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お気楽領主の楽しい領地防衛 〜生産系魔術で名もなき村を最強の城塞都市に〜  作者: 赤池宗


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強硬手段

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 静かな深夜の山の中、かりかりといった木で木を擦るような物音が聞こえる。不気味なその音に別の意味で恐怖を感じた。


 それは別室の者も同じだろう。


「……カムシン。ティルとアルテは寝てるかな?」


「もう何分も音が続いています。多分、起きているかと……」


 カムシンはそう答えて、出入り口の方へゆっくりと移動を始めた。今回作った拠点は平屋で地下も二階もない。正面にリビングがあり、左右に一つずつ寝室という形だ。


 いくつも拠点を作った結果、休むだけならこれが一番楽だった。ちなみに、陛下用の拠点は近衛兵が待機する部屋があり、その奥に寝室という間取りである。寝室も待機部屋もかなり広めに作ったが、中々良い評価を受けた。


 と、いうことで、拠点内は休むことに特化した間取りである。逆立ちしても防衛拠点としては使えない。


 それを理解しているカムシンが時間を掛けて慎重に寝室のドアを開ける。全く物音を立てないのは流石である。まるで盗みのプロのように見事な動きで寝室から出ていくカムシン。


 その後ろ姿を見つめていると、まるでタイミングを見計らったかのように出入口の扉から激しい音がした。まるで扉を蹴り破ろうとしているかのような轟音に、細心の注意を払って移動していたカムシンの背が跳ねる。


「……っ!?」


 声にならない声を上げて、カムシンはその場で固まった。だが、その間にも扉を無理やりこじ開けようとする音が響いてくる。


「鍵、開けられないよね?」


 扉は内側から閂による施錠をしている。それも全てウッドブロック製だ。簡単には壊せないと思うのだが。


 そんなことを思って眺めていると、扉の隙間から黒っぽい棒が現れた。そして、閂である棒状のウッドブロックを上に持ち上げてしまう。


「え? なにあれ。ズルじゃない?」


 思わず突っ込んでしまった。こんなことなら横に動かす形式での閂にすれば良かったか。


 と、今更そんなことを考えても仕方が無い。そうこうしている内に、扉はいとも簡単に開けられてしまったのだ。


「ヴァン様、寝室から出ないで下さい」


 カムシンはこちらも見ずにそれだけ言って、剣を構えなおした。拠点内に入ってきた瞬間に斬り込むつもりなのかもしれない。膝を僅かに折り曲げ、姿勢を低くしている。剣の柄を握る手に力が込められているのを見て、思わず僕の手にも力が入ってしまう。


 だが、カムシンが動こうとした次の瞬間、出入口で爆発音にも似た轟音が鳴り響いた。室内で音が反響し、耳が痛む。


 何が起きたのかを把握したいところだが、出入り口まで行かないと様子は分からないだろう。姿勢を低くしたカムシンのすぐ後ろまでいけば見えるだろうか。


 そう思ってカムシンの顔を見ると、何故か苦笑にも似た表情を浮かべていた。そして、こちらを振り返る。


「やはり起きていらっしゃいましたね、アルテ様」


「え? アルテ?」


 カムシンの言葉を聞いて無意識に出入口へと向かった。顔を出すようにして外を見ると、アルテの操る一対の銀騎士(アヴェンタドール)が出入口を挟むようにして並んでいた。


「な、な、なんだ……!?」


 誰かの叫び声が外から聞こえて、次に遠くから怒鳴るような声が響いてくる。


「なんだ貴様ら!?」


「すぐに捕縛しろ!」


 そんな声の後に、すぐに激しく争う音が聞こえてきた。金属の打ち合うような音は静かな夜によく響く。


「ヴァン様、ご無事ですか?」


 外が騒がしくなってから、ティルとアルテが周りを警戒しながら近付いてきた。アルテの側にはミスリルの甲冑を着た人形が付き従っている。


「大丈夫だよ。ありがとう」


 返事をして、双剣を鞘に納める。嬉しいやら悲しいやら……今最も頼りになるのはアルテだった。


「僕ももうちょっと鍛えようかな」


 ディーによる訓練の時間を増やそうか。そんなことを思いながら小さくそう呟く。すると、カムシンがまじめな顔で頷いた。


「ご一緒します」


 カムシンの言葉に苦笑して頷く。こちらは冗談では無さそうだ。


 そうこうしている内に、外からどやどやと騒がしい声が聞こえてきた。


「ヴァン様! ご無事ですか!?」


 現れたのはディーである。額に玉の汗を作って顔を出したディーに、片手を振って返事をした。


「大丈夫だよ。侵入者は捕まえた?」


 尋ねると、ディーは苦虫を嚙み潰したような表情で顎を引く。


「どこぞの騎士団が手引きしたようです。残念ながら、取り逃がしました。ただ、見当はついております」


 地の底から響くようなドスの利いた声に、僕の方が怖くなってしまう。よほど取り逃がしたことが悔しいのだろう。乾いた声で笑いながら、首を左右に振る。


「仕方ないよ。ディーには行軍の補助を頼んでたから、傍にいなかったしね。それにしても良くこんなに早く来られたね」


「一人で行軍の列を抜いて参りました」


 そう言って、ディーはにやりと笑う。


「ありがとう。やっぱりディーは頼りになるね」


「わっはっは! 次は怪しい輩ごとき叩きのめしてみせますぞ!」


 礼を述べると、ディーは胸を張って笑った。それに愛想笑いを返しつつ、ディーが隊列を無視して通過したであろう騎士団たちのことを想像する。


「……後で、謝っておこうかな」


 苦情が他の貴族から上がるであろうことを想像して、僕は苦笑しながらそんなことをつぶやいた。





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デコードしてくださった方、ありがとうございます(=´∀`)人(´∀`=)

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