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王太子さまの愛する人は  作者: 家紋 武範
小さな恋の物語
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第10話 王女の名前

フレデリック王子はジカルマの王女を連れて式場を出ると、そこには警護騎士と侍従長モロスと侍女二人。

扉を閉めた王子の姿を見てモロスは質問する。


「これは殿下。式は終わったのですか?」

「ううん。まださ。これは将来のボクの嫁だ。城の中を案内してやろうと思って」


「んま! ……ではご無礼があってはいけません。私たちもお供致します」

「いやけっこう。ボク一人で充分さ」


「そういう訳にも行きますまい」

「おい。嫁」

「は、はい」


「走るぞ。それ。にげろー!」

「え?」

「あ! 殿下!」


王子は王女の手を引いて逃げる。

小さな足であっという間に廊下の角を曲がってしまった。

モロスは今日のためにドレスを着て、靴もフォーマルなものだったのでとっさに動けなかった。ドレスの裾を持ってようやく廊下の角まで来るとすでにフレデリック王子の姿はなく、見失ってしまったのだ。

モロスは眉をつり上げて警護騎士のラディとエセルを叱責した。


「ラディ! エセル! なにをもたもたしているの! 殿下をサッサと捜しなさい!」

「あ、は、はい!」


二人は式場にこの失態が漏れないようにと、足音を忍ばせながら廊下の角を曲がり、二人の行方を求めて捜して走り出した。


そのフレデリック王子は実はまだすぐ近くにいた。

廊下の角を曲がった壁の下はレンガが数個外されていたのだ。それは子供がやっとくぐれる大きさの穴。そこから匍匐前進の姿勢で無人の部屋の中に侵入していた。

王子は部屋に王女を入れると静かにレンガを入れ直して修復し、モロスたちの足音が離れていくのを床に伏せながら声を潜めて待っていたのだ。


その足音が離れると、ほぅと息を吐いて互いに微笑み合った。


「クックック。面白かったであろう?」

「は、はい。うふふ」


「なんだ。はいしか言わんやつだな」

「あ、あの。タックアの ことば、まだ よくわからない」


「へー。そうなのか。そう言えば語学留学とか言ってたな」

「は、はい。ことば いろいろ おしえて」


「ボクはフレデリック。お前の名前は?」


王女からすれば式場の話し方と違うし、外に出たら突然イタズラの逃亡。王子のギャップに驚き、また初めてのことにドキドキしていた。


「あ、あの、クローディア」

「はぁ? 母上と同じ名前か」


「え? おうひさまと?」

「そうだ。それにコイツは?」


それはクローディア王女の胸に抱いたお人形。毛糸の頭髪にボタンの目玉。男子である王子から見れば珍しいおもちゃだった。


「これ おともだち。おなまえは ローズよ」

「へぇ。お友だちか」


「ローズが いるから さみしくない。おかあさまと はなれていても」

「そうか。そう言えば半年も離れるんだもんな。ボクも母上とはなかなか会えない」


「そうなの?」

「ああ。病気なんだ」


「さみしく ない?」

「さみしいさ。でもモロスもいるし、ラディもエセルもいる。それにこれからはお前も」


「え?」

「半年この宮殿で暮らすんだろう? そしたら遊ぼうぜ」


クローディア王女の顔が途端にほぐれて笑顔になった。

その美しいこと。

大きな目に可愛らしく微笑む彼女の顔。

彼女はわずか3歳であったが、とても美しく女神のような顔立ちであった。

まだまだ恋なんて早い。しかしフレデリック王子の胸に熱くなる気持ちが不思議と湧いてくるのであった。

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