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お気楽領主の楽しい領地防衛 〜生産系魔術で名もなき村を最強の城塞都市に〜  作者: 赤池宗


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ドワーフの知恵

いよいよ!

お気楽領主の書籍版2巻、コミカライズ版1巻が発売です!

それぞれにオリジナルの番外編あります!

是非チェックしてみてください!






 モジャモジャの黒髪と伸ばしっぱなしの髭、そして小人のように低い身長。これが一般的なドワーフのイメージだろう。さらに、男は骨太筋肉質で女は少女のような見た目、という印象も付いてくるかもしれない。


 だが、それよりも印象深い特徴といえば、やはり鍛冶の技能であろう。


 ドワーフは土の民とも呼ばれており、採掘を最も得意としていた。諸説あるが、単純にその見た目から差別や迫害を受けて山々の方へ追いやられた、という話もある。そのせいかは分からないが、確かにドワーフは閉鎖的で同族ばかりを信用する性分らしい。


 また、美しいからと狙われたエルフや、労働力として優れているとして奴隷にされた獣人などは数の多い人間に捕まらないように、森に逃げて独自の文化を築いたとも言われている。


 そんな生い立ちの違いから、エルフや獣人はあまり争うことはなく、ドワーフは他の種族と仲良く出来ないとのこと。


 そんな大昔の問題が今も本当に根深く残っているものだろうかとも思うが、実際にその関係性は事実らしい。


 そういった文化背景もあり、平地からも森からも遠ざかったドワーフは山の中、穴を掘って生活圏を作り上げた。だが、この世界の常識として平地より森、森より山の方が強靭な魔獣が現れる。


 ドワーフはそんな環境だから、必然的に優れた武器をなによりも求めたとされた。


 そのドワーフ達を目前にして、ランゴは興奮気味に歩み寄っていく。


「あ、あなた達が酒の神(バッカス)ですか?」


 ランゴが声をかけると、ドワーフ達が警戒するような目で睨んできた。


「……なんだぁ、兄ちゃん?」


「そうだって言ったら、どうなんだよ」


 ガラの悪い中年みたいなノリの話し方である。それに対して、ランゴは鼻息荒く更に距離を詰める。ベテランの変態のようなノリである。髭もじゃのドワーフ達もウッと引くレベルだ。


「あなた達の知識、知恵を拝借したい! この街にはまだ鍛冶を出来る環境がないのです! 何とか、ドワーフの炉の作り方を教えていただきたい……!」


 深々と頭を下げて懇願するランゴに、ドワーフ達は顔を見合わせた。


 そして、一番手前に立っていたドワーフが口を開く。


「……俺たちはドワーフの国のために旅をしてんだ。鍛冶も出来ねぇ街ってのには同情するが、こっちも時間がねぇんだよ」


 深刻そうにそう言ったドワーフに、ランゴも顔を上げる。


「な、何があったんですか? 何か出来ることなら、我々も力になります! なので、炉の作り方を……!」


「わ、分かったから! もうそれ以上は近づくな!」


 熱意に負けたのか、それとも怖かったのか。詰め寄るランゴに悲鳴を上げながら後ずさる。


 そして、ランゴが近付いてこないことを確認し、ドワーフは理由を話した。


「お前らなんぞに言っても仕方ないけどよ……ドワーフ王のために必要な素材が揃わねぇんだよ。もうすぐ、現ドワーフ王が寿命を迎えるだろう。その時に、必ず跡継ぎのためにオリハルコンの武具を一つ作らないといけねぇ。だが、ここ二十年ばかり、どこを探してもオリハルコンは見つからねぇ」


 一人がそう言うと、他のドワーフ達も肩を落として頷く。


「鉱山はもちろん、火山や森にも無い。たまに人間の国で高値で取引されることがあるというから、各国に仲間達が探しに行ったが、それでも見つからねぇ」


「どの国も王族が必要としてるって言うからな。うちと一緒で、次の王が就任する時に使おうと思って隠してるに違いないんだ」


 悲しそうに呟くドワーフ達に、周りで見ていた者達も眉根を寄せた。


 そんな中、ランゴは目を輝かせてこちらを見る。


「ヴァン様! オリハルコンですよ! オリハルコン! それさえあれば、炉も作れます!」


 興奮するランゴに、ドワーフ達が呆れたように溜め息を吐く。


「……今の話を聞いていたか? そのオリハルコンが見つからないって言ってんだよ」


 そう言うドワーフに振り返り、ランゴは悪戯坊主のような笑みを浮かべた。


「ふっふっふ! それがあるんですよ、ヴァン様秘蔵のオリハルコン鉱石が! ねぇ、ヴァン様!?」


 と、ランゴが今度はこちらを振り返る。


「ランゴ副商会長……いつもと……」


「いつもと違うね……」


 なんとなく付いてきていたのか、商人見習いの人たちがテンション最高潮のランゴを見て若干引いている。その様子を一瞥しつつ、僕は乾いた笑い声を発した。


「は、はは……ごめん。最後のオリハルコン鉱石、使っちゃった」


 そう言って、僕は腰に下げていた二本の剣を取り出す。


 戦争から戻ってすぐに護身用に作った双剣である。反りは少なくて幅が広い、少し装飾過多な片刃の剣だ。厚みの無いシミターやファルシオンといった感じだろうか。


 オリハルコンの特性を活かして薄い刃でありながら硬くて曲がらず、更に切れ味も簡単には落ちないという素晴らしい代物である。


 装飾以外ではこれまで作ったどの剣よりも性能は上だ。


 しかし、先程の話を聞く限り、親が子に遺産を残すように、王が王子のためにオリハルコンの武器を作らねばならないのだろう。


 どうしよう。もう武器出来ちゃってるけど。


 僕は途方に暮れつつランゴを見たが、向こうも同じような顔でこちらを見ていた。


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