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「ゴミを良くする能力」と笑われたEランクの俺、無限強化で神を超え、光の勇者を踏み潰します  作者: 限界まで足掻いた人生
第二部「大罪と新国家編」

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第71話:地下の太陽と、絶対零度の檻

地獄への誘い


ヴォルグの大剣と蓮の義手が激突し、その余波だけで防壁の一部が溶解した。


(このままでは街が保たない。場所を変える)


蓮は、ヴォルグの剣を弾き飛ばすと、ニヤリと挑発的な笑みを浮かべた。


「おい、赤鬼。ここは狭すぎるな。僕たちの国自慢の『VIPルーム』へ案内してやるよ」


蓮は、防壁の内側にある巨大な通気ダクト――地下最深部へと直結する竪穴へと身を躍らせた。


「逃がすかァァァッ!!」


ヴォルグは理性を失った獣のように咆哮し、蓮の後を追ってダクトへ飛び込んだ。


彼が通過するだけで、鋼鉄の壁が赤熱し、飴のように溶け落ちていく。まるで落下する太陽だ。


二人は音速を超え、地下数百メートルまで一気に落下していった。


アヴァロンの心臓部


着地と同時に、蓮は広大な空間へと飛び退いた。


そこは、以前蓮が整備した地下水路の中枢であり、都市全体に魔力を循環させるための『冷却プラント』だった。


巨大な貯水槽と、無数のパイプが張り巡らされ、冷気が漂っている。


ドォォォォン!!


ヴォルグが着地すると、貯水槽の水が一瞬で沸騰し、爆発的な蒸気が発生した。


「ハァッ……ハァッ……! 貴様の逃げ場はここか? 蒸し焼きにしてくれる!」


ヴォルグの熱量は、すでに溶岩をも超えていた。彼の鎧は白く発光し、周囲の機材が触れもしないのにドロドロに溶け始める。


「ここは都市の冷却機関だ。お前のその暑苦しい頭を冷やすには丁度いい」


蓮は、プラントの中央にある制御端末に、漆黒の義手を突き刺した。


「カイル、聞こえるか。今すぐ『循環システム』を逆流させろ。全冷却材をここに集中させるんだ」


『えっ!? でもそんなことしたら、プラントが凍りついて壊れちゃうよ!』


「構わない。壊れたらまた『良く』すればいい」


熱力学の否定


「小細工など無駄だァッ!」


ヴォルグが突進してくる。その一歩ごとに床が爆発する。


「死ね! 灰になれ! 我が怒りは無限だ!!」


ヴォルグが放つ熱線が、蓮を飲み込もうとする。


だが、蓮は動じなかった。


「良く、なれ」


蓮の魔力が、プラント全体に行き渡る冷却水と、空間そのものに浸透する。


彼が定義したのは『冷却』ではない。『熱運動の完全停止』だ。


カッ!!


世界が白く染まった。


ヴォルグの灼熱の炎と、蓮が生み出した絶対零度の冷気が衝突する。


ジュウウウウウウ……ッ!!


凄まじい音が響き、視界が真っ白な霧に覆われた。


「グオオオオオ!? な、なんだこれは……寒い……寒いぞ!?」


ヴォルグの動きが鈍る。


彼の能力は「受けたダメージを熱に変える」こと。だが、蓮が行っているのは攻撃ではない。「熱を奪う」という現象だ。


エネルギーを与えられず、ただ奪われ続ける状況に、『憤怒』のシステムがエラーを起こし始めた。


氷の彫像


「お前の怒りは、燃料がなければ燃えない」


霧の中から、蓮が現れた。


その右腕は、凍てつく冷気を纏い、青白く輝いていた。


「貴様ァァァッ! 斬る! 斬り刻んで燃料にする!」


ヴォルグが大剣を振るおうとする。だが、その動きはスローモーションのように遅かった。関節が凍りつき、マグマのように流れていた魔力が凝固し始めている。


蓮は、ヴォルグの懐に歩いて入った。


「眠っていろ。お前の役目は終わりだ」


蓮の義手が、ヴォルグの胸にある『憤怒の核』――赤く輝く心臓部に触れた。


「……停止フリーズ


パキィィィィン……!


澄んだ音が地下空洞に響き渡る。


ヴォルグの足元から、ダイヤモンドダストのような氷が瞬く間に這い上がり、彼の巨体を包み込んだ。


「オ……オオ……我ガ……怒リ……ハ……」


ヴォルグの赤い瞳から光が消える。


数秒後。


そこには、大剣を振り上げたポーズのまま、永遠に時間を止められた氷の彫像だけが残っていた。


それは物理的な氷ではない。概念的に「動き」を止められた、絶対静止の牢獄だった。


静寂と解放


ヴォルグが完全に凍結した瞬間、地上で暴れていた狂戦士たちの動きが糸切れた人形のように止まった。


「あ……あれ? 俺は一体……」


「なんでこんな所に……」


彼らの目から赤い光が消え、正気が戻ってくる。感染源であるヴォルグの機能停止により、呪いが解けたのだ。


地下プラント。


蓮は、氷漬けになったヴォルグを見上げ、大きく息を吐いた。


「ふぅ……。やっぱり、単純な馬鹿は扱いやすくて助かる」


蓮は義手の熱を冷まし、通信機を入れた。


「パラガス。掃除完了だ。この氷像は溶けないから、新しい観光名所にでもしておけ」


『はっ、流石でございます。地上部隊も沈静化しました。……それと、捕虜の中に妙な連中が混ざっています』


「妙な連中?」


『はい。ガレリア帝国の正規兵ではなく……どうやら、第三の大罪『色欲』の息がかかった、教団の信者たちのようです』


蓮の眉が動いた。


休む間もなく、次の災厄の影が忍び寄っていた。


「分かった。すぐ戻る」

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