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お気楽領主の楽しい領地防衛 〜生産系魔術で名もなき村を最強の城塞都市に〜  作者: 赤池宗


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【別視点】問題は大きくなる

【ディーノ国王】


 冒険者と騎士が衝突し、行軍が停止したと報告が入った。ちょうどヴァン男爵の作ったコンテナという拠点で休んでいた所だったが、仕方が無い。


「そういうことも予想はしていたが、行軍が止まるのは困ったものだ。それで、どこの騎士団が冒険者と揉めている」


 報告に来た千人長に確認する。一般市民から騎士試験を受けて騎士となり、誰よりも隊列や戦術、陣法などを学んで指揮官となった生真面目な男だ。一般の民から千人長にまで成り上がった例は少ない。その真面目さから、きちんと中立の立場で客観的な報告をしてくれるだろう。


 騎士は同僚である騎士の肩を持つものだからな。


 そう思って報告を待っていると、千人長はいつもよりも更に眉間に皺を寄せて口を開いた。


「エーゴ・イースタン男爵の騎士団です。その内十名ほどが冒険者と揉めている状況です」


「ふむ。怪我人は出ていないか?」


「多数出ています。あまり広くない空間で乱闘になってしまったようで、現在は五十名以上が治療中となっております」


 淡々と、千人長が報告をする。それに思わず片手を挙げた。


「ちょっと待て。五十名だと? まさかとは思うが、冒険者を殺したりはしていないだろうな。よほど相手が手強かったとしても、騎士十名が戦って何故そのような怪我人が出る?」


 理解出来ずに聞き返す。たとえ、イースタン男爵家の騎士団の練度が低くても、常に戦闘訓練を繰り返している筈だ。それこそ複数での対人戦において、騎士と冒険者では大きな差が生じる。騎士と戦って真っ向勝負できる冒険者は上位の者たちばかりだろう。


 しかし、千人長は首を左右に振った。


「残念ながら、怪我人は全てイースタン騎士団の騎士と従者です。戦った冒険者三名はいずれも目立った外傷も無く、現在は拠点の一室で待機しております」


「……騎士と従者五十名が一方的にやられた、ということか? まさか、冒険者の中に一流の四元素魔術師がいたのか?」


 思わず、声が固くなる。イースタン騎士団があまりにも弱かったのか。それとも、その冒険者三名が異常に強かったのか。どちらにしても、由々しき事態である。騎士団の統率力や強靭さこそが国防の要であり、結果として各都市の治安に繋がるのだ。


 それが一介の冒険者などに比べて劣っていたら大きな問題だ。


 それらを考えていたせいか、問い詰めるような口調になってしまった。千人長も釣られるように厳しい表情になり顎を引く。


「それなりに使える風の魔術師がいたようですが、魔術は対象の動きを止めるような使い方しかしていなかったようです。問題は他の二人が使う武器の方でしょう」


「武器?」


 首を傾げると、千人長はマントの下から切断された鉄の剣を取り出した。広く一般的に使用されている直剣だ。厚みがあり、簡単には折れない代物である。


 だが、その剣は綺麗に真っ二つになっていた。


「……竜種とでも戦う大型の剣と打ち合ったのか?」


 半ば答えが分かっていて尋ねたが、千人長は首を左右に振る。


「いいえ、普通のサイズの剣です。むしろ、細身のため軽量な類かと。冒険者達の技量も正直いって並みの騎士では勝てない力量でしたが、何よりもこの武器の恐るべき切れ味が敗因でした。剣を打ち合えば一方的に武器を破壊され、盾や鎧も関係なく斬り裂かれます。冒険者たちが手加減して峰打ちで相手をしてくれなかったら、五十人全員が死んでいたことでしょう」


「……ヴァン男爵の武器、か。宝剣として仕舞い込む予定だったため切れ味は確認していなかったが、この武器がそれほどとは、な」


 そう言って腰に差したオリハルコンの剣を抜く。それに千人長は目を剥いた。


「その、見事な剣が、あの子供の作ったものですか」


「そうだ。目の前で作ってもらった」


 言いながら剣を構えて、近くに置いておいた盾に斬りつける。甲高い金属音と、続けて切り落とされた盾の一部が落下する音が鳴り響く。


 唖然とする千人長。私も同じような表情をしていたことだろう。


「まるで青銅の武器しか無かった頃に鉄の剣が現れたような衝撃だな。いや、青銅とミスリルくらいの違いはあるか」


 呆れたようにそう呟き、改めて自らが持つ剣を見た。相変わらず見事な出来だ。刃の部分は刃こぼれ一つしていない。


「なるほど。大型の魔獣の討伐が幾度も成された理由がよく分かった。ヴァン男爵の騎士団はこれと同等の武器を持っているということか。末恐ろしいな」


 行軍が止まってしまったことは大きな問題だが、驚異的なまでのヴァンの武器の性能を改めて知ることが出来て、思わず口元に笑みが浮かんでしまう。


「……陛下。処罰はいかがしましょう」


「む」


 そう言われて、私は気持ちを切り替える。騎士爵は最下層ながら貴族の一端である。また、騎士は男爵以上の貴族の配下であり、権威の象徴でもある。処罰無しというわけにはいかないだろう。


 だが、冒険者はセアト村を拠点としており、ヴァンと仲が良い者もいるようだ。


 悩ましいところである。これは、明確な理由がない限り簡単には決定出来ない問題だ。


「……それで、肝心の衝突した理由について聞かせてくれ」


 確認すると、千人長は眉間に深い皺を作った。どうやら言い辛い内容のようだ。


「早く答えよ。別に貴様に怒りはしない」


 溜め息混じりにそう告げると、千人長は咳払いをしてから口を開いた。


「騎士達の言い分は、ヴァン男爵の作ったこの拠点が欠陥品だと口にしたところ、冒険者たちが突然襲い掛かってきたというものでした」


「……なに? この拠点が欠陥品だと?」


 そう言ってから、思わず中を見回してしまう。しかし、見た限り問題があるようには見えない。


「この拠点は先頭を行くベンチュリー伯爵の騎士団が組み立て状況の確認をしている筈だ。冒険者たちが組み立てをした後、すぐにそれは実行されている。もし本当に欠陥品だったとしたら、それを発見出来なかったベンチュリー伯爵騎士団にも責任が生じるな」


 眉根を寄せてそう告げる。それに千人長は浅く頷いた。


「なるほど。しかし、陛下が休む可能性があるのに、問題がある拠点を提供したヴァン男爵にも責任が発生するのではないでしょうか。このような斬新な拠点を作り出し、さらに長い行軍道程用にこれだけの数を準備したのは素晴らしい功績ですが、もし勝手に崩れてしまうようなものを提供したとしたら……」


「厳罰であろうな」


 答えを先取りして口にすると、千人長は口を噤んだ。言い辛い内容はこれか。確かに、このコンテナと呼ばれる拠点が使えなくなるとなったら、士気に大きく影響が出る。更に行軍予定にも問題が生じ、携帯食料も足りなくなる可能性が出てくる。


「慎重に調査する。また、早馬を使いヴァン男爵にここに来るように伝えよ」


「はっ!」






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