大要塞建設計画!
イェリネッタ王国の国境を守る要塞の規模を拡大し、ウルフスブルグ山脈の入口の丘までを城壁で囲む。ウルフスブルグ山脈内に足を踏み入れるような構造の建築物はこれまで存在しなかったため、類を見ない大要塞となるだろう。
そんな構想を描いて、期待に胸を膨らませながら朝を迎えた。小さいながらも檜風のお風呂でさっぱりして、魔獣の毛皮を加工して作ったお布団で寝ることが出来たため、とても気分の良い目覚めである。
「天守閣の朝!」
襖と外側の戸板を開けて外廊下へ飛び出る。どうやら思っていた以上に興奮していたらしい。まだ朝日が顔を出して間もない頃といった景色だった。地平線の方は明るくなっているが、目線より上はまだ薄暗く、上にいけばいくほど青が深まっているように見える。
「天守閣からの夜明け!」
言い直してから、僕は腰に手を当てて胸を張り、朝の新鮮な空気を吸い込む。少し冷たい空気に肩を震わせつつ、口を開く。
「絶景かなー!」
テンションマックスで叫んでいると、後ろの方でひそひそと話す声が聞こえてきた。
「……何をしていらっしゃるのでしょう?」
「ヴァン様が自ら周囲の安全を確認してくださったに違いありません」
「え、そうなんですか? うーん……面白い物を見つけた時のヴァン様にしか見えませんが……」
まだ寝間着を着たままのアルテ、カムシン、ティルが僕のことを話しているようだ。このままではお殿様がご乱心したと思われてしまう。
そう思い、咳払いをしながら振り返った。
「おほん……カムシンの言う通り、敵や魔獣の姿が無いことを確認して、とても平和な景色で良いですねー、という意味のことを口にしました。変な誤解はしないように」
そう説明すると、アルテとティルは苦笑しながら頷き、カムシンは「おお!」と感嘆の声を上げながら目を輝かせる。僕は純粋で素直なカムシンが大好きである。
その後、天守閣内を仕切ったそれぞれの寝室に戻り、さっさと着替えて準備を整える。そして、ちょっと早いけど朝食にしようかなどと話しながら、下の階に移動を始めた。
「階段が急過ぎたかな」
「確かに、少し上り下りが大変ですね」
「……メイドの私としては、食事をお持ちすることを考えたら……」
「え? でも面白いですよ?」
四人でわいわい話しながら各階を移動していると、騎士達は多くがきちんとした格好でウロついていた。見張りの交代もあるだろうが、やはり何時呼ばれても良いように準備しているのだろう。素晴らしいことである。
騎士がこちらに気が付く度に挨拶をしてくるので、会釈しながら愛想を振りまいておく。
「おはようございます!」
「お、おはようございます!」
僕が丁寧に挨拶すると、殆どの人が面食らったように直立不動になってしまう。準備途中だと迷惑になるかもしれないから、目立たないように長廊下の端っこを移動することにした。
かなり歩いて、ようやく石垣上の外廊下まで辿り着いた。中庭もあるため、そこでは既にどこかの騎士団が武器や防具の手入れなどを行っていた。また、外廊下の壁に沿って歩きながら周囲の見回りをしている者もいる。
各騎士団で役割を決めているのかもしれない。貴族連中はちょっとダメなおじさんっぽい感じだったのだが、その騎士団はしっかりした人が多そうだ。
そんなことを思いながら皆の様子を眺める。
昨晩は、新築の城に泊まれる人数に限りがあったため、城に入れなかった人はウルフスブルグ山脈に作った砦に泊まっていた。一週間もすれば城塞都市らしくなるはずなので、その時には皆が新築の綺麗な建物の中で寝泊まりできることだろう。
そこまで考えて、一つの問題に気が付いた。
「あ、そもそも、城塞都市が完成したら殆どが元の領地に帰っちゃうのか」
残るのはセアト村騎士団と一部の冒険者のみである。こちらもある程度出来上がったらセアト村に戻るため、最終的にはこの要塞都市に誰も住まないという状況になってしまうのではないか。
「……あれ? これって、僕がどうするか決めるんだっけ?」
石垣の上から建築途中の城壁や櫓を見下ろしながら、独り言を呟く。
「何かありましたか?」
どうしたものかと思っていると、アルテが顔を覗き込むようにして口を開いた。
「うん、ちょっとね。この城塞都市、最終的には物凄く大きくなるけど……住む人がいないなって思って」
そう答えると、アルテは目を瞬かせる。
「……そういえば」
「え? 住む人がいないんですか?」
「多分、騎士団も一万人くらい常駐できますよ?」
近くで聞いていたティルとカムシンも驚きの声を上げた。これは、セアト村から有志を募る必要があるのかもしれない。
しかし、物流などは今のところセアト村と比べるのも悲しくなるほど整っていない。何なら調味料すら一週間から二週間かけて届けてもらう必要がある。ここから発注をしてという意味なら、一ヶ月は必要となるだろう。
「……これは、大問題だ」
僕がそう口にすると、アルテ達が深く頷いたのだった。
なんと! 次にくるライトノベル大賞2022!
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読んで下さった皆様のお陰です!
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