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お気楽領主の楽しい領地防衛 〜生産系魔術で名もなき村を最強の城塞都市に〜  作者: 赤池宗


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パナメラの到着

 ロッソの提案もあり、モンデオには三日後に小さな船の模型を作ったという程度の話のみとなった。


「おお! なんと精巧な! これは、我が国の造船技術が盗まれてしまったかもしれませんね」


 と、モンデオは素直に驚きつつ、そんな冗談を口にする余裕もあった。ちなみに、船の模型は本当に精密に出来ていたので、恐らくその部分での驚きは素直な反応だろう。ただ、実際に遠洋を航海できる船が作れるとは思っていないはずだ。


 モンデオはそれから一週間ほど滞在したが、情報交換はそれなりに出来たし、船のことは置いておいても中々有意義な会談となっただろう。


 それに関してはロッソも満足げに語っていた。


「それでは、皆様。本当にありがとうございました。是非ともまたこの街に来たいと思っておりますので、よろしくお願いします」


「はい、こちらこそありがとうございました!」


「うむ。是非また来てくれ。歓待しよう」


 そんな挨拶をして、モンデオは帰還した。それなりに会話を重ねた結果、やはりモンデオは同盟を結ぶならソルスティス帝国の方が良いと考えていそうだと感じる。


 それがフィエスタ王国の為なのか、モンデオ個人の為なのかは判断に困るところだが。


「……さて、明日から船造りをお願いできるかね?」


 モンデオを見送ってすぐに、ロッソがそう言った。切り替えの早さに思わず笑いそうになる。


「そうですね。すでにハベルさんの研究も進んでますし」


 そう返事をして振り返ると、後方にいたハベルが親指を立てて口の端を上げた。


 モンデオが滞在中も我慢できず、領主の館の裏庭に深い池を作って船の試作品を作って研究していたのだが、ハベルの追求する性格が発揮され、ものすごい数の試作が繰り返されていた。


 結果、ラダヴェスタも納得の出来の試作品が完成したのである。


「……聞き比べたが、ほぼ同じような音が聞こえた。まだ海で聞いてはいないので分からんが、恐らく大丈夫だろう」


 ラダヴェスタにそう言われて、思わずハベルとハイタッチをしてしまうほど嬉しかった。まぁ、単純に船の模型を作って試行錯誤するという毎日は楽しかったが、やはり完成すると達成感があるのだ。


「やはり、溝の深さも影響したな」


「ラダヴェスタさんが近づいて再調査してくれたのも大きいよ。だって、溝の一部が円状だって分かったんだからね」


 紋様は想像以上に複雑で、四角い溝と三角の溝が多かったが、一部は断面が円状で表面から見るよりも溝の幅が広いところがあったのだ。これはラダヴェスタの力が無ければ分からなかっただろう。


 僕の意見を聞き、ハベルは深く頷いて答えた。


「うむ……これだけ複雑な形状に辿りつくには、数十年とはいわず研究が重ねられたことだろう。簡単なことではないな」


 鍛冶師ではないが、物作りの見地からフィエスタ王国の造船技術へ深い敬意を示すハベル。やはり職人は卓越した技術に感動するのだろうか。


 そんな研究の日々を過ごした為、ハベルは今すぐにでも船を造りたそうだった。そんなウキウキした様子のハベルに苦笑しつつ、ロッソに返事をする。


「そうですね。とりあえず、明日に備えて英気を養いましょう。楽しみですね」


「うむ。では、食事の準備をさせよう。今日はいつもより豪勢にするように言っておくぞ」


「いえいえ、もう十分過ぎるくらいですから……本当に、普段通りで良いです」


「はっはっは! 料理長に伝えておこう。喜ぶだろう」


 と、そんな会話をしてロッソと共に帰路につく。


 だが、町中を進んでいると、領主の館の方角から馬に乗って騎士が駆けてきた。ロッソに何か報告があってのことだろう。緊張感が高まる気配を感じながら、近づいてきた騎士の報告を待つ。


「閣下! 館にてお客様がお待ちです!」


「む? そのような予定であったか? 誰か」


 騎士の言葉に首を傾げるロッソ。それに騎士は姿勢を正して返事をした。


「パナメラ・カレラ・カイエン伯爵です! なお、伯爵閣下よりのご伝言ですが、早馬と変わらぬ速度で行軍してきた為、事前に連絡が出来ず申し訳ないとのことでした!」


 騎士からは信じられないような伝言が伝えられ、思わずロッソが噴き出すように笑い出す。


「はっはっは! 変わらぬな。相変わらずせっかちなことだ」


 愉快そうにロッソが笑い、再び館を目指す。ふと隣に目を向けると、アルテが微笑んでいた。


「パナメラさんらしいね」


「はい」


 せっかちなパナメラの行動に苦笑してそう言うと、アルテは楽しそうに笑いながら返事をした。アルテにとってはヤンチャな姉のような存在だろう。


 いや、伝説のレディースとか、ロシアンマフィアの姉御のような姉かもしれないが。


 少し失礼なことを考えながら館まで戻ると、パナメラ一行が整列して待っていた。パナメラは汗一つかかずに優雅に立っているが、部下の方々は心なしかぐったりしている気がする。


 これは、流石に合掌せざるを得ない。


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