表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/14

ホワイトデー:彼氏とわたしとブルマとオランジェット

「ホワイトデーの買い出し行ってくる!」


 そう言って、彼氏(やつ)は勇ましく出かけていった。タブレットを置いて。

 ならばやることはまず、画像フォルダのチェックだろう。猫画像が貯め込まれていることは知っている。

 わたしは彼氏のタブレットのロックを解除した。



『ブルマだらけの60分』

 ひと通り猫画像を堪能したわたしが目をやった先。本棚の中の本に擬態するようにして、それはあった。

 ブルマ体操着(コスプレ)姿で、お尻を強調したポーズの女の子がパッケージ。ただし、顔が見切れて写ってない。

 タイトルもさることながら、そんなにもブルマに焦点が当てられるものなのか。というか、いかにしてもたせるというのだ、ブルマで。60分も。

 まあ、たしかめてみればいいか。

 わたしはためらいなく彼氏のゲーム機を起動し、DVDをつっこんだ。



 結論から言おう。

 ――大作だった。

 タイトルとパッケージに騙された。いい意味で。60分なんてあっという間だった。

 これは文化史に残すべきブルマ映像資料だ。学術的価値がある。

 いやしかし、このパッケージだからこそ「ブルマなんて……」という心無い偏見の目と殲滅から逃れ得たのではないか。そう考えるとなかなかジレンマである。


「ただい――まああぁあっ!?」


 ドアを開けて2秒の彼氏。手に提げた洋菓子店のおしゃれな紙袋を放り投げ、価値あるブルマが映るテレビに貼り付いた。全身をこれでもかと使って。

 わたしは、ちょうど胸に飛んできた紙袋をキャッチして封を開ける。お、オランジェットスティック。いい趣味じゃないか。


「見、みみみ、みみ」


「み」しか言わない彼氏を見ずに、わたしはオランジェットを頬張る。ほろ甘く苦く、そこに絡むチョコレートのまろやかな甘みがまたたまらない。ナイスチョイス、我が彼氏。


「見たよー。アカデミックなブルマだった」

「え、じゃあ穿いてくれるの?」


 一気に目を輝かせる彼氏。水を得た魚みたいに。


「はっ。ばーか」


 わたしは鼻で笑って、彼氏の口にオランジェットを突っ込んだ。

 甘酸っぱさもほろ苦さも色気もない。

 そんな、わたしと彼氏のホワイトデー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ