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31話 フィアラはミミが心配になる

 コトネさんが侯爵様に報告をした。


「……というわけで、私は命令とはいえ社外秘の仕事内容をやらされそうになってしまいまして」

「あいつはまだ懲りぬか……。もう容赦はせんぞ……」


 侯爵様の顔は、今まで見たこともないほどの恐ろしくおっかない表情をしていた。


「コトネ殿よ、一旦引き下がってくれたまえ。少々フィアラ殿と話をしたいのでな」

「はい、失礼いたします」


 コトネさんが部屋から出ていき、私とダイン様と侯爵様の三人になった。


「フィアラ殿にはすまないとも思うが、デジョレーン家には制裁を加えなければならない事態になっている」

「申し訳ございません」

「いや、キミが謝ることでもあるまい。だが、正式に家族の縁は切れたとはいえ――」

「いえ、未練はありませんので……」


 喰い気味で侯爵様に返答をした。

 より説得力を出すために。


 しかし、それなりにショックではある。

 特にミミのことだけは心配だ。


 あの子はワガママだし言うことも聞かず、手を焼かされてはいたが、事情があってミミは善悪の判断すら区別できないのである。

 両親がミミを甘やかしすぎてしつけもなかったうえに、家以外での交流をほとんど避けていた。

 私が教えようとすると、両親から『厳しくしすぎだ』などと言われてなにもできなかった。


 もしかしたら、今からでもしっかりと色々と教えていけば真っ当な女の子になって、将来幸せな家庭を築くこともできるのではないだろうか。


「なにか心残りでもありそうと言った表情をしているぞ」


 横にいるダイン様が私のことを心配するような目で言ってきた。

 私は相変わらず顔に答えが出てしまっているらしい。


「もしも制裁を加えた場合、どのような措置になるのでしょうか?」

「当然のことだが、今やってもらっている仕事はクビになる。貴族としての任務責任も問うだろう。だとすれば、最悪の場合は爵位剥奪のうえ追放、あの家もお取り潰しになるだろうな」

「そうなりますよね……」


 ミミのことだけはなんとか助けてほしいなどとは言えなかった。

 私が大事に育てていたニワトリたちもまともな面倒を見れる人はいないだろうし、おそらくはもう……。


「父上。しかし不正などどのようにして証拠を掴むつもりで?」

「今考えている。だが、次に与える仕事は特に重大な社外秘が含まれた書類整理になる。しかも、代役がいないのだよ……。こんなときに人手不足でな」


 侯爵様は困った表情を浮かべていた。

 こんなことになるなら、断固として社外秘含む仕事も断らないで覚えておけば良かったかな。

 そうしたら、今ここで私が代役でできたかもしれないのに。

 いつも楽しく屋敷で仕事をさせていただいてるから、今の私なら国務だって喜んでやれる。


「人が足りていないのでしたら、私もお手伝いできることがあれば引き受けますが。去年の今ごろやっていた仕事だと、たとえば貴族王族の年俸や任務の管理でしょうか」

「な!? なぜフィアラ殿が特に重大な社外秘を……」

「え? 社外秘……? 去年、お父様から命令されていた仕事です。社外秘ではないからやれと押し付けられて……」

「あの男はどこまで嘘をつけば気が済むのだ……。ひとまずフィアラ殿よ、他のものには仕入れた情報は漏らさぬように」

「知らなかったとはいえ申し訳ございません」


 もしかしたら、他にも知らず知らずのうちに重要任務をやらされてしまっていたのかもしれない。

 ことが落ち着いたら、侯爵様に確認しておかなければ……。

 それと同時に、私はひとつ思いついてしまった。

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