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「ゴミを良くする能力」と笑われたEランクの俺、無限強化で神を超え、光の勇者を踏み潰します  作者: 限界まで足掻いた人生
第一部「復讐と奪還編」

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第54話:聖なる屍の工場と、偽りの天使

聖域の正体


扉の向こうに広がっていたのは、荘厳な大聖堂ではなかった。


そこは、血とオイルと、魔力の焦げた臭いが充満する、巨大な「工場」だった。


壁一面に張り巡らされたパイプが、ドクンドクンと脈動している。そのパイプの中を流れているのは、青白く発光する液体――高濃度に圧縮された、人間の生命力そのものだった。


「……吐き気がするな」


蓮は、パイプの終着点を見た。


そこには、巨大なガラス円柱が林立していた。中には、スラムから連れ去られた人々や、行方不明になった冒険者たちが、全裸で液体に浸されていた。


彼らはピクリとも動かない。脳に直接管を刺され、生きながらにして魔力電池として消費され続けているのだ。


これが、聖教会の地下で行われていた『聖魔融合』の正体。


人間を資源として消費し、神への供物を精製する、地獄のプラントだった。


狂信の管理者


「ようこそ、神の秩序を乱す『バグ』よ」


工場の最深部、巨大な魔力炉の前にある玉座から、声が響いた。


そこに座っていたのは、純白の法衣に身を包んだ老人――この国の宗教的頂点に立つ、教皇グレゴリオだった。


彼の目は、慈愛に満ちているようでいて、その奥には人間に対する感情が欠落していた。まるで、家畜を見る牧場主のような目だ。


「貴様が見ているのは、世界の維持装置だ。彼らの犠牲によって、結界は保たれ、魔物は遠ざけられ、王都の平和な暮らしが守られている」


教皇は、ガラスの中の死にゆく人々を愛おしそうに撫でる仕草をした。


「彼らは光栄に思うべきだ。無価値なゴミとしての人生を終え、世界を回す歯車の一部になれたのだから」


「……歯車?」


蓮は、漆黒の義手を握りしめた。ギリギリと、空間が軋む音がする。


「人間を部品扱いするな。お前が守っているのは世界じゃない。お前たち支配者層の、薄汚い既得権益だけだ」


「理解できぬか。個の尊厳など、全体の大義の前には無意味。貴様のようなEランクには、神の視座は理解できまい」


教皇は、ゆっくりと立ち上がった。その手には、不気味に脈動する心臓のようなアーティファクトが握られていた。


天使降臨


「だが、貴様は育ちすぎた。スラムのゴミを扇動し、S級すら屠る力……。もはや人間ごときの手には負えん」


教皇は、その心臓を魔力炉へと投げ込んだ。


「ならば、神の尖兵に排除してもらうまで」


ドォォォォン!!


魔力炉が暴走し、工場内のすべてのガラス円柱から、一斉に魔力が吸い上げられた。


中の人々が、瞬時に干からび、灰となって崩れ落ちる。数千人の命が、たった一瞬で燃料として燃やし尽くされた。


「出でよ! 神の威光、第六位階天使『エクスシア』!」


炉の中心から、空間を引き裂いて「それ」が現れた。


それは、絵画に描かれるような美しい翼を持つ天使ではなかった。


全身が無機質な金属質の光沢を放ち、顔には目も鼻もなく、ただ幾何学的な紋様が浮かんでいる。背中からは、翼ではなく、鋭利な刃物のような光のブレードが六枚、生えていた。


生物ではない。


それは、神が人間を管理し、間引きするために作られた、自律型殺戮兵器だった。


概念の捕食者


『ターゲット確認。コード:オール・エンハンス。排除を開始する』


天使から、感情のない機械音声が響く。


その存在感は、S級冒険者など比較にならない。立っているだけで周囲の空間が歪み、重力が狂い始める。


「ひれ伏せ。これこそが上位次元の存在、絶対的な神の力だ」


教皇が狂喜の声を上げる。


天使が腕を上げた。それだけで、蓮の周囲の空間が「切断」された。


回避も防御も許さない、座標ごとの消滅攻撃。


だが。


ガギィィィン!!


蓮は、その「空間断絶」を、漆黒の右腕一本で受け止めていた。


「な……!?」


教皇の目が飛び出る。


蓮の義手は、天使の放った不可視の刃を、物理的に「掴んで」いた。


「神の力? ……やっぱりな」


蓮は、義手を通して伝わってくる天使の構成概念を読み取った。


「こいつも、ただのシステムだ。プログラム通りに動くだけの、高性能なゴミ人形だ」


蓮の右腕が、どす黒く膨れ上がる。


「教皇。お前が神と崇めるものが、僕の『ゴミ拾い』でどうなるか……特等席で見ていろ」


蓮は、人の命を燃料にして動く殺戮兵器に対し、明確な殺意と、それを上回る「捕食」の意思を向けた。


神殺しの戦いが、工場の轟音と共に幕を開けた。

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