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お気楽領主の楽しい領地防衛 〜生産系魔術で名もなき村を最強の城塞都市に〜  作者: 赤池宗


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圧倒的優位

 地球の歴史において、遠洋航海が出来る船が開発されてからは大航海時代と言われるほど一気に世界が変わった筈だ。それがこの世界では起きていない。理由は一つ。海の上では大型魔獣の対処が困難だからである。


 そんな中、フィエスタ王国が技術革新を起こして遠洋航海の手段を得た。それも、現在は恐らくフィエスタ王国だけしか持ち得ない独占的な技術だ。つまり、大航海時代にあった各国の植民地支配もフィエスタ王国のみが可能となる。まだまだフィエスタ王国は海の向こう側がどうなっているか調査をしている段階だが、いずれ自国の船の技術の有用性に気が付くだろう。そうなれば、何もしなければフィエスタ王国の天下がくるのは間違いない。


 対して、こちらは地続きの大陸内の地図ですら完全ではないかもしれない。隣の大陸の情報は商業ギルドから得る以外に手段が無いような状態である。つまり、世界の情勢を知るという点においてもフィエスタ王国が覇権を握る可能性が高い。


 それらを考慮して、自分なりに答えてみる。


「まず、フィエスタ王国の優位性は独占的な遠洋航海技術です。これにより、フィエスタ王国は海に面してさえいれば遥か遠方にどの国よりも早く、大量の人や物資を運ぶことが出来ます。また、防衛の甘い海岸の町や村を襲撃して略奪することなども出来ます。全ての海岸を守ることなど出来ないので、大軍が移動している間に逃げられてしまうでしょうし、やりたい放題できますよね」


「ぐぬ……あの船を見た時にも思ったが、恐ろしい話だな」


 陛下のそんな感想に頷きつつ、今後の話に移行した。


「そんな現状を考えると、フィエスタ王国と同盟関係になることは必須です。そして、早急に遠洋航海に必要な銀の装甲の謎を解く必要があります。ここで必要なことは、まず銀の装甲の素材を見極める為に一流の鍛冶師に協力してもらうこと。次に、海の中で銀の装甲がどのような効果を発揮しているのか。何か特殊な動きをしていないか。そういった部分を水中から調査したいですね。その為にも、一度遠洋航海に同行しておくべきですが……」


 ティルによそってもらったパスタ料理にフォークを刺し、くるくるしながら自分の考えを口にしていると、ふと場の雰囲気が変わったような気がして顔を上げた。


 周りを見てみると、皆の強い視線を感じる。


「……やはり、船の研究にはヴァン子爵の力が必要だな」


 陛下が真剣な顔でそう呟くと、パナメラとアペルタが強く頷いた。


「そのようですな」


 アペルタがそう口にすると、パナメラが憐れむような表情で首を左右に振る。


「……少年、私でも庇いきれんぞ」


 パナメラは意味の分からない言葉を口にした。いやいや、何を言っているのかな。


「ちょっと待ってください。船の研究なので、僕じゃなくて良いと思います。むしろ、王国が誇る研究者の方と船大工、鍛冶師、宮廷魔術師の人とか連れて遠洋航海に出てもらえたら……」


 慌ててそう言ってみたのだが、陛下は静かに首を左右に振った。


「……ヴァン子爵の領地には、腕利きのドワーフの鍛冶師がおったな。そして、水中での装甲の動きとやらを調査するなら、幻の種族と呼ばれるアプカルルも領民にしておるではないか」


「あ~…………」


 陛下のその言葉に、思わずなるほどと納得してしまった。確かに、ドワーフの鍛冶師は他にいないだろうし、アプカルルなどまず見ることすらないだろう。これほどの適任者を抱えているのは世界広しといえど、慈愛に満ちた天才少年領主であるヴァン君しかいないに違いない。


 だが、断る。


 何とか遠洋航海には出ないように交渉しなくてはならない。


「……その、領地をずっと放置しているわけにもいかないので、やっぱり船で遠くまで行くのはちょっと……」


 自分でも自覚できるくらいの苦笑いを浮かべながらそう言い訳をしてみると、アペルタが優しげな微笑みを浮かべて頷いた。


「ほう。それならロッソ侯爵の領地に滞在して、二、三日ほど船に乗せてもらうのはいかがかな? それなら、一か月ほどで終わると思いますぞ」


「一か月……」


 アペルタの提案に思わず天を仰ぐ。


 ぶっちゃけ、もう帰ってゴロゴロしたいのだ。船を造るのは面白いが、あの銀の装甲の謎は簡単には解けないだろう。そうなってくると面白くない。ヴァン君は根っからの研究者ではなく工作を楽しむくらいがちょうど良いのだ。ビバ・DIY。


「……そうですね。それでは、研究の為に必要な調査を担当しますので、その後の研究は専門の方に任せるという形なら……」


 研究に加わらなければ早急に帰れるだろう。そう思っての発言だったが、陛下は嬉しそうに頷いて口を開いた。


「おお、それは助かる!」


「ヴァン子爵が協力してくれるなら間違いありませんな」


 陛下とアペルタはもう船が出来上がったように笑い合う。


「いやいや、調査だけですよ? 調査だけですからね?」


 そう言ってみるが、二人は聞こえていないように笑い合い、あまつさえグラスを合わせて乾杯などしている。この狸親父たちめ。わざとだな。


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