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東方転犬録  作者: レティウス
娘が頑張る妖々夢
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STAGE8

「す、すげぇな」


「( `д´) ケッ!」


「これは……掃除が大変そうですね」


 霊夢さんたちを伴って、やってきた八雲家の玄関にて、皆さんが呆けた顔をしています。実にこっけ……もとい、面白い顔をしていますね。


「さぁ、入りましょう」


 門を開けて中に入ると、皆さんもなにやらふらふらとつき従う感じでついてきます。


「なんか、やたらとよさそうな物が一杯あるんだが」


「持っていっても問題ありませんよ」


「マジか!?」


「そんなわけあるか!」


 其処ら彼処にある調度品に目を奪われている魔理沙さんに、持っていってもいいと教えたら、何やら藍さんが憤慨しています。


「おや?マヨヒガに訪れた者の権利を忘れたんですか?」


「うぐっ、だがしかし……」


「どうせ、紫さんがそこら辺から頂戴した物ばかりじゃないですか」


「そうなのだが……しかし……」


「往生際が悪いですよ」


 私の台詞にがっくりと項垂れる藍さん。その様子を見ていた、霊夢さんや魔理沙さんがこれ幸いと次々と物品を袋に詰めていく。


 まぁ、私はいりませんが。それにどうせ、この後に異変の犯人の元にいくし、その間に壊れるでしょうが。それはこの二人の責任ということで。


「貴女はいいんですか?」


「邪魔だから」


 ふむ、賢い選択ですね。まぁ、あの姉妹の屋敷は何だかんだでここにある調度品に引けを取らないものぐらいは揃えているんでしょう。見栄ですね。


「さてと」


 やってきたのは、一際大きい部屋の前。沢山の襖で閉じられている大部屋の前です。


 前にお父様が家を大きくしようとする玲央様達を止めようとしたのが、今になってなんとなく理解できますね。


 こんなでかい部屋で寝ても落ち着かないでしょうに。まぁ、侵入者などから身を守るという意味ではいいのかもしれませんが……


 しかし、それに関してはお父様も私も、あとりさんも問題がありませんからねぇ……


 気配察知できますし、お父様の結界もありますし、あとりさんに関しては、家に異変が起こればすぐに察知できる種族ですし。


「うわぁ」


「何これ。ぷっ」


「笑ったら、失礼ですよ……ふふふ」


 そんなことを考えていたら、他の三人が必死に笑いをこらえていました。気持ちはよくわかります。


『冬眠中。起こしたら、承知しないぞ☆ 美少女ゆかりん』


 色々と痛い内容に漏れるのは笑い声。


「なんだ、その……笑ってやるな。あの方は、結構気にしているんだ」


「胡散臭さを捨てれば大丈夫なんですがねぇ……まぁ、無理ですよね」


「無理だな」


「無理ですぅ」


「無理なのだー」


 お父様の話では、会った時には既に手遅れだったとか。私も一人の女なので気をつけませんと。


「さてと」


「まて、何故スペルカードを取り出す?」


 懐からスペルカードを取り出すとなにやら藍さんに止められました。


「目ざましです」


「まて、色々と待ってくれ。直すのは私なのだぞ?」


「私も手伝わされるのだー」


 これから私がやろうとしていることが想像ついたのか、今までで一番焦り出しました。


「しかし……そのまま起こそうものなら、寝ぼけて落とされるだけじゃないですか」


「そうなのだが!そうなのだが!」


「藍、あきらめるのだー」


「ルーミア!」


 先ほどまで私を止めようとしていたルーミアさんが、あっさりと引いたことに、藍さんが怒りをむけました。


「椛は良くも悪くも真理の娘なのだ。それを止められるなら、止めるのだ」


「ああ、そうだったな……糞がっ!」


 あらいやだ、なんて口のきき方ですか。比較的、常識人にして、まともだと思っていた藍さんの口からそんな汚い言葉がでるなんて。


 よくよく考えたら、常識人だったらたかだか式が泣いただけで、相手を殺そうとはしませんね。つまり、藍さんも常識外の人物だったと。


「貴様らには言われたくないわ!!」


「流石にそれは同意なのだー」


 人の心を読まないでください。というよりも、それはどういう意味ですか。


「まぁ、いいでしょう……狗符「レイビーズバイト」」


「どわっ!?こいつ、マジでやりやがった!?」


「ちょっと、やるならやるって言いなさいよ!」


「あぁ、お嬢様を愛でたい」


 やれやれ、それくらいも察知できないとは……清明さんにちくっておきましょう。一人、なんか違いますが放っておきましょう。


 もうもうと白い煙が立ち上るなか、煙の中に黒い影が現れました。


「だ~れ~だ~」


「な、なんだこの幽鬼みたいな声は!?」


「何言ってんのよ、ただの怨念でしょ」


「違いますよ、これは噂のなまはげとかいうのでしょう」


 とりあえず、美少女ということはないでしょうね、この声では。


「誰がお化けや化け物よ!」


 そこら中の煙が、中にいた人物の手によって一気に晴らされると、中にはボロボロのネグリジェを来た、この家の主が酷い顔で立っていました。


「さて……これをやったのは誰かしら?」


 中の人物……紫さんがこの世の女とは思えない酷い形相で睨んできます。寝起きかつ、スッピンのせいですかね。


 そして、私たちは一斉に藍さんを見ると、紫さんは藍さんを睨みつけます。


 睨まれている藍さんは既に涙目。ついでに、隣にいる橙は既に泣いています。


「いい覚悟ねぇ……藍?」


「いえいえいえ!私じゃなくて……」


「一度逝ってこい!」


「だから違うとぉぉぉぉぉーーーーーーっ………」


「藍しゃまーーーーっ!?」


 ドップラー効果を残しながら藍さんは紫さんが開いた隙間に落ちて行ってしまいました。


「ったく、冬眠中は起こすなって言ってるのに」


 ぶつぶつと文句を言いながら、いつの間にか紫さんは着替えていました。何という早業にしてご都合主義。


「さて、紫さん」


「あら、椛じゃない。久しぶりね」


 紫さんはどうやら今まで頭が悪かったもとい、頭が働いてなかったようで、ようやく私に気がついたようでした。


「って、なんで霊夢や他の奴らまでいるの?」


 更に、私の後ろに控えていた三人にも気がついたようで、首を傾げて、本当に分からないといった表情をしています。


「紫さん。暦ではもう春ですよ」


「え?けど、幻想郷はまだまだ雪が積もっているじゃない」


「ええ、どこかの誰かさんが春を回収したせいで、幻想郷に春が訪れないんです」


「はぁ?」


 まぁ、今まで眠っていた紫さんが理由をしるはずもありませんね。


「さて、紫さん……覚悟はいいですね?」


「まって、色々とまって。なんで、戦う雰囲気なの!?」


「そうですねぇ……八つ当たりと、人身御供としての生贄と言ったところでしょうか?」


「色々と酷すぎる!?」


 知ったこっちゃありません。さぁ、やりましょうか……今の私は神すら凌駕してみせましょう!


「だから待ちなさいよ!」


 紫さんの制止なんて聞かず問答無用で展開した弾幕を紫さんに向かって放つも、余裕で避けられました。まぁ、部屋に被害が出ているから問題はありませんね。


「あぁっ!?お気に入りの服が!椛、なんてことしてくれたのかしら?」


 額に青筋を立てながら、ぎこちない笑顔を向けてくる紫さん。目は笑っていませんし、その目が『謝れば許す』と物語っていますが。


「うわっ、胡散臭」


「うっさんくさいわねぇ」


「事実を言ったら失礼ですよ」


 紫さんの笑顔を見た三人が感想を零します。なんで紫さんってここまで胡散臭いんでしょう?


「うっさい黙りなさい!」


 そう言って放ってくる弾幕を空を飛んで回避しすると、背面から紫さんが現れて、弾幕を放ってきました。


「後ろからなんて卑怯だー」


「難なく避けて言うな!しかも棒読みで!」


 そりゃ、隙間に飛び込むのが見えましたからね。そうやって、転移系が使える人の大体は後ろに現れるものですし。


 大分空の上まで飛んできましたね。霊夢さん達はどうやら、軒先でルーミアさんに出されたお茶を飲みながら観戦するようです。


「さて、紫さん。色々と言いたいことがありますが一言……ご愁傷様」


「どういう意味かしら?」


 私の言葉を怪訝そうな顔で窺う紫さん。まぁ、起きてすぐに状況を理解しろと言っても難しいだろう。だがしかし、貴女の運命はきっと変わらない。


「それは、この異変が終わるか終わらないあたりで分かるでしょう……」


 そう言ってスペルカードを取り出すと、紫さんも流石に会話で終わる雰囲気でないと察したのか、同様に取りだしました。


「貴女が勝てると思っているのかしら?幾ら真理の娘でも、実力差は埋まらないわよ?」


「万年食っちゃ寝している人に言われたくありませんねぇ。私の師は、あの人たちなのですよ?あの人たちに比べたら貴女くらい怖くはありません」


「よく言ったわ。手加減なんてしてやらないんだから!あいつに受けた屈辱分もあんたに返してやるわ!」


「やだやだ、これだからヒステリーな方は……やれるもんならやってみなさい!」


 こうして、私と紫さんの異変とは関係ない実に個人的な戦いはきって落とされた。

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