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お気楽領主の楽しい領地防衛 〜生産系魔術で名もなき村を最強の城塞都市に〜  作者: 赤池宗


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【別視点】  ロッソの驚き

【ロッソ】


 噂は聞いていた。それこそイェリネッタ王国との戦いが本格的に始まる前に、フェルティオ侯爵家の四男が爵位を授かったと聞いた時からだ。


 曰く、ヴァン・ネイ・フェルティオは神童である。幼い頃からその才覚の片鱗を覗かせていたが、恵まれた魔術の適性がなく、侯爵領内の僻地へと飛ばされたという。


 しかし、ヴァンはそこで才能を開花させた。流石に大袈裟だとは思うが、部下数名と百人そこらの村人で村を発展させ、成竜すら討伐してみせた。陛下が直々にご確認されたという話もあるが、その噂に関しては裏を取り事実であると判明している。その後の重用ぶりや戦争に参戦した貴族と会話をした結果、ヴァンの才覚は異常なまでの生産系魔術と先を見通したような戦術の発案にあると思われた。


 砦を作ることが出来ないとされていたウルフスブルク山脈に仮の砦を、それもイェリネッタ王国陣営の眼前に建造する発想と胆力。これは、歴戦の猛者でも簡単なことではない。それ以外の各戦場からも聞こえて来るヴァンの活躍は、まるで英雄として語り継がれる物語の一端を見聞きしているかのようだった。


 そのヴァンが、自ら我が領地を訪ねてきた。たとえ理由がフィエスタ王国から来た大型船の見学と調査だとしても、私はヴァンの来訪を心から喜んでいた。会って見れば、本当に幼い子供のようだったが、それでも、だ。


 さて、この少年が未知の国の船を見学して、どのような感想を抱くのか。


 そう思っていたのだが……。


「…………これは、想定外だったな」


 目の前に広げられた精密な図面を見て、私はそう呟くことしか出来なかった。何もかもが私の想像の上をいった。その子供が用意したとは思えない資料を見て、完全に圧倒されている自分に気が付く。


「ヴァン卿。これを基に船の試作は出来ないか? 恐らく、トラン殿はもう一週間か二週間程度で帰路につくことだろう。内密に建造しておき、試作の船を海に浮かべてみないか」


 そう告げると、ヴァンは少し考えるような素振りを見せた。私を含めた爵位を持つ大人たちがヴァンの発言を待って沈黙する。それが、ヴァンを一人前の貴族家当主と認めている証拠だとも言える。その証拠に、大好きな弟にちょっかいをかける姉のように接するパナメラであっても、ヴァンの思案を邪魔しないように物音一つ立てずに大人しくしているのだ。


 数秒ほどだろうか。ヴァンが静かに考えた後、口を開いた。その第一声を聞こうと、皆が黙って耳に意識を集中させているのが分かる。


 そんな中で、ヴァンは何事も無いように自分の意見を述べた。


「試しに船を作って、トランさんに見てもらうのは駄目でしょうか?」


「……なに?」


 ヴァンの提案の意味が分からずに素で聞き返す。だが、他の者たちはヴァンの言葉の意味が理解出来たようだった。


「……少年。それはトラン殿に、フィエスタ王国に余計な警戒心を抱かせることになるのではないか」


 パナメラがそう口にすると、タルガが顎を引いて口を開く。


「その通りです。出来ることなら、必要に迫られるまではヴァン様の魔術を見せるべきではないと愚考いたします」


 まだ男爵になったばかりというタルガもヴァンの言ったことを理解して、そう答えた。確かに、ヴァンの言ったことをそのまま鵜呑みにすればその懸念は当然だ。だが、そもそもの話、この国で恐らく初となる海上に浮かぶ大型船の建造だ。それを、トランのいる間にやってのけるなど、とてもではないが可能とは思えない。


「……ヴァン卿。砦を作るという話とはまた違うのではないかね? そんな簡単に……」


「あ、もちろん、いきなり完成品を作るわけではないですよ。とりあえず、試作してみてって感じです。もしかしたら浮かべるだけでもやっとかもしれませんからね」


「そ、それはそうだろうが……」


 軽く言うヴァンに困惑しつつ返事をしていると、パナメラが腕を組んで唸った。


「……閣下。もし、ヴァン子爵が船を数日で作れるとしたら、どう思いますか? それをトラン殿に見せて良いものか」


 そんな不思議な質問のされ方をして、戸惑いつつ頷く。


「正直、そんな簡単なことではないと思っているがね。まぁ、もし船を造ることが出来たなら、そうだな……フィエスタ王国は既に他国に向けても船を出していると言っていた。いずれヴァン卿の能力や実績も知られることだろう。ならば、最初からあえて情報の一部を渡してしまった方が利点は多いかもしれない。最も大きな利点は二つ。フィエスタ王国からの信頼を勝ち得ることと、意図的にヴァン卿の能力を制限した情報を流せること、だな」


 そう答えると、パナメラは深く頷いた。


「……分かりました。それでは、ヴァン子爵の能力を誤認させる手段を考えるとしましょう。それさえ決まれば、すぐにでも船の試作に取り掛かれます」


「すぐに、か。分かった。ならば、正式に私が許可を出そう。本来なら陛下に確認をしておきたいところだが、ヴァン卿の表情を見るに、トラン殿がいる内に船を造って話を聞きたいのだろう?」


 苦笑しながらそう答えると、ヴァンは子供らしい笑顔で頷いたのだった。




この度、

『せっかくの異世界だから楽しく旅行したい 〜無限の魔力で二つ名が黒い災害になってしまいました〜』

が、まさかの書籍化です!☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆

スターツ出版のグラストnovels様より3月27日発売となります!

なお、タイトルも変更となりました!新タイトルは

『転生した元病弱青年、無限の魔力で楽しく旅しながら無双する』

です!


改稿版はノベマにて毎週掲載しています!是非チェックしてみてください(๑>◡<๑)

https://novema.jp/book/n1745007

なお、書籍版は更に敏腕編集のI氏により大改稿実施!是非読み比べてみてくださいね(*‘ω‘ *)

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