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お気楽領主の楽しい領地防衛 〜生産系魔術で名もなき村を最強の城塞都市に〜  作者: 赤池宗


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陛下からの厚意

 バーベキュー大会も終わり、我々はセアト村に帰りますよとパナメラに伝えた。


 しかし、微妙な反応をされる。


「もう帰るのか?」


「はい、帰ります!」


「寂しいじゃないか。もう一週間ほど滞在していけば良いのに」


「いえ、帰ります!」


 断固として己の意思を曲げないでいると、パナメラは残念そうに溜め息を吐いた。


「もう少し色々と作ってもらいたいものがあったが、仕方がないか」


 パナメラのその言葉に苦笑していると、アルテがすぐ隣にきて口を開く。


「パナメラ様……いくら何でも、ヴァン様を働かせ過ぎだと……」


 大きな声ではないが、アルテがパナメラに抗議の言葉を口にした。これは僕だけでなく、パナメラも予想外だったようで、思わず目を丸くしている。


 ディーやエスパーダは長くフェルティオ侯爵家に勤めてきただけに、貴族の当主同士の会話にはまず口を出さない。ティルやカムシンもギリギリまで我慢しているだろう。


 そんな中でアルテがパナメラを非難するようなことを口にするのは予想外だった。


「……なんだ、すっかり少年の味方じゃないか」


 パナメラが戸惑いを隠せずそう呟くと、アルテは眉をハの字にして首を左右に振る。


「い、いえ……その、ぱ、パナメラ様の敵になったわけでは無くて……あ、差し出がましいことを申しました……」


 抗議の声を発した理由か何かを口にしようとしたようだが、パナメラがまじまじとアルテの顔を見ているとすぐに勢いが萎んでしまった。


 涙目になり、言葉も尻すぼみに消えていく。アルテのその様子を眺めてから、パナメラが吹き出すように笑ってアルテの頭をがしがしと片手で撫でた。


「はっはっは! 仲が良いのは良いことだな! しかし、私の手を離れてしまったようで少し寂しい気持ちもあるが」


 パナメラがわざとらしく悲しげにそう告げると、アルテは慌てふためいて必死にパナメラの言葉を否定する。


「そ、そんな……! パナメラ様は私の恩人ですから、そのようなことは……」


 アルテが必死にそんなことはないと伝えようとする。今度はこちらがアルテの様子を見かねて横から口を出した。


「アルテ、パナメラさんの冗談だと思うよ」


「え?」


 僕の言葉にアルテが目を瞬かせてからパナメラを振り向く。すると、パナメラがアルテを見て楽しそうに微笑んだ。


「も、もう……! パナメラ様……!」


 揶揄われたと分かったアルテは珍しく頬を膨らませて怒る。それにパナメラは目を細め、声を出して笑った。そんなやり取りをしてから、パナメラがそういえばとこちらに顔を向ける。


「忘れていたが、陛下がヴァン子爵にイェリネッタ王国王都の視察を頼もうとされていたぞ」


「え? 視察ですか?」


 突然の言葉に聞き返すと、パナメラはフッと息を吐くように笑った。


「つい先日、私のもとへ書状が届いた。セアト村にも届いていることだろう。先に内容を聞いておくか?」


 面倒ごとがまたきたのかと警戒しながら、一応頷いておく。


「なんだ、その顔は」


 パナメラは僕の顔が面白かったのか、小さく笑いながらそう言った。それに口を尖らせていると、パナメラが眉をハの字にして片手を振る。


「そう警戒するな。ある意味のご褒美だと思え」


「ご褒美?」


 聞き返すと、パナメラは頷いて答える。


「そうだ。ほら、セアト村で少年が陛下にあててイェリネッタの重要な情報を流しただろう? その調査団の代表を、情報を獲得したヴァン子爵に任せる、ということだ」


「え? もしかして、フレイトライナ王子が勝手に自白した例の王家の隠し財宝のこと?」


「そうだ。当たり前だが、すでに王家に関係する者は全て動けないように手配されている。少年は王都まで行って隠された私財を暴き出し、それらを全て陛下の下まで運ぶだけだ。それだけで相当な手柄となり、報奨金ももらえるだろう」


 と、パナメラは羨ましそうに説明してくれた。成り上がりたい者にとってはボーナスステージも良いところ、といった内容らしい。しかし、僕としては面倒臭い作業でしかない。


「えー、王都まで行くんですか? 確か、この街から一か月くらいかかるんじゃ……」


「まぁ、急げば三週間といったところだろう。陛下のご厚意だ。有難く受け取って感謝の手紙でも出しておけ」


「そんな社会人的な気遣い……」


 がっくりと肩を落として溜め息を吐く。それにゼトロス達が眉をひそめていたが、パナメラは肩を揺すって笑っていた。


「良く分からんが、言う通りにしておけよ?」


 と、窘められてしまう。仕方なく首肯しつつ、周りを確認した。今日は最終日になるかもと伝えていたので、ベルもロザリーも出来たばかりの店舗に付きっ切りになってしまっており、この場に来ていない。


「とりあえず、ベルさんとロザリーさんにイェリネッタ王国王都に出店するか確認だけして行きましょうか。はぁ、オルトさん達、付いてきてくれるかなぁ……」


 そう告げると、パナメラは笑顔で頷いた。


「安心しろ。冒険者達には私から追加の報酬を用意すると伝えておこう。伯爵家に貸しが作れるとも言っておけば、まさか断ることはあるまい」


「……いえ、報酬は喜ぶとは思いますが、貴族への貸し云々というのは止めておきましょう。オルトさん達とはそういった貸し借りは関係なく付き合ってきているので……」


 パナメラの提案に異議を唱える。それにパナメラは目を丸くし、すぐに吹き出すように笑った。


「ふ、ははは! 無法者、あらくれ者と揶揄される冒険者達に随分と配慮しているな。しかし、それだからこそ、あれだけ多くの冒険者たちが言う事を聞いているのだろう」


 そう呟くと、パナメラは何度か頷いて口の端を上げた。


「分かった。冒険者達に関しては少年の言う通りにしよう。それと王都には私も付いていくぞ? 構わないな?」


「もちろんです! なんなら、王家の財宝はパナメラさんが見つけたことに……!」


「それは却下だ」


 意地の悪い笑みを浮かべて提案を取り下げられてしまう。なんてことだ。これでは下手をしたら来年、再来年にはまた爵位が上がってしまうかもしれない。そうなると今以上に忙しくなるのではなかろうか。


 将来が不安で仕方がないヴァン君であった。

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