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東方転犬録  作者: レティウス
娘が頑張る妖々夢
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娘、立つ

前回の森羅編で出たオリ主に対して割と期待してくれた方がいたのですが、オリ主は森羅がおいしく頂いています(物理的な意味で)

よって、本編にはでてきません。

「ただいま帰りました」


 うぅ、今年は何故か冬が長く続き寒いですね。家の中に入ると外とは別世界と思えるくらい暖かく、かつそれが暑すぎずに快適な温度です。


 仕事場での事務所も暖房をにとりや他の河童様からの提供の暖房で暖かいですが、うちほどの快適さはありませんね。


「お帰り」


「はい、ただいまです」


 手を摩りながら、台所へと手を洗いに来てみればあとりさんが夕飯の支度を開始しておりました。


「ちょっとまって……はい」


「ありがとうございます」


 あとりさんから湯呑を受け取ると中には甘酒が入っていました。冷えた体には嬉しい一杯です。


 あとりさんはうちの(本人曰く)居候という形らしいのですが、もう何百年も一緒にいますし私にとっては家族ですね。


 というよりも、この家の中では私が一番の子供ですし。


 お父様に引き取られてからいらっしゃいますし、私にとっては姉のような母親のような存在ですかね。


「お父様は?」


「縁側でイラついている」


 はて?お父様がイラつくなんて珍しいこともありますね。


 こう言ってはなんですが、私はお父様が怒ったところを見たことはありません。


 私がおいたをして叱られるというのはかつてはありましたが、それは躾の話であって、怒るとはまた違ったものです。


 文さんあたりが調子に乗ってるときも、場の雰囲気で怒っているような感じにはなりますが、怒気が含まれていませんし。


 玲央様や麻耶様、清明さんあたりといつも楽しそうに笑っていることが多いお父様が一人でイライラしているなんて。


 私としてはいつものおおらかなお父様が好きなんですがねぇ。


「ただいま帰りました」


「お帰り」


 言葉少なめに私に含まれたお父様の雰囲気は確かにあとりさんが言うようにイラついていますね。


 なんか、外を見てかなり忌々しげに睨みつけている感じ見受けられます。


「ったく、博麗の巫女は何をやっているんだ、異変に気づいていないとでもいうのか?」


 異変……そういえば、前にあの吸血鬼娘たちがやらかしたお騒がせ騒動を解決したのは博麗の巫女とか文さんがいっていましたね。


 ここ数百年単位でこれといって変化のなかった幻想郷に変化がおきたことはお父様としては嬉しいはずですが?


 それに、これが異変ならばお父様が確実に茶々をいれるか、または、のぞき見しようとするはずですが、なのにお父様は何故かイラついている。


「ご飯、出来たよ」


「あいよ」


「手伝います」


 とりあえず、今はあとりさんのおいしいご飯を食べてから色々と考えましょう。



 夜の蚊帳もおり、玲央様たちがやってきてもお父様の機嫌が直ることはありませんでした。


 それどころか、玲央様たちまでもがイライラしている現状ですね。


「なにをしているんですか、あの巫女は!」


「せや!文ちゃんから怠け癖があるいうのはきいとったが、これは酷すぎるで!」


「ふむ……これは、仕置きが必要かな?」


 どうしましょう?わりとしゃれにならないぐらい、お父様を含めたみなさんがいきりたっています。


 正直、幻想郷でこの四人を相手などしたくありません。この四人が幻想郷を滅ぼすというのであれば、私は進んでこの方たちの先兵となりましょう。


「あのぅ……」


「なにかな、椛ちゃん」


 とりあえず、何がそこまでお父様たちをイラつかせているのか尋ねない事にはどうにもなりません。よって、勇気を出してお父様たちにことの真相を訪ねようと思います。


「何が、そこまでみなさんをイラつかせているんでしょうか?」


「わからないのか、椛?」


 うっ、お父様のわりとしゃれにならない眼力に気押されます。


 お父様の顔はどう贔屓目を抜いてもとても整った綺麗な顔立ちです。正直、女性である私ですら嫉妬するぐらい綺麗です。


 前に、紫さんから外の世界ではやっているというヅカとかいう演劇で男役に抜擢したら洒落にならないとかおっしゃってました。


 男なのに男役とはこれいかにとも思いますが、まぁ、お父様を初見で男と見抜く人はいませんから別にかまいませんね。そのあとに言っていたのがばれた紫さんがお仕置き喰らっていたのは見ていておもしろかったですし。


 っと、話がずれましたが、お父様の整った顔で睨まれると妙な迫力があるせいで、身がすくんでしまいます。


「はい」


「そうか……」


 正直に白状すると、何故かがっかりとするお父様たち。一体、何がお父様たちをそこまで……


「あ」


 そこに、お盆にお父様たちの酒の肴を持ってきてくれたあとりさんが小さく声を上げました。


「分かったんですか?」


「多分」


 お父様たちに肴を渡したあとりさんとともに下がり、尋ねるとゆっくりと首を縦に振ります。


「多分、季節が関係している」


「季節?今は、冬ですから……」


「違う。暦のほうで考えて」


 冬ならではのことを考えていると、否定が入り、ヒントをくれるあとりさん。


 うちの一家はいきなり応えを教えてくれずに考えさせようとします。前に聞いた話だと、考える力をつけてほしいとのことでした。お父様の性格上、考えている姿を見て楽しんでいるだけだと思うんですが。


「暦で言うならば、もう春ですよね?」


「そう。そして、春と言えば?」


「春、春……桜?」


「もう一歩」


「……あぁっ!お花見!」


「そう。多分、真理たちは花見ができなくて苛立っている」


「なるほど」


 あの酒好き集団が春なのにお花見ができないと聞けばそれは確かにイラつきもしますね。


 答えが分かり肩の力が抜けると同時に、冷や汗がながれます。


「えっと、あまり考えたくはないのですが、この異変が手間取りまだまだ解決しなければ、もしかして……」


「もしかしなくても暴れる」


「ですよねー」


 これはまずいですね。紫さんに義理も何もないですが、まだまだ私はゆっくりとこの家族で過ごしていきたいですし。


「しかたありませんね」


「やるの?」


「ええ。愚鈍な巫女はどうでもいいんですが、お父様の機嫌が悪いと私もあまり機嫌がよろしくなくなるんですよ?」


「知ってる」


 あら、知られてましたか。今日はもう遅いので明日から頑張りましょう。あと、紫さんにも一言もの申したいですしね。

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