第22話：監禁の危機と、神の塔の門番

1. 聖域の監視と疑惑

フィーネが里に残ってから数日。彼女は**『治癒の根源』**の宝珠を用いて里の汚染除去に尽力し、病の再発を防いでいた。しかし、里の長老たちの彼女への態度は、日を追うごとに硬化していった。

長老たちは、フィーネの【治癒の聖域】が、里の魔力源と共鳴しすぎて、かえって不安定になることを恐れていた。そして何より、彼女が持つ**『治癒の根源』の宝珠と、彼女の異常な治癒能力**を、里の権威が独占すべきだと考えていた。

長老の一人、グルードがフィーネの前に立ちはだかった。

「フィーネよ。お前の力は里の秩序を乱している。その宝珠は、里の安全のため、我々長老が管理すべきだ。そしてお前も、**『異常な力』**を持つ者として、しばらくの間、治癒の間の奥に留まるべきだ」

これは事実上の監禁だった。フィーネは、長老たちが自分の**『能力』と『宝珠』**を狙っていることを悟った。

「嫌です！この力は、神崎様から里を守るために託されたものです！」

フィーネは抵抗するが、彼女を監視する衛兵たちの数は増えていた。彼女は、蓮の**『特別な制御』によって得た『絶対的な忠誠心』**が、里の権力者たちに阻まれる現実に、深い絶望を感じていた。

（神崎様……！私は、あなたとの誓いを破りたくない！この宝珠を、あなたに託された使命を、渡すわけにはいかない！）

フィーネは、『治癒の根源』を強く抱きしめ、長老たちの権威と欲望に、孤独な戦いを挑んでいた。

2. 神の塔の麓

一方、蓮たち『エンハンサーズ』は、東方の荒野を駆け抜け、ついに目的地である**『神の塔』**の麓に到達した。

塔は、神代の魔術によって築かれたかのような巨大な構造物で、その頂は雲を突き抜けていた。塔の周囲には、すでに佐野瑛太の憎悪の闇が、霧のように濃く立ち込めていた。

蓮の**『強化された鑑定』が、塔の麓に仕掛けられた強力な罠**を察知した。

「足を止めて。この一帯は、**『闇の概念』を増幅させる『憎悪の魔方陣』**で覆われています。佐野瑛太の仕業です」

蓮の警告と同時に、闇の霧の中から、異様な姿の魔物たちが姿を現した。それは、元は塔を守護していたはずの魔物たちだったが、今は**『闇の光』によって汚染され、目が赤く光る憎悪の傀儡**となっていた。

「私たちを待ち伏せしていたわね。あいつ、本当に狂っている！」リサが剣を抜く。

セラフィナは剣の柄を握り、冷徹な殺気を放つ。

「この闇は、私たちを**『絶望の概念』で満たそうとしている。神崎、この闇を切り裂く『断罪』**を！」

3. 闇の傀儡との激突

佐野瑛太が仕掛けた魔物たちは、蓮たちの**『絆の概念』**を破壊しようと、感情的な攻撃を仕掛けてきた。

「お前たちの愛など、偽物だ！お前たちは、光の勇者を裏切った裏切り者だ！」という幻聴が、蓮たちの心に響く。

しかし、蓮の**『特別な制御』**を受けた三人は揺るがない。

「黙れ！私たちの忠誠は、お前の言葉など届かない領域にある！」ユリアが叫び、魔物を切り裂く。

リサは**【獣王剣舞】**の敏捷性で魔物の一群を殲滅する。

「私たちの絆が、偽物だと？神崎から受けた熱こそ、真実よ！」

セラフィナは、**『断罪の概念』を宿した剣で、魔物たちの『憎悪の概念』**そのものを切り裂き、浄化していく。

「お前たちを操る闇の存在は、虚偽。我が剣は、虚偽を許さない」

蓮は、**『絆の概念』**を結界のように展開し、三人の連携を完璧にサポートする。

（やはり、佐野瑛太は、僕の**『絆の概念』**に対抗するため、この塔の魔力を使って、絶望を増幅させようとしている。本体は、すでに塔の最上階にいるはずだ）

4. 遠隔からの決意

戦闘の合間、蓮の心に、フィーネの激しい感情の波が流れ込んできた。

（神崎様……！この宝珠を、彼らに渡したくない……！私の忠誠を、里の人間から守りたい……！）

フィーネの**『特別な制御』**による感情の繋がりは、たとえ離れていても、蓮に彼女の危機を伝えていた。

蓮は、木の枝を強く握りしめた。

「皆、急ぎます！フィーネさんが、今、里で**『孤独な戦い』**を強いられています。彼女を救うには、この塔の黒幕を叩くしかない！」

蓮の決意に、三人の仲間たちも応える。

「承知したわ。光の勇者に利用された騎士団の憎しみを、全てあの塔にぶちまける！」ユリアが騎士の剣を構えた。

フィーネの監禁の危機と、佐野瑛太が仕掛けた神の塔の罠。二つの危機が交錯する中、蓮たちは、愛と忠誠を武器に、塔の入り口へと踏み込んだ。