頼もしき援軍【別視点あり】
「ヴァン様、準備が完了しました」
カムシンがそう言って胸を張った。その姿はたまにしか見られないヴァン特製の全身鎧姿だ。まぁ、身体の出来上がっていないカムシンの為に魔獣の革を組み合わせた軽量の全身鎧だが、それでも素材が良いので相当な防御力を発揮するはずだ。
さらに、腰にはミスリルの刀が下げられている。個人的には連射式機械弓を持っていた方が良いのではとも思うが、カムシンは刀を片時も放そうとはしなかった。
一方、ティルは遥か昔に渡したヴァン君特製の斧を物置にしまい込み、抱えるようにして連射式機械弓を持っている。恰好はメイド服のままなので、単純に護身用アイテムといった感じだ。ちなみにヴァン君の作った斧をどうしたのか確認すると、家宝として自室に飾っていると言っていた。実際には自室の押し入れ的な倉庫に死蔵されているのを僕は知っている。
そして、次がアルテだ。アルテはきちんと全力で戦える準備をしていた。得意の傀儡の魔術を生かすべく、二体のウッドブロック製人形を並べて座らせている。その装備は以前と同じくミスリル製であり、武器はハルバードと呼ばれる斧槍だ。
ディーくらいの豪傑でないと振れないような重量級の武器だが、アルテが操作する人形たちは軽々と振り回してくれる。成竜クラスの大型魔獣を相手にしても対等に渡り合うことが出来る最高の戦力である。
ちなみにロウにはかなり前からミスリルと大型魔獣の革を使った鎧や小手、脚甲などを進呈している。結果、ロウも明らかにその辺の騎士団の団長よりも立派な見た目となっていた。そして、その背後には移動式バリスタも搭載した装甲馬車と機械弓部隊の十名が整列して立っている。
そんな素晴らしい仲間たちを見て、大きく頷く。
「うん。これならイェリネッタ王国軍が現れても蹴散らせるね。一か月半の旅程なんて全然怖くないよ」
そう告げると、皆が胸を張って頷き返してくれた。とはいえ、やはり不安はぬぐい切れていない。戦力はその辺の騎士団よりもずっと上だと確信しているが、大軍を相手にすれば数の暴力に圧し潰されるだろう。
不安を見せるわけにもいかず、笑いながら遠くを見る。危ない旅にならないと良いなぁ。
そんなことを思っていると、馬に乗った騎士団員がこちらに向かってきた。
「門番より伝令です! パナメラ子爵が帰還! 間もなくセアト村に到着するそうです!」
「え?」
伝令の言葉に、僕は思わず首を傾げたのだった。
【パナメラ】
「思ったよりもすぐに再会したな、少年!」
馬車から降りてすぐに、見慣れた面々の顔を眺めながらそう告げる。すると、中心に立つ少年、ヴァンが苦笑しながら頷いた。
「そうですね。思ったよりも、ずっと早かったです」
その言葉を聞いて、おや、と思う。
「早かった、か。やはり、少年も敵の動きを予測していたか?」
そう尋ねると、ヴァンは自分の後ろに立つ商人風の男を指し示して口を開いた。
「いえ、アポロさんの情報のお陰ですよ」
答えると、商人風の男が苦笑しながら首を左右に振る。それを横目に見つつ、少年の周りに立つ従者や部下の姿を確認する。その武具や鎧は明らかに激戦を想定した立派なものだ。
「なるほど。どうやら、もう準備もできているようだ。向かう先は?」
「一先ず、フェルティオ侯爵領、領主の居城を目指します。状況確認ですね」
「ふむ、分かりやすい。シンプルな考え方は嫌いではないぞ。ならば、私と私の騎士団も同行しよう。安全な旅を約束するぞ、少年」
笑いながらそう告げると、ヴァンは目を輝かせて微笑んだ。
「本当ですか!? やったぁ!」
と、子供らしく喜ぶヴァン。その珍しい光景に微笑ましい気持ちになっていたが、そのまま眺めているわけにもいかない。
気持ちを切り替えて、ヴァン達を順番に眺めた。
「分かっているだろうが、今はイェリネッタ王国への侵攻作戦の最中だ。フェルティオ侯爵のもとに出来るだけ早く向かい、問題を解決する必要がある。我が騎士団の物資、食料の補充を手伝ってもらいたい。そして、明日の早朝にも出発するとしよう。異存はないな」
「はい、問題ありません。あ、そういえば最近は良い蒸留酒が出来たんですよ。ドワーフの皆さんにも好評でした」
「おお! それは楽しみだな! よし、荷台に積み込む前に味見だ、味見」
そんなやり取りをして笑い、領主の館へ案内してもらう。酒も楽しみだが、先に大浴場だ。セアト村を知ってしまってから、王族でも入れないような大浴場の魅力に取り憑かれてしまった。あの広々とした開放的な空間でゆったり湯に身を沈めるのは何事にも代えがたい快楽である。
そっとヴァンの近くに立つアルテに歩み寄り、頭に手をおいて柔らかい髪をなでる。
「よし、アルテ嬢! 一緒に大浴場で湯を楽しむとしようか!」
「は、はい……えっ!?」
突然話を振られて驚くアルテに笑いながら、平和なセアト村の風景を楽しむ。やはり、この村は良い村だ。もし自分が領地を得たら、こんな雰囲気にしたいものである。
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