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「ゴミを良くする能力」と笑われたEランクの俺、無限強化で神を超え、光の勇者を踏み潰します  作者: 限界まで足掻いた人生
第二部「大罪と新国家編」

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第74話:輝ける聖水と、羨む影

祝福された廃棄場


「すごい……! 身体が軽い。魔力が湧いてくる!」


「古傷が消えた! 肌がツルツルだ!」


アヴァロンの朝は、驚きと歓喜で始まった。


蓮が『色欲』のアスモディアを「生体濾過フィルター」に作り変えたことで、地下都市を流れる水は、不純物が極限まで取り除かれた『超純水』ならぬ『超聖水』へと進化していた。


これを日常的に摂取し始めた市民たちの肉体強度は向上し、微弱ながらも全員が魔力を帯び始めていた。


「もはや、ここはスラムではない。地上のどこよりも清浄な『聖地』だ」


パラガスが、コップ一杯の水を飲み干して感嘆する。彼の老いた肉体ですら、若かりし頃の覇気を取り戻しつつあった。


蓮は、バルコニーから活気溢れる街を見下ろした。


「皮肉なもんだな。教会が何百年かけても作れなかった『地上の楽園』を、教会が捨てたゴミと悪魔で作っちまうなんて」


だが、光が強ければ強いほど、足元に落ちる影は濃くなる。


その法則を、蓮はまだ警戒していなかった。


英雄の暴走?


昼過ぎ、緊急警報が鳴り響いた。


「蓮様! 地上より緊急連絡! 我がアヴァロンの正規軍が、近隣の村を襲撃し、放火しているとの情報が!」


「なんだと?」


蓮が眉をひそめる。


「馬鹿な。兵士たちは全員、城内で訓練中だ。脱走兵か?」


「いえ、目撃証言によると……指揮を執っているのは『閃光の騎士ユリア』様と、『獣戦士リサ』様だそうです!」


その場にいたユリアとリサが、顔を見合わせた。


「あり得ません! 私はずっと蓮様のお側に!」


「私もよ! 誰かが私のフリをしてるんだわ!」


蓮は立ち上がった。


「変装魔法か? だが、ユリアやリサの強さまでは真似できないはずだ。……行くぞ。僕たちの名誉を汚す『偽物』の面を剥ぎにな」


鏡写しの悪意


現場となった村は、火の海だった。


「ひぃぃ! 助けてくれアヴァロンの騎士様!」


「黙れ。目障りだ」


そこには、銀髪の騎士が立っていた。鎧の形状、剣の構え、そして冷徹な美貌。どこからどう見てもユリアそのものだった。


隣には、鋭い爪を血に濡らしたリサがいる。


「あれが本物のアヴァロンのやり方か……!」


村人たちが絶望する中、空から漆黒の影が舞い降りた。


ドンッ!!


本物の蓮、ユリア、リサが着地する。


「……おい。僕の騎士は、そんなに安っぽい剣の振り方はしないぞ」


蓮が、偽ユリアを睨みつける。


偽ユリアは、本物を見てニヤリと笑った。その笑顔は、ユリアが決して見せない、歪んだ嘲笑だった。


「あら、本物のお出まし? 遅かったわね、ゴミの王様」


「貴様……! 私の姿で蓮様を愚弄するか!」


本物のユリアが激昂し、神速の突きを放つ。


だが。


カァァン!!


偽ユリアは、同じ速度、同じ軌道で剣を出し、攻撃を完全に弾いた。


「なっ……!?」


「驚いた? 私は貴女よ。貴女よりも強くて、美しい、理想のユリア」


第四の大罪『嫉妬』


空間がガラスのように割れる音がして、偽物たちの背後から、小柄な少年が現れた。


全身に鏡の破片を散りばめたようなローブを纏い、顔の半分が仮面で覆われている。


「初めまして、蓮。いや、『世界一幸運なゴミ』クン」


少年は、憎々しげに蓮を指差した。


「ボクはレヴィア。第四の大罪『嫉妬』の適合者だ」


レヴィアの声には、煮えたぎるような劣等感と敵意が混じっていた。


「ズルいよねぇ、キミ。才能もないEランクのくせに、神の腕を拾って、いい女を侍らせて、英雄気取り? 見ててムカムカするんだよ」


レヴィアが手を広げると、周囲に無数の鏡が出現した。


「だから、ボクが代わってあげる。キミたちが持っている地位も、名声も、力も。ボクが作った『完璧なコピー(影)』の方が、世界に相応しいんだ」


「影だと?」


「そうさ。ボクの能力は『万華鏡カレイドスコープ』。対象を映し取り、その能力を完全コピーし、さらに『オリジナルへの憎悪』を上乗せして強化する!」


自分自身との戦い


「行け、ボクの最高傑作たち!」


レヴィアの号令と共に、偽ユリアと偽リサが襲いかかってきた。


「くっ! 速い!」


本物のリサが爪で応戦するが、偽リサの爪の方がわずかに速く、深く食い込んでくる。


「どうしたのリサ? 貴女の動き、全部分かるわよ。だって私は貴女だもの」


偽リサが嘲笑う。


一方、ユリア同士の戦いも劣勢だった。


「剣筋、呼吸、魔力の練り……全て同じ! いや、こちらの迷いを見透かしている分、向こうが有利か!」


ユリアが防戦に回る。自分自身と戦うという精神的な負荷に加え、相手は躊躇なく民間人を盾にする卑劣さを持っていた。


「ハハハ! どうだい蓮! 自分の仲間に殺される気分は!」


レヴィアが高笑いする。


「次はキミだ。キミのその『右腕』、ボクも使ってみたいなあ!」


レヴィアが巨大な鏡を蓮に向けた。


鏡の中に、蓮の姿が映る。


映写トレース開始! 構成材質、魔力回路、概念特性……全て解析してコピーする!」


鏡の中の蓮が、漆黒の義手を構え、実体化して這い出てこようとする。


『嫉妬』の能力は、相手が強ければ強いほど、その「輝き」を妬んで強力なコピーを生み出す。現在の蓮は、格好の餌食だった。


模倣不能な重荷


「……コピーする、だと?」


蓮は、鏡から出てこようとする「偽蓮」を見て、鼻で笑った。


「やめておけ。お前には無理だ」


「強がりはいいよ! キミより強くて賢い『理想の蓮』を作って、キミを殺してボクがアヴァロンの王になる!」


レヴィアが魔力を注ぎ込む。偽蓮の右腕が黒く輝き、オリジナルと同じ波動を放ち始めた。


だが、その直後。


バキッ……!


偽蓮の右腕に、亀裂が入った。


「え?」


レヴィアが目を見開く。


バキバキバキバキッ!!


偽蓮の右腕だけでなく、肩、身体全体に亀裂が広がり、黒いノイズが走り始めた。


「な、なんだ!? 解析エラー!? 構造が……複雑すぎる!? いや、これは……『重さ』!?」


鏡が悲鳴を上げるように軋む。


蓮は、ポケットに手を突っ込んだまま、冷ややかに言った。


「僕の右腕は、ただの強力な武器じゃない。神を殺し、天使を喰らい、数千の呪いと、数万の民の命を背負った『ゴミ捨て場の結晶』だ」


蓮が一歩近づく。


「薄っぺらい鏡に映るような、綺麗な力じゃないんだよ。泥と血と、執念の塊だ」


ドォォォォン!!


鏡の中の偽蓮が、右腕の存在質量に耐えきれず、内側から自壊して爆発した。


「ぐわぁぁぁぁっ!?」


レヴィアが、鏡の破片を浴びて吹き飛ぶ。


「人の人生を妬む暇があったら、自分の足元を見ろ。お前には、僕の『ゴミ』一つ背負えない」


コピー能力の崩壊。


だが、放たれた偽ユリアたちはまだ消えていない。


「ユリア、リサ! 迷うな!」


蓮が叫ぶ。


「偽物は綺麗すぎる! 傷一つないユリアなんて、僕の知ってる騎士じゃない!」

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