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お気楽領主の楽しい領地防衛 〜生産系魔術で名もなき村を最強の城塞都市に〜  作者: 赤池宗


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ヴァン土建株式会社

「木だ! 木を切れぃ!」


「運べ、運べーっ!」


「魔物への警戒を緩めるな! 邪魔をさせるでないぞ!」


「おい! そこの者! もっと丁寧に雑草を刈れ!」


 多数の騎士たちの怒鳴り声が響く中、僕はせっせとウッドブロックを道に敷き詰めていた。


 大いに人員が増えたお陰で、王国軍に合流する時よりも早く僕は山道を舗装していく。なにせ、馬車が進む速度より早く進む先に木々が運び込まれているのだ。僕は絶えず柔らかウッドブロックを作って道の形状に合わせて固めるのみだ。


 凄い速度で道が綺麗に整っていくため、僕が休むよりも先に木々を切り倒したり運んだりしている兵士達の方がギブアップして交代していく。


 あっという間に半日の舗装作業が終わり、食事休憩を取る。タイミング的に今日はここまでといったところか。


 そう思ってティルから冷たい飲み物を受け取って一服していると、後方からパナメラを連れた陛下が現れる。


「おお! 瞬く間にこれだけの街道を作るとは……!」


 陛下が感嘆の声を上げて現れると、汗だくで休憩していた兵士たちが慌てて地面に跪き、首を垂れる。勿論、僕やティルも同様だ。


「ヴァン男爵。顔を上げよ」


「はい」


 返事をして陛下を見ると、物凄くご満悦といった顔が目に入った。陛下は両手を広げて、出来たばかりのウッドブロック製街道を見回す。


「素晴らしい! 男爵の魔術の有用性は十二分に把握していたつもりだったが、まだまだ足りなかった! まさか、馬車が進むのと同じ速度で道が敷かれていくとは……男爵の魔力量次第だが、これが出来るなら今まで攻略出来なかった要塞も攻め落とすことが出来よう! なにせ、山や森、河川も関係なく大軍勢が行軍可能なのだ! これまでの戦争の常識を変えるぞ!」


 興奮冷めやらぬ様子の陛下の言葉に、兵士たちも驚きの声を上げた。そこへ、パナメラが頷きながら口を開く。


「仰るとおりです。また、この険しい山中の行軍を安全に行えたのは冒険者たちの働きも大きいでしょう。魔獣を事前に見つけ出すあの嗅覚は騎士団にはありません。あの優れた技能を、騎士団でも取り入れた方が良いかと思われます」


「うむ! 冒険者たちか! 想像していたよりもずっと有能な者たちであったな。少々揉め事を起こしてしまってはいるが、その功績は忘れておらんぞ」


 パナメラの言葉に陛下は小さく頷きながらそんなことを言った。冒険者たちへの評価は有難いが、陛下の中でもまだ今回の仮設拠点の件は犯人が誰か決めかねているようである。まぁ、一方的に貴族の味方をしていないのだから、かなり公平な判断だろう。


 とはいえ、このままでは僕としても気分が良くない。


「……色々考えていたらダメだな。よし、今日はゆっくり休んで、気持ちを切り替えよう」


 小さく呟くと、陛下が耳聡く「おお」と返事をしてきた。


「うむうむ。これだけ長い時間魔術を使いっぱなしだったのだ。もう限界だろう。ゆっくり休み、明日に備えてくれ」


 にっこにこの陛下にそう言われて、ホッとしながら顎を引く。死ぬ気で街道を作れと言われなくて良かった。


「はい。それでは、どうせですので皆が休めるよう拠点を作りましょう。カムシン。残った木材を持ってきて」


「はい!」


 そう言って準備をし始めると、陛下が目を瞬かせて口を開く。


「なんと、まだコンテナを作れるほど魔力が残っていたのか」


 そんなことを呟く陛下に、思わず笑みが零れる。ちょっと驚かしてやろう。


「ヴァン様! 木材の準備が出来ました!」


「おお、いっぱいだね。まだこんなに残ってたのか」


 カムシンの報告を聞いてそちらを見ると、舗装された道の端に山のように伐採された木々が積まれていた。笑いつつ、山の斜面や道の続く先を確認する。ちょうど良いことに斜面はなだらかであり、道の部分も比較的広い区間である。


「よし。それじゃあ、頑張って士官以上が休めるようなものにしようか」


 そう呟くと、頭の中で形状を考える。ダンジョン前に作った休憩所のような建物が良いか。どうせだから、最上階は背を高くしてこの辺りを見渡せるようにしてみよう。細長くなると不安だから、部屋を一つずつ広くして壁の数を減らすか。


 そんなことを考えながら、木材に手を触れて魔力を込める。山の形状に沿って四角錐に似た形の建物を作り上げていく。もうすでに山中深くにいるため、強力な魔獣を相手に出来るように壁はかなり頑丈にしている。


 そして、壁面に取っ掛かりとなる部分を作らないようにするため、まるで古いSF映画の建造物みたいなデザインになってしまった。地中に埋もれたピラミッドのようにも見える。


 ただし、サイズは巨大だ。内部を大雑把に区切っただけなので、中はあまり凝ったことは出来なかった。いずれ面白おかしく作り直すとしよう。


「……よし! 陛下、今日はここで休むとしましょう。正面の一か所のみに大き目の扉を設けてますが、他に侵入される場所はありません。安心してお休みください」


 ふり向いて建物の説明をする。しかし、陛下は出来たばかりの拠点を見上げて目と口を丸くしていた。そして、隣に立つパナメラは腕を組んで僕を見下ろし、口を開く。


「……少年。やり過ぎだ」




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デコードしてくださった方、ありがとうございます(=´∀`)人(´∀`=)


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