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40話 フィアラは幸せになった

 ダイン様と結婚してから六年が経過して、私も二十歳になった。


 おなかの中にはダイン様との命が芽生えていて、元気に成長している。

 身体もそろそろ負担を感じるようになったため、執事長としての任務はしばらくお休みさせていただくことになった。


「フィアラ、とびっきりの使用人を連れてきたからゆっくり休め」

「助かります……。ダイン様のお知り合いですか?」

「いや、むしろフィアラにとっては深い知り合いだろう。もうじき来るはずだ」

「は、はぁ……」


 いったい誰だろう。

 六年前、国王陛下から褒め称えられてから私は有名人になってしまった。

 知り合いも大幅に増えてご縁のあるお付き合いも大勢いる。

 誰が来てくれるのか楽しみだ。


 ♢


「執事長。新たな使用人がお見えです」

「はい。通してください」


 コトネから報告を受け、すぐに出迎えにいく。

 ちょうどミアがドアを開けていたところだった。


 入ってきたのは……。


「本日よりお世話になりますミミと申します……」

「ミミ!?」


 驚いたあまり、思わず私は執事長らしからぬ返答をしてしまった。

 六年ぶりの再会で、昔に戻ってしまったような気分だ。


「ご無沙汰をしております、フィアラお姉さま。遅くなりましたが、ご結婚、そして妊娠おめでとうございます」

「あ、ありがとうご……ざいます」


 どっちが執事長なのかわからないくらいミミがしっかりとした口調だ。

 どう返事をしていいのか戸惑ってしまい、噛んでしまった。


 しかし、ミミはすぐに頭と足と手を地面につけ、土下座の体勢をしてしまう。


「今までの数々の無礼、ワガママ……。大変申し訳ございませんでした!」

「……顔を上げて」


 執事長としてではなく、今はミミのお姉ちゃんとして振る舞いたい。

 周りの使用人たちやダイン様には申し訳ないけれど、まずは義姉妹としての関係を復縁したい。

 そう思ったのだ。


「ミミも大変だったのね。でも、お姉ちゃん、ミミと会えて嬉しいよ」

「お姉さま……、ううん、お姉ちゃん!!」


 可能な限り、ミミとぎゅっと抱き合った。

 私たちのことを気遣ってくれたのか、ミミはお腹をかばうようにしてくっついてくれる。

 気遣いもできるようになって、言葉遣いも丁寧になって……、私は嬉し過ぎて大粒の涙を溢してしまった。


「これからはお姉ちゃんの代わりになれるように、ここで頑張るから! 元気な赤ちゃんを産んでね」

「ありがとう。ミミが来てくれたら元気いっぱいもらえたよ。仕事は大変なこともあるかもしれないけれど、よろしくね」

「うん! ……あ、よろしくお願いいたします執事長!」


 ミミの頭をそっと撫でた。


 ミミがさっそく作業に入ったあと、ダイン様にどういうことか聞いてみた。

 ミミは孤児院に入った当初は手を焼かせるワガママではあったものの、周りの人付き合いを経て徐々に変わったそうだ。

 そして、口癖のように『いつかお姉ちゃんのところへ行って役に立ちたい』と言っていたという。


「すまないな。実のところ俺は知っていたんだ。だが、ミミがどうしても驚かせたいというものだから、今まで黙っていたのだよ」

「本当に驚かされました。見た目も心も見違えるほど成長していて、最初誰だかわからなかったくらいでした」

「ミミは、よほど悔いていたのだろう……。それ故に必死になって人一倍勉強をしていたそうだからな」

「私、嬉し過ぎて……」

「あぁ。俺もフィアラの喜ぶ顔が見れて嬉しい。ミミの期待に応えるためにも、絶対に元気な子を産んで欲しい。俺も全力でフィアラを支える」

「ありがとうございます! ……あ、今おなかの中で動いた」


 きっと、おなかの中の赤ちゃんも喜んで飛び跳ねていたのだろう。

 私はそんな気がしていた。


 今の私の仕事は、ダイン様との間にできた元気な子供を産むこと。

 屋敷のことはしばらくみんなに任せよう。


 そして元気な子供を産んだら、さらに楽しい日々を送るのだ。

 生まれてくる赤ちゃんも一緒に。

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