表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/113

84話:4章補完 レミィさんの手紙

オマケです。

短いですが、本文に入れるとちょっと長くなるような気がしたので、分けて投稿しました。

 前略、レヴィへ。


 なんて、かしこまる仲でもなかったわね。

 改めて、おかえりなさい。貴女(あなた)が帰ってくるのをずっと待ってたわ。


 あんな事件があったから、自殺でもするんじゃないかと心配したわよ?

 貴女がそんなに弱い子じゃないとは知ってたけど、それでも万が一にそういう事が起こるのが、この商売だもの。


 貴女が出て行って、丸一年。

 短いようだけど、わたしにはとても長かったわ。

 登録して、たった一年で百階を越えた貴女たちは、私にとっても希望の星だったわ。

 あの迷宮を制覇するなら、きっと貴女だと思っていたもの。

 だから、貴女はきっと帰ってくるって信じてた。


 初めて会った時のこと、覚えているかしら?

 貴女はカウンターに着くや否や、「世界樹を登るから、資格ください」って言ったの。

 成人前で登録しに来る人はたくさん居たけど、貴女はその中でも飛びっきり……抜けてそうだったわ。

 だから仲間を斡旋して、学園に推薦して、色々世話を焼いてるうちに、変な情も湧いちゃってね。

 まるで妹が出来たみたいな気持ちだったわ。


 そんな貴女が、どんどん階層をクリアしていく。

 迷宮に泊り込む日が、一日増え、二日増え、それに反比例してギルドに顔を出す日が減っていって、正直寂しかったわね。

 でも、貴女が持ち帰る土産話は、とても楽しかった。

 どんな罠があったか、どんな魔獣と戦ったか、そしてどんなドジをしたか。

 貴女は必死で攻略してたのに、私はそれを劇でも見るかの様にしか見てなかったの。

 だからきっと、レヴィ、私は貴女がこの世界樹を攻略すると、根拠も無く思い込んでいたの。よくできたお芝居の様に。


 あの日、パーティが壊滅したと聞いた、その時にその間違いを思い知らされた。


 なぜ、もっと警戒するように口にしなかったのか。

 なぜ、調子がいい時ほど危険が潜んでいることを知らせなかったのか。

 私は過去にそういう話を何度も聞いてきたのに、貴女たちにはそれが当てはまらないと思い込んでしまっていたわ。

 何でも見透かすかのように大人びた対応をする貴女なら、そんなの必要ないと信じ込んでしまった。

 最初に見た時は『抜けてる』って思ってたのにね。


 私は貴女の油断を見て、知って……なのに警告しなかったの。

 だから、あの事件は貴女だけのせいじゃない。わたしのせいでもある。


 だから謝りたかった。

 でもそれは、多分しちゃいけないことだと、あの時は思った。

 落ち込んでる貴女に『わたしのせいだ』なんて言ったら、逆に傷つけたかもしれなかったから。

 だから、貴女が街から消えた時に、私はまた間違えたのかと悩んだわよ?


 でも、貴女は戻ってきてくれた。

 新しい仲間を連れて、伝説に再び挑むために。

 あれから、たった一年。

 あの事件の事を覚えている人も多いし、貴女の心の傷も癒えきってはいないでしょう。

 でも再び立ち上がってくれた貴女を見て、わたしは伝説の英雄を見る想いよ。

 だからレヴィ。


 おかえりなさい。

 ありがとう。

 そして、ごめんなさい。


 他の皆が貴女を否定しても、私は貴女の帰還を歓迎するわ。


 貴女の親友、レミィより。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ