ただの魔法
「ナナ! 下がれ!」
俺は眼前の敵を前に、ナナに指示を送る。
魔族は厄介だ。普通の魔物と同等には扱ってはいけない。
「分かりました……!」
ナナが逃げようとするが、
「待ちなさい!」
魔族がそう叫ぶと、ナナの動きが鈍くなる。
《威圧》か……。
俺と同じ魔法を持っているとは……なかなか運命的だな。
だが――無意味だ。
「なっ!?}
彼女と同じ、《威圧》を発動する。
目には目を歯には歯を。同じ魔法には同じ魔法をぶつける!
「なんでこんな魔法を……まさかお前も!」
「分かんねえけど……少なくとも俺はお前とは違う!」
ナイフを弾き飛ばし、相手にタックルをかます。
階段上でのタックルだ。俺もバランスを崩す可能性もあるが――時には勇気も大事だ!
案の定相手と一緒に階段から落下する。
けれど、状況は変わった。
俺が馬乗りになり、相手に剣を突きつける。
「ナナ、俺は今からやるから後から光魔法を頼む」
「分かりました……!」
俺の《威圧》で動けなくなった魔族を見据える。
「殺しには慣れていないようね……人間ちゃん」
「そうだな……魔族なんて初めてだ」
基本、魔族との戦闘なんてリイドたちがやっていた。
改めて同じ立場になると……なかなかに来るものがある。
「いいことを教えてあげる。私は死にたいの」
「は……? 何を言っているんだ?」
魔族はただ、悲しげに俺の剣を見る。
そして、剣を握りしめた。
「魔族になってから体が言う事を聞かないのよ。ずっと情緒が不安定。死にたいのに、人間を殺しちゃうの」
「……魔族になった?」
人間から魔族になる……なんて真似、普通はできない。
そもそも人間と魔族は違うのだ。
なのに……彼女は魔族になったのか?
「私はもともと体を持たない亡霊だった。死んだのに天国には行けない地縛霊だったの。でも、神を名乗る人物がね、私の願いを聞いてくれるって言うから物は試しだってお願いしてみたの。『死んだ旦那と一緒の場所に行きたい』って」
そう言うと、女性は笑う。
自分に対して嘲笑しながら。
「そしたらさ、千人の人間を殺したら解放するって言って私を魔族にしたの。そしたらびっくり、体が言う事を聞かなくなった」
神を名乗る人物……。
多分、ナナを襲った集団と関係があるだろう。
「でも、苦しいわよ……だからお願い。私を殺して。旦那と一緒の場所に行けなくてもいいから、この体とは別れたいの……!」
俺は手を上げて、ナナに合図する。
「ナナ……目を瞑れ」
「は、はい」
俺はナナを確認した後、魔法を確認する。
何か、何かいい魔法があるはずだ。
……あった。
なんだよこれ。いつ使う魔法なんだよ。
「《天国への階段》を付与」
俺は剣に光魔法を宿す。
「辛い思いをしたな。もう楽になってくれ」
「……人間さん。ありがとね」
「お安い御用だよ」
◆
「一体ルイト様は何をしたんです?」
帰り道、そんなことをナナに聞かれた。
俺は少し悩んだ後、こう答える。
「ただの魔法だよ」
魔法は誰かを救うためにある。
俺はそう思っている。
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