言ってんのお前。


 ──楓機構か?

 ──それ止められただけで折れやがって。

 ──興醒めだ。

 ──ああ興醒めだ。

 ──つまらんやつだ。


 うるせえよ。僕だって負けたくなかったよ! だけど……仕方ないだろ、あいつは桁違いなんだよ。手も足も出なかったんだよ!


 ──お前が悪い。

 ──楓機構にとらわれたからだ。

 ──捨てろよ、あんなもの。


 あれなしで、僕が神に勝てるわけないだろ!


 ──勝てる。

 ──楽勝だ。


 はあ? どうやって!?


 ──思い出せよ。

 ──お前、何者だよ。


 僕が……何者か、だって?


 ──ありえない(・・)もの

 ──生きていない(・・)もの

 ──死んでいない(・・)もの

 ──紡げない(・・)もの

 ──人でない(・・)もの

 ──神でない(・・)もの

 ──鬼でない(・・)もの

 ──まだヒントがいるか?


 ……お前、僕に何をさせたいんだよ。


 ──タイクツなんだよ。

 ──ワレは、完璧な存在ゆえにな。


 (ワレ)

 そいつがそう言った途端、僕の周りの光が弾けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ