二つの選択
「よーし、アイラ、ナナ。並んでくれ」
「分かりました!」
「いえあ!」
俺たちはカイトさんから許可を得て、帝国内の施設を周っていた。
といっても、あまり観光施設のようなものはない。
機械的な建物ばかりだが、逆にまたそれがいい。
普通、王国や公国では見られない景色だ。
帝国内には蒸気機関車が走っていて、今はその機関車が走ってくるのを待機している感じだ。
時間的にはそろそろ……お!
駅の近くで待機していると、ちょうど機関車が来た。
止まった瞬間に、俺は慌ててシャッターを切る。
ジーという音とともに写真がカメラ内から出てきた。
俺は写真を見て、ふうと息を吐く。
「ルイトさんは入らなくてよかったんですか?」
ナナが駆けてきて、写真を覗き込みながら言ってきた。
「ああ。俺は自分を写したいんじゃないんだ。世界と、仲間たちの記憶を留めたい」
「不思議なことを言うね。アドバイザーの私も、なんて助言すればいいか分からないよ」
「精霊には分からないことだよ。人間特有のあれだ、面倒なこだわりだよ」
「私はそうは思わないけどね。まあ、よく分からないことには変わりないけど、素敵なことだってのは分かるよ」
「そう言ってくれると嬉しいよ」
さて、と俺はカメラを首にぶら下げて移動を始める。
まだまだ見てみたい、写したいことはたくさんある。
アルトミスさんには本当に感謝しないと。
なんたって、俺の旅々を記録できる貴重な代物をくれたのだ。
世界を見るだけじゃない。世界を保存できるのだ。
いつかこの旅が終わった頃に、アルトミスさんに報告しよう。
一緒に写真を見て、もう一度感謝がしたい。
きっと彼も喜んでくれるはずだ。
「貴様! ここで何をしている!」
「んあ!?」
急に肩を掴まれたものだから、変な声が出てしまう。
ふと顔を上げてみると、帝国軍の軍人であった。
「その服装、外界の人間だな! 誰の許可を貰って自由に行動している!」
「いや……第一部隊の隊長、カイトさんから許可は貰っていますが……」
「カイト殿が許可だと? そんなのありえない! あの方が簡単に許可なんて出さないはずだ!」
「本当なんですけど……」
ふと不安になり、ちらりとナナの方を見る。
よかった。念のため、外套を着させておいて間違いなかった。
顔を隠し、バレないようにしてくれている。
「貴様らはこっちへ来い! 収容施設に送ってやる!」
それは不味いな。
収容施設となると、ナナの存在は間違いなくバレる。
こうなるとヤケだな。
「よっと」
「なっ!?」
軍人の手を振り払い、アイラとナナの手を引っ張る。
「逃げるぞー!」
ここからカイトさんがいる第一部隊の拠点は近い。
なら、そこまで逃げれば勝ちだ。
後ろを見ると、案の定こちらを追いかけてきている。
よーし。このまま追いかけてこいよ……!
「待てい!」
「待ちません!」
◆
「彼らが言っていることは事実だよ。僕が許可を出した。何か文句があるかね」
「いえ……! た、大変失礼しました!」
どうにかカイトさんが控えている拠点まで逃げ込んだ俺たちは、無事助けてもらうことができた。
軍人はカイトさんを見るなり萎縮し、事実を知った途端に涙目になった。
「貴様……あなたたちにも大変ご迷惑をおかけしました。……申し訳ありません」
「いやいや……いいんですよ」
別に、帝国内をうろうろしていたのは事実だし。
俺がそう言うと、どこか安心した様子で軍人は出ていった。
「いや、悪いね。僕も僕でバタバタしていて、許可証の発行を忘れていたんだ」
そう言って、カイトさんから許可証なるものをもらう。
どうやら、これで帝国内を自由に歩き回れるらしい。
「あ、でも機密情報はあるから……えっとカメラだっけ。それを撮るのはやめてね。多分、僕がものすごく怒られるから」
「はい。もちろんです」
そう言って、踵を返そうとするとカイトさんが止めてきた。
「一つ伝えなければいけないことがあるんだ」
「なんですか?」
カイトさんは神妙な表情を浮かべて答える。
「知っていはいたが、君を追っている勇者を名乗る男と女が帝国に入国した。皇帝にバレるのを避けるためにこちらで身柄は確保したが……やることがあるんじゃないかな?」
「リイドとベレア……」
そう言うと、アイラとナナが間に入ってくる。
「ルイト様。理由はなんとなく察せますよね。ルイト様がここにいて、私がここにいます。……彼らは間違いなく、私たちの旅を終わらせる可能性がある存在です」
「そうだよ。君は運がないけど、今は違う。私たちと出会って、隠しダンジョンを手に入れた。そして夢への一歩をみんなで踏み出したんだ。もうやることは分かっているよね?」
そうだ。
俺は夢を叶えるためにここにいる。
世界を見る――その夢を叶えるために。
リイドとベレアとの因縁をここで終わらせるべきだ。
俺は彼らに、絶対に戻らないと伝えるべきだ。
「君はここで、夢を諦めて王国に帰るかい? それとも、夢を手に入れるのかな?」
俺は――
「夢を夢で終わらせたりはしません。行きましょう、案内してください」
さて、遂に勇者パーティとの決戦が近ずいてまいりました!
ルイトはどんな決断をし、どんな未来を歩むのか。20時頃、更新いたしますのでお楽しみに!!
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