054 こいつら、直接脳内に…!
二回戦が始まる直前、徐福が私の脳内に直接話しかけてきた。
樹木か死体みたいな見た目のくせして、念話が使えるとは意外と器用なんだな。
『おい、少年。わざと空振りしたら、お前も不老不死にしてやるぞ』
それは普通ならば悪魔の囁きだ。”ふつう”ならば、な。
お前たちのように枯れ果てるほど生きてはいないが、こっちだって肉体を持ったままでの、正真正銘の不老不死だったのだ。
だいたい呪いに困って転生したというのに、何が悲しくていまさら不老不死に戻らなければならないというのか。
「悪いな、私は太く短く生きるのだ」
カタナを受け取り、ぶんぶんと素振りをしながら、きっぱりと断る。
『少しは考えんか。さっきから怪しい術を使いよるし、わしの仲間みたいなもんじゃろう』
もー、いいところなんだから邪魔するなよう。
「なに言ってるの、師匠? 早く続きやろーよ」
ときわが急かす。
「ふふん、残念だが、ときわの番は回ってこないぞ」
自信満々に言い放ち、目隠しを付ける。
同じ轍は踏まん。蛍の教訓を生かし、マナをコントロールする。
『こらジジイ、人の男に勝手に話しかけるな』
『やかましいわ、いつお前の男になったんじゃ』
じゃあ、いっくよー!
ときわのかわいらしい声がして、背中に乗せられた柔らかい手が離れる。
くるくるー、くるくるくるー。
『すべての男はわらわのものじゃ。だいたい協力するという時点で、すでにわらわの虜ではないか』
『何を言っとる。すべての男がぽっちゃり系が好きだと思ったら大間違いじゃ』
「いいよー、それいけまっすたー!」
「青海ー、最初からずれてるよー、もっと右!」
『だいたいお前が――』
『わらわは別に――』
あーだの、こーだの。ぎゃーぎゃー。
――ぷっつんと、堪忍袋の緒が切れる。
私は目隠しをずらし、二人の幽霊に向かって叫んだ。
「ええい、うるさいぞ、そこのばか幽霊二人ー!」
……あれ?
私の目に映ったのは、きょとんとしたような驚いたような顔の、蛍とときわと、そして楊貴妃。
「ねー、うまく言ったでしょー?」
「器用じゃのう、おぬし。念話の中で声真似とか、よく考えるわ」
手を口元に当て、意地悪くダグザが笑い声をあげる。おほほほーとか、お前はどこのお嬢様だ。
「もー青海、途中で目隠し取ったらだめじゃない」
蛍は優しく私の頭をポンポンと叩くと、手からするりと目隠しを引き抜く。そして、それをときわに手渡した。
「はい、交代。これでときわが割ったら、私たちの負けね」
あれ?
あの、私はまだ振ってもいないんだけど。
「あはは、ごめんね、師匠。勝負だから仕方ないね。私が外したら、もう一回やっていいからね」
慰めるようにときわは言った。
……ふんだ、悔しくなんてないもん。




