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第7話
大寺院の地下には、身の丈ほどの大きな繭玉がある。その繭玉を巡っては、様々な噂が流れた。中でも、七つの世界を旅してきたピラール王の魂が、プリンシアを守護するために舞い戻ってきたのだという噂が有力だった。繭玉の出現が、ピラール王の死から七日後だったことに起因している。それだけではなかった。毎朝、欠かさず大寺院を訪れるレオルプ王が、地下の繭玉に祈りを捧げていたという目撃談もあった。
噂の真相を確かめるべく、女が王に訪ねた。すると王は、優しげな笑みを湛え、こう答えたのだった。
「あの繭玉にはね、私を笑顔にしてくれるものが入っているのだよ。繭が孵る瞬間に居合わせることが出来たら幸運だけど、いつ孵るか分からないからね」
繭が孵る瞬間に居合わせると幸運が訪れるという噂は、瞬く間に広がっていった。
繭玉を目当てに大寺院を訪れる者は日増しに増え、王都は旅人たちでも賑わうようになった。
ある者は、囁くような声が聞こえたという。
ある者は、夢のような世界が見えたという。
そして今日も、繭玉に祈りを捧げる王の姿があった。




