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052 21世紀の魔術師のやり方


 私たちは楊貴妃という女の手伝いで、とある老人を探して砂浜を歩いていた。

 より正確に言うと、目当ては老人が持つ霊薬。なんでも美人の元らしい。興味がないふりをしつつ、しっかりと必要な部分は聞き出しておく。


 どうやら老人の持つ霊薬には不死の魔力が込められているらしいのだが、鍵を持っているのはこの女のほうらしい。

 封印を解くために、お互い相手の持つアイテムを狙い、長い間争い合っているという。


 不死というのはさすがに誇張だろうけど、きっと若さを長く保てる。そして栄養価も高い。うん、栄養がないと胸も大きくならないし。

 転生に失敗した私にとって、まさに渡りに船だ。正体もわからず飛びつくようなうかつなことはしないけれど、これは大いに期待できるのではないだろうか。


 あの蛍ですら、美人だの誘惑だのという言葉に、結構乗り気だった。こいつめ、もしかして惚れた男でもできたのか? 誰だ?


 もちろんただというわけではない。

「わらわの手伝いをすれば、霊薬を少しわけてやってもよいぞ」


 ふむ、悪い取引ではない。少しでいいのだ、現物があれば、だいたいの霊薬は私が再調合してみせるさ。




 ということで砂浜を歩いていると、ときわたちを発見した。

 朽ちた樹皮(トレント)のような顔の老人と一緒だった。


「あ、ときわ。どこ行ってたんだ? 探してたんだぞ」

「ああ、師匠(マスター)。実はですねー」


 ん? 後ろから妙に殺気だった視線を感じる。


「こいつよ、このジジイよ! さあ、早く私の霊薬を返しなさい! この男たちをけしかけるわよ!」

「うるさいわ、この英知の塊である薬瓶の秘密もわからんアホめ! さっさと鍵をよこさんかい」


 ……。


「はぁ、どうせこういうことだと思ったわ。とりあえず、目立たないようなところでやりましょう」

 蛍の提案。私たちに異論はない。

 ぎゃあぎゃあとわめく二人の幽霊を連れて、私たちは人目の少ない砂浜の端へと移動した。




「さあ、ここならいいじゃろ。お前たち、契約通り奴らを滅ぼせ!」

 偉そうに言う徐福を、ときわがぽかりと殴りつけた。


「だめだ、友達だぞ。ケンカはよくない」

 あいつめ、友達以外には意外と容赦ないのな。私はときわの新たな一面を見つけた。


「じゃあ、どうやって鍵を奪えというのじゃ」

「それはわらわのセリフじゃ。だいたい幽霊のくせに不死になりたいとか、ちゃんちゃらおかしいわ。そのまま砂浜にでも埋まっておけばよかろう」

「なんじゃと?」

「なんですのよ?」


 こいつらに任せておいても話が進まんな。そう思った私は、一つの提案をする。


「わかった、ようは後腐れなく勝負がつけばいいんだろ?」

「まあそうだが」

「じゃ、スイカわりで勝負だ!」

「「「はあ?」」」


 ……幽霊だけでなく、蛍たちまでそんな顔で見なくても。ひどい。


「あらー。いいじゃない、スイカわり。おいしいわよ、スイカ」

 唯一の味方は、油谷せんせーだった。


 いいじゃんいいじゃん、スイカわり!

 いろんな書物にも載ってる、伝統的な勝負じゃん! 一度でいいから、やってみたいんだよう。


 まあたしかに、ケンカしてケガするよりはいいけどさー。

 しかし、それって勝負というか遊びじゃないのか?

 単に自分がやりたいだけなのよ、きっと。

 戸惑いの声が聞こえてきたが、私は無視して押し切った。


「そこの幽霊二人、これが嫌なら私たちは協力するのはやめるぞ。霊薬と鍵をかけてスイカ割り、恨みっこなしの一発勝負だ。いいな?」



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