カイトさんとの勝負
カイトさんに連れてこられたのは、ギルドのような施設の訓練施設とも言える場所だった。
体に負荷をかけるための道具だったり、木剣だったりが大量に置かれている。
中央には一段高い場所に闘技場がある。
俺はその上に登り、カイトさんと相対した。
「普通の兵士は木剣なんて訓練くらいでしか使わないんだけど、僕はこれが好きでね。やっぱり戦いと言えば剣同士だよ」
「となると、ここの人たちは剣を使わないんですか?」
「いやいや、言い方が悪かったね。もちろん使うよ。ただ、戦闘を行う際は銃を使うことが多いがね」
「銃……ですか。それまた珍しい物ですね」
銃とは、火薬を用いて弾丸を発射するもの。
一応王国にもあるが、火薬なんて取れないためかなり貴重なものになっている。
となると、ここでは火薬には困っていないのだろう。
帝国……やっぱり国が変わると色々と変化するな。
「頑張ってください!」
「応援してるねー!」
ナナとアイラに手を振って、木剣を構える。
カイトさんもニヤリと笑って構えた。
「それじゃあ、行くよ!」
「はい!」
そうして、一気にカイトさんは俺に向かって木剣を突きつける。
基本の型の一つである突きだ。
これに関して言えば、防ぐのはかなり難しい。
横に避けるか、あるいはタイミングよく弾き飛ばすか。
もちろん横に避けるのが一番だが、それじゃあ隙を作るには少し不安が残る。
しかし、今までの俺なら横に避けるのが一番無難だった。
けれど――
「止まって見える……」
カイトさんの動きがまるでスローに見えた。
どうしてか分からないが、多分レベルも関係しているだろう。
圧倒的レベル差があると、時々不可解な現象が起こるとされている。
今回は隠しダンジョンの干渉もないし、まずそれだろう。
この好機は絶対に逃さない。
「はぁ!」
俺は剣を弾き、相手をひるませる。
「おっと、さすがだね――」
だが、カイトさんの実力が高いのは間違いない。
レベル差ではカバーできない部分もある。
なら、俺は自分が持つレベルを圧倒的に使いこなさなければならない。
……速度は、俺の方が上だ。
――パチンッ!
思い切り、カイトさんの前で手を叩いた。
なんてことはない。ただの猫騙しだ。
ただ、唐突な猫騙しは脅威である。
なんせ、そんな一撃が来るなんて誰も想定していないからだ。
「な……」
カイトさんは突然の事態に状況が飲み込めないのか、一瞬だけ隙を作った。
それが命取りである。
「もらいました!」
バランスを崩している今、相手に直接ダメージを与える。
そう、足に木剣をちょこんと当てるのだ。
それだけで相手は自分の体重を保てなくなる。
「また……!?」
カイトさんは尻もちをついて、木剣から手を離した。
否、離してしまった。
武器を捨ててしまったら、それはもう敗北を意味する。
なんせ、手ぶらで木剣を持っている相手に勝てるわけがないからだ。
俺は木剣をカイトさんの正面に向ける。
「これで、勝ちですね」
さすがに、ここまでして「今のはなし」と言われるのは辛い。
もちろんのこと、そんなことはまずないと思っているけれど。
「さすがだ。素晴らしいよ、ルイトさんの実力……ちゃんと感じ取ったよ。さすがはアルトミス推薦の者だ」
カイトさんは立ち上がり、苦笑しながら俺に手を差し出す。
俺は手を握ると、ぐっとカイトさんが握り返してきた。
別に悪意のあるものではない。
どちらかと言えば友好的な、まるで友と認めてくれたとも言える握り方であった。
「戦えて楽しかったよ。ありがとう」
「いえ、俺も楽しかったです」
「かっこよかったです! ナイスバトル!」
「いいねいいね! さすがはルイトだよ!」
そう言って、カイトさんはグットサインを見せる。
「さて、それじゃあ約束は守らないとね。稼ぐ手段を教えるよ」
「ありがたいです」
「この国には生憎とギルドがなくてね。なんせ、ギルドの代わりとして軍隊がメインに活躍しているから」
こほんと咳払いをして、カイトさんは胸を張る。
「ようこそ、第一部隊へ。歓迎するよ、ルイトさんとその御一行様方」
「部隊って……もしかして軍隊に入るんですか?」
それは予想外だ。
しかし、軍隊となるとそれ相応のメリットが必要だ。
なんせ、俺はこの国とはほぼ関係のない人間。
アイラたちもいるし、危険がないとは絶対に言えない。
「もちろん、ご飯はタダだし戦争に駆り出されたりはしないよ。やることはどちらかと言えばギルドに近い」
「となると……魔物退治とかですか?」
「その通り! 最近は魔物が活発化しているからね。本当にやることはギルドと同じだよ」
なるほど。それなら問題はなさそうだ。
それにご飯がタダとなると、浮いた資金を自由に使える。
メリットは十分にあるな。
「オーケーってことでいいかな?」
「はい。しばらくの間よろしくお願いします」
「いいね。ありがとう」
くるりと踵を返し、カイトさんは笑う。
「それじゃあ、早速だけど問題があるんだ」
「問題……ですか?」
「魔物が活発化したっていったよね?」
「はい。そう聞きましたが」
「魔物狩り……を手伝ってほしいんだ。まあ、ひとまず今日は休んでほしい。宿とかは用意しようか?」
「魔物狩りの件は分かりました。それと宿は問題ありません。お気になさらず」
「了解。それじゃあ、ひとまずは休んでね」
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